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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
アイビーを土蜘蛛に

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33ページ目 戻される少女

何もない空間。どこまでも続く白い空間。私はそこに見覚えがあった。初めて観測で死んだときに来た場所に似た空間だった。


「どうせ、いるんでしょ」


一人呟く。もしあの時と同じ空間であれば返事が返ってくるだろう。


「ピンポ~ン。また会ったね【少女】」


予想していた通りどこからともなく声が響く。だが前回とは違いそこにいることは感じられる。姿形は見えなくてもそこにいることだけは認識できる。


「・・・私はどうなったの?」

「うーん、【技術屋】の禁書の権能によってたくさんのロボットによって食い荒らされて死んだよ。あ、禁書の権能というより能力と言ったほうがわかりやすいかな?まあ、正式名称は禁書の権能だから訂正せずに進めるけどね」


ぼんやりと思い出されていく記憶。食べられていくときの痛さ、回避しきれない死に対しての恐怖。しかし、今は何も感じない。無気力さだけが心のなかに残る。


「不思議?あんな死に方をしたのに発狂しないなんて」


心を読むかのように語りかけてくる。


「ここには今君の魂、存在そのものしかない空間。感情なんて脳の信号でしかないから魂と肉体が離れている今、発狂する心配はないってこと」

「なんでそんなことを?」

「だって、今戻したら君は間違いなく自殺する。そんな事になったら困るから私直々に処置してるんだよ。感情の完全な抑制は【少年】の禁書の権能を使ってもできないからね」

「あなたは何なの?一体私を助けて何をしたいの?どうして…」


私には理解ができなかった。記憶もない、技術も中途半端、そんなやつに利用価値などあるのだろうか。神埼も、神里も、シャルも、なんでみんなあんなに優しくするのだろうか?私には何もわからなかった。


「あはははは」


笑い声が響く。

さっきとは違って複数箇所から声が響き渡る。

どこにいるのか。

何人いるのか。

それすらもわからない。

見つかるはずのない、そんな存在を必死に探す。


―――ここだよ


声を頼りに振り向く―――しかし、そこには誰もいない。諦めて前を向くと


「ばあ!」

「わあ!」


びっくりして後退りをする。さっきまで誰もいなかったはずなのに視認してからその存在をはっきりと認識する。オレンジとエメラルドグリーンのグラデーションがきれいなショートヘア。オッドアイも髪色と同じ。黒色のコーディガンに青のタンクトップ、無防備な短パンが魅力的な女性。何より目を引くのが天使の輪っかがついているところだ。二次元から飛び出てきたような容姿にただ呆然と眺めてしまう。


「こんにちわ、【削除済み】ってこれだめなのか。えーと、【少女】でいいかな。私は…【創造主】とでも名乗ろうかな。」


理由のわからない状況に戸惑いが隠せない。そんな様子の私を【創造主】はケタケタと笑う。


「うんうん、やっぱりびっくりするようね〜。この前は時間がなくて肉体まで用意する暇なかったけど今回は結構頑張って用意しちゃった」

「・・・およそ人間とは思えない発言だけど、あなたってその〜、なにもの?」

「大まかに言うと【規制済み】だよ」

「ごめん、よく聞こえない」

「あ〜、聞こえないんじゃなくて理解できないだけだよ。君が私を知るためには少し【経験】や【知識】が足りないんだよ。というか【少年】、あの子全然説明してないじゃん。こんなんでよく観測できたね」


全く【創造主】とやらが言っていることがわからないが、ある程度予測はできる。彼女の【経験】は観測の回数、【知識】は私の記憶のことだろう。【技術屋】はマキナ、【少年】は神埼、【少女】は私のことだと思う。


「今の私に足りないことって?」

「そうだな〜、劇場型の観測において絶対的なルールなにかわかる?」

「禁書の持主を守ること?」

「不正解〜。正解は運命に踏み込みすぎないこと」

「・・・?」


わからない私をニコニコとしながら【創造主】は見つめる。


「いいかい?観測とは禁書の運命の正しい結末を見届けることなんだよ」

「正しい結末ってなに?」


急に場面が変わる。目の前にはマキナと虎兄さんがいる。虎兄さんがマキナを殺そうと襲いかかるその瞬間で止まっている。【創造主】はウキウキで話を続ける。


「例えば観測中、主人公の命の危機に!君はどうする?」

「もちろん助けるよ。だって持ち主が死んだら観測は終わってしまうから」

「ざんねん、そんなんだと観測が終わらないよ。答えは見届ける、これ一択。いいかい?君たちは観測者、本来であればその場にいてはいけない存在。そんな君たちがなんのためにいるのかわかるかい?」

「もしかして改変の影響から持ち主を守るため?」

「うーん、50点ってところかな。正確には禁書の正しい運命を守るためだよ」

「なら、死にかけてても見捨てろってこと?」

「それが正しい結末につながるならその選択肢もしなければいけない。観測者とはそういうものなのさ」

「・・・ある程度理解した。今回のマキナの観測で私はあまり踏み込まないようにしたらいいってことでしょ」

「100点満点だよ。誰を守り、誰を見捨てるのか。場面によって常に変化する戦況、君に読めるかな」


戦況を読む。自分が生き残るためにやってきたことだ。誰が敵で誰が利用できるのか。そんなの簡単だ。


「うん、大丈夫そうだね」


私を見て安心したかのように呟く。私も【創造主】に教えてもらったことで進むべき道がはっきりとした。そうだ、マキナはもともと私と同じ司書だ。そんな人が簡単に死ぬわけない。私に必要だったのは誰かを信じることだったのかも知れない。


「じゃあ、あとは【魔女】たちと話しながら進めな」

「ありがとう、創造主。またの機会は…ない方がいいと思うけどあったら、よろしくね」

「いつでも待ってるよ【規制済み】」


そう言って私は架空図書館リバリルに戻るのだった。

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