二十話「 夜間校内散策その⑥ 」
俺達がこの準備室に閉じ込められて早30分が経過する。そろそろ他の連中も気づいてくれるといいんだが。
時間が過ぎていくと段々夜の空気は冷気を帯び始めてくる。
「くしゅっ…。ちょっと寒くなってきたわね…。」
重松…いや、茂美も俺と同じだったのか、小さなくしゃみをすると鼻をすすりながら自分の体を抱きしめて保温していた。
「そんなに寒いならほら、貸してやるよ。」
俺は自分のブレザーを脱ぐと茂美の肩に羽織らせるようにかけた。目の前で女子が寒がっていたらこれくらいしてやるのが男ってものだろう。例え相手が茂美であろうと。
「ありがと……あんたは寒くないの?。」
「大丈夫大丈夫、俺暑がりだから。」
あぁ寒っ。どちらかと言うと俺は冷え性な方だ。というかこの温度なら暑がりな奴でも寒いって言うぞ。でもここまで格好つけてしまったんだ、もう後には引けない。それにしても、こちらを少し心配するように見てくる茂美を、不意にも可愛いと思ってしまった自分にちょっと不甲斐無さを感じた。
「もう桜花ちゃん達気がついてくれたかしら…。」
貸したブレザーを羽織りながら立ち上がると窓の外を見つめた。下や辺りの景色を見渡す茂美の後ろ姿を座りながら見ていると突然声を出した。
「ねぇちょっと、あっちの校舎に誰かいるわよ!。」
茂美は窓に指をさしてこちらを見る。慌てて俺は立ち上がると窓の向こうの校舎を見つめた。
「……誰もいないじゃないか。」
「えっ、だってさっきまで……いない。」
向かいの校舎は電灯もついておらず薄暗く、人の影なんて見当たらなかった。自分の目を疑うように茂美はその後も校舎を監視し続けた。
俺は再び床に座るとまた考え事を始めた。茂美の言っている事がもし本当なら、その人影は恐らくさっきこの準備室の前を通った奴に違いないだろう。
一体誰なのだろう。この学校には俺達六人しか存在しない。咲野さんが脅かし役に回ってるとしてもあれだけ怯えていた彼女があんな落ち着いた足音で校舎を歩けるはずがない。
もし新遊部メンバー以外だったとしたら…。俺は考えるのを止めた。理由は言わずもがな、怖いからだ。
どんどん不安が増していく俺の耳に新たな足音が聞こえた。しかも複数。茂美にも聞こえたのか、窓から振り返って扉を見つめた。
足音はどんどん近付きこの準備室の窓に人影が映ったその時、
「なんだ二人共、こんな所にいたのか。」
扉を開けて顔を出したのは小佐鬼先輩だった。俺は一気に力が抜けて壁に持たれかかった。
「まったく、遅いと思ってきてみればこれかよ。」
「あ、あの、お二人とも大丈夫ですか?。」
「気配を探るのに少し時間がかかったで御座るな。」
小佐鬼先輩の後に朝比奈、咲野さん、成瀬先輩の順に顔を出した。
「小佐鬼先輩、どうやって扉開けたんですか?。」
震える足を押さえながら立ち上がると、最初の疑問点をたずねてみた。
「何が?、普通に開いたけど?。」
ドアノブを持つと何度も開け閉めの動作をする、特に異常は見られないようだが一体どうなってんだ。
「ちなみにここに来る前、誰か一人でここの前通りませんでしたか?。」
俺はある意味一番恐怖の質問をする。四人はお互いを見て一つの答えをだした。
「誰も通ってないよ。みんな団体行動でまっすぐこの準備室に来たんだから。」
きたーーーーーーーーーーーーーーーーー。失神してもいいですかーーーー。心の絶叫をかますと、後ろから俺の肩をつかむ奴がいた。言うまでもない茂美だ。
「これは本当の本当に心霊体験よ!。あんたいい霊感持ってるじゃない!。」
そんな目を輝かすな。薄暗いから分からんかもしれんが、俺は血の気が引いて顔面蒼白だ。
まぁ何はともあれ無事この準備室から脱出する事ができたんだ。それだけで十分だよ。俺達二人は廊下にでるとなぜか茂美が一人で違う方向に歩きだした。
「おいどこ行くんだよ。帰り道はこっちだぞ?。」
「あぁうん、先行ってて。あたしはちょっとお手洗いに行ってくるから。」
妙なはぐらかし方をすると茂美は廊下の曲がり角を曲がって姿を消した。よくもまぁ夜の学校のトイレなんかに行けるな。




