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向日葵をあなたに  作者: 宇多良 和笹
アイビーを土蜘蛛に

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28ページ目 邂逅する少女

「う〜ん。これはもう無理だね」


鳴り響く不快な警告音の中、虎兄さんがポツリ呟く。機械が人間らしい感情を見せる―――彼らにとっては当たり前かもしれないが私にとっては初めてのことで戸惑ってしまう。


「どうされますのこの鉄の塊」

「一回機械を外してリセットかな〜」

「あら、便利ですわね」

「そうでもないよ〜。下手したらデータが吹っ飛んでる可能性だってあるし〜」


淡々と行われる作業に吐き気すら覚える。これでは【ドクター】(あいつら)と同じではないか。感情のある本来自由であるべき生き物を実験したり拷問したりして己の利益だけを求める行動。それはいいことではないと思う。


「どうかしましたの?」


シャルが声をかけてくる。よほど顔に出てたのだろう。とても心配そうにこちらを覗く。


「・・・いや、大丈夫」

「無理しちゃだめだよ〜。旅の疲れもあるだろうし、宿で休んできたら〜?こっちはあとやっとくよ〜」


ここで戻れば前回の二の舞いになってしまう。私は無理やり笑顔をつくり平然を装う。


「気遣ってくれてありがとう。でも色々聞きたいことが山ほどあるから大丈夫」

「じゃあ、片付けたら色々説明するよ」


私達は尋問の片付けを進める。ただの後片付けそう思っていた。

何かの作動音が静かになる―――タイマーのような秒針が動く音。

無意識に音のする方向に足が動き、通り魔アンドロイドの前で止まる。

自然と手が伸びて頭部をこじ開けるとそこには中には徐々に減っていく赤い数字が映し出されていた。


それを爆弾だと認識できた頃には起爆まで10秒を切っていた。


必死に頭を回転させる。今から逃げても間に合わない。せめて虎兄さんだけでもかばうか?いや、爆弾がどの程度の威力かわからない以上下手にかばうわけって死んでもだめだ。それに、上にいるマキナたちも巻き込んでしまう。

カウントがどんどん減っていく。

全員は爆弾の初撃から守りつつ自分も助かる方法…。

残り5秒を切ったところでとある方法を思いつく―――魔法なら可能かもしれない。


しかし、口頭で説明する時間なんてない。

私は覚悟を決めて禁書を開きイメージする。

爆弾そのものを包み込む。

完璧なものでなくていい。

ただひたすら「死にたくない」その一心で行動していた。


地下室に鳴り響く爆発音。しかし―――痛みはない。

その魔法を発動できたのはカウントが0になると同時だった。


「びっくりした〜。大丈夫?」

「えぇ、まさか爆弾が仕込まれてるとは思いませんわ」


どうやらふたりとも怪我はなく服が濡れた程度だったらしい。私が発動したのはシャルとの戦闘で見た水の球体を出す魔法だった。爆弾を水で沈めたことによってふたりとも無事だったらしい。

二人に声をかけようとしたとき、全身の力が抜ける。血が一滴また一滴と地面に垂れる。揺れる視界。二人がなにか焦ったように口を動かしているか私には伝わらない。そういえば、初めて魔法を使ったときも同じような事になったなあ、そんな事を考えながら機械の電源が切れたかのように私の意識はプツリと途切れた。



深く、深く沈んでいく。

深淵よりも深い場所。

人間など入ることが許されていない深海。

いつの時代に作られたのかもわからない石像の神殿。

そこにかの【忘れられた旧支配者】がいた。


【表示できません】の顔を持ち、

【閲覧を許可できません】、

【侵入を許可できません】、偉大なる神がいた。


かの【忘れられた旧支配者】は告げる。

聞いたことのない言語―――しかし意味を理解してしまう。


「【お前は許可してない、出ていけ】」



急に目が覚める。頬を伝う汗、気分がいいとはとても言えない。なんの夢を見ていたかはわからない。だけどなにか悪夢を見ていた、それだけは覚えている。

周りを見てみると一回目の観測で来た応接室だった。どうやら私はあの後倒れただけで死んではいないらしい。倒れている間虎兄さんが見てたらしくこちらに気がつくと声をかけてきた。


「良かった、目が覚めたみたいだね〜」

「ごめん急に倒れて」

「大丈夫だよ〜。それよりも目が覚めて良かった〜」


理由のわからない悪夢から一転、もふもふゆるふわな虎兄さんから癒やしをもらう。そのふわふわとした耳と尻尾をワシャワシャしたいなあ。そんなことを考えてる私をよそによくわからない機械を操作しながらモニターとにらめっこをしている。


「うん、大丈夫そうだね〜。みんな心配してたから呼んでもいいかな〜?」

「私は大丈夫だよ。」

「わかった〜。みんな〜、琴音ちゃん起きたよ〜」


虎兄さんが階段に向かって声を掛ける。呼んですぐドタドタと誰かが急いで階段を駆け上がる。勢いよく開けられたドアの先にはシャルが立っていた。

私を見るなりすごい勢いでこちらに向かってくる。そして私の前につくなり力強く抱きしめる。力が入りすぎて少し痛い。そんなことはお構い無しにどんどん力が入っていく。


「ちょ、ちょっと痛いよシャル」

「心配しましたの!」


相当心配したらしい。すでに目は赤く腫れている。


「ご、ごめんって」


今にも泣きそうな顔で見られて思わず謝ってしまう。あとからやってきたマキナもこちらを見つめる。般若のモヤでよくわからないが心配というより罪悪感でいっぱいになってるのが伝わる。


「本当に申し訳ないっす。今回の件、関係のないお二人を巻き込んだことを謝罪させてほしいっす」

「巻き込んだって…、もともとは私達があのアンドロイドを持ち込んだのが原因だし別に巻き込まれたわけじゃ…」

「違うんだ〜。今回だけじゃないんだよ〜」

「そうっす、命狙われたのは前からあるっす」


そう言われて少し納得してしまう。対応があまりにも手慣れすぎている。通り魔とはいえ命を狙われたにしてはふたりとも落ち着いていた。しかも犯人への尋問があまりにも慣れすぎている。最初はこういった時代だからと流していたがよくよく考えれば文句の一つぐらい出そうなのに何も言っていなかった。まるでそれが日常化し始めているかのよな。そんな雰囲気だった。


「心当たりはあるの?」

「今回のはおそらくアイアンズの過激派による犯行かな〜」

「俺達工房の奴ら特に俺達みたいな改造人間は原点連合はもちろんアイアンズにも嫌われてるっす。なんでこうやってちょっかいをかけることが多いっす」

「ちょっかいにしては少し過激すぎるけどね」


アイアンズに、原点連合、この世界にはびこる差別。シャルの時とは比べ物にならないほどの問題に少し頭を抱えるのだった。

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