十五話「 夜間校内散策その① 」
「似合ってるわよ。桜花ちゃん!」
重松の言う通り、幽霊を連想させる咲野さんの仮装には俺達男子一同も感心した。
「咲野さん本当に似合ってますねー。」
男子で最初に口を開けたのは、ニコニコ笑っている小佐鬼先輩だった。褒められると恥ずかしそうにする咲野さんの表情はなんとも言えない満足感を与えてくれる。
「あ、あの似合ってますよ。本当に。」
先程着替えを覗いてしまったため恐縮気味に言葉を発する俺。咲野さんはまた顔を赤くしてお辞儀する。
「あの…大斗君。どうでしょうか?」
咲野さんが最後に尋ねたのは順番からして朝比奈大斗だ。その言葉聞くと朝比奈は固まった。そして無言になり目をそらしたまま何も言わなくなってしまった。どうやら“咲野さんに惚れてるの?説”は本当だったようだ。
「と、ところで重松、新遊部の活動とこのコスプレに何の関係性があるんだよ。」
このまま朝比奈が無言のままだと変な空気になると思った俺はすぐに違う話題を振った。
「ふふ、よくぞ聞いてくれたわ。今までの活動はね、アンタの力量を図るための試練でしかなかったのよ!。」
「はぁ、で?それがどう繋がるんだ?。」
「アンタの身に起きた謎を解明するのよ、金縛りにあって謎の少女を見たんでしょ?。アタシの考えではね、それはこの学校にいる憑依霊だと思うのよ!。」
えーと、それで幽霊の仮装。なんか微妙に繋がってたりどこかの過程をすっ飛ばしてるような気もするんだが。
「そうよ!彼女は昔、孤独で校舎から身を投げた生徒、そしてまだ残った学園生活への未練によって憑依霊となり、一人でいたアンタにコンタクトをとった。こういう筋書きよ!。」
よくもまぁそこまで話を勝手に広げられるもんだな。
「それで、俺がその場から姿を消していた事はどう説明してくれるんだ?。」
「え?…えーと、そうね。そんな事まで知らないわよ!。アンタ存在薄いんでしょ!。」
一番肝心なところを何も考えてないようだ。
「もういいわ。それで本日の新遊部の活動内容は、夜間校内散策でーす!。」
さすがにその言葉を聞くと、俺以外のメンバーも固まった。夜間校内散策だと?それってもしかして。
「早い話が肝試しで御座る。少し季節が早すぎるで御座るがな。」
俺の足元の床のパネルが突然開くとそこからは成瀬先輩が姿を現した。俺は驚き尻もちをついた。この人はマトモに入場してこれないのか。
「ありがと。二葉ちゃんには学校中にちょっとした細工をしておいてもらったから。」
重松は二葉先輩の肩を軽く叩きながらこちらを見て微笑む。俺達からすると恐怖の笑みにしか見えない。
「なんでそんな小細工なんかするんだよ、夜中の学校だけでも十分雰囲気出てるじゃねぇか!。」
「だって結局何にも出てこなかったらつまらないじゃない。そんな時の保険よ。今日は金曜日で明日は休日よ?パァーっといくわよ!。」
腕を振り上げてブンブン振り回すテンションマックスの重松を止められる力を、俺は当然だが持っていない。それは新遊部のメンバーも同じようだ。誰も反論しようとしない。そして肝心なのは、肝試しと聞いた途端に顔を真っ青にして足をガクガク震わせている咲野さんの姿だった。これはマズイだろう。
「大丈夫よ。何にも出てこなっかたら桜花ちゃんには脅かす側に回ってもらうわ。」
なるほど、だから幽霊のコスプレか。やっと納得のいく説明を聞いた気がする。
「活動開始は部活動終了時刻の7時からよ!。」
こうして五月上旬、ちょっと早目の肝試し大会が行われるのであった。




