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第36話(最終話):A&Lジェネシス・プロジェクト(宇宙創世)と、新宇宙の第一絶対法則(大公閣下の永遠の愛)

「……アリス。商売において、最も恐ろしい状態とは何だか分かるかしら?」


 超巨大・魔導豪華客船『A&Lグランド・リヴァイアサン』。

 私たちが建造したこの船は、もはや海の上を航行するだけの存在ではなくなっていた。人工月『アストラル・ルナ』と完全にリンクし、地球の気象、時間、才能、未来、並行世界、死後の魂、そして神の玉座(信仰)に至るまで、ありとあらゆる概念を完全に支配した私たちの魔導商会A&Lは、文字通り【大宇宙における究極の支配者】として君臨していた。

 世界中の人々は、私たちが提供するインフラなしでは一秒も生きられず、呼吸をするようにA&Lペイで課金し、生まれてから死んだ後、さらに来世に至るまで、すべての富と魂を我が商会に捧げる完全なエコシステム(搾取機構)が完成していた。


 そんな、もはや神すらも手出しできない平穏で完璧な午後。

 最上階のCEO執務室にて。ルミアは、ヒマ端末から空中に投影された『世界全人類の資産・寿命・信仰心の完全掌握率【100.000%】』という完璧な数字を見つめながら、氷のように冷徹な、しかしどこか虚無感を漂わせた声で問いかけた。


「最も恐ろしい状態? うーん……ライバル会社が現れること? それとも、商品が売れなくなることかしら?」

 私が空間転送で取り寄せた『並行宇宙・幻の星産・究極マナ・ミルフィーユ』を頬張りながら首を傾げると、ルミアは美しい顔で盛大なため息をつき、バインダーで机を叩いた。


「違うわ。『完全にゲームクリア(制覇)してしまったこと』よ」


「ゲームクリア……。つまり、やることがなくなったってこと?」


「ええ。いいこと、アリス? 今の我が社は、物理的な資源はもちろん、人間の時間も、感情も、才能も、未来も、死後の世界も、神への祈りすらも完全に買収し尽くしたわ。この地球、いや全並行宇宙を探しても、もう私たちが新しく【奪える富】や【開拓できる市場ブルー・オーシャン】は、一ゴールド、一ミクロンたりとも残っていないのよ!!」


 ルミアは、完璧な【100%】の数字が輝く空中のグラフを忌々しげに睨みつけた。


「資本主義というものはね、常に成長し、拡大し続けなければならないの。前年比で売上が伸びない企業なんて、存在価値がないわ! でも、すべてを支配してしまった今、これ以上の成長は物理的にも概念的にも不可能なのよ! お客様から巻き上げるお金も、時間も、来世も、もう上限カンストに達してしまったの! 経営学的に見て、これほど絶望的で退屈な『完全勝利』はないわ!!」


「あー……。確かに、全部手に入れちゃったら、あとは維持するだけになっちゃうわね。でも、それって一番安定してて幸せなことじゃない?」


「安定? 維持? 冗談じゃないわ! そんな現状維持のヌルい経営、この私が許すはずがないでしょう!!」

 ルミアの瞳が、狂気と強欲のゴールドの輝きを放ち始めた。


「すべてを手に入れてしまったのなら、どうするか? 答えは簡単よ。……今の【古くて狭い宇宙】を一度完全にリセットして、我が社にとって都合の良い、無限の市場と無限の資源を持つ【新しい宇宙】を、一から創り出せばいいのよ!!」


 ルミアの口から飛び出したのは、もはや惑星規模どころか、並行世界すらも超越した、現在の宇宙をスクラップ&ビルドし、神の御業である『天地創造ビッグバン』すらもビジネスの事業計画プロジェクトとして実行してしまおうという、狂気の沙汰としか思えない究極の冒涜計画だった。


「な、なるほどね……! 宇宙の初期化と再構築! 今の宇宙の法則(物理定数や魔力濃度)を一度特異点にまで圧縮して大爆発させ、私たちが自由に設定プログラミングした新しい法則で宇宙を膨張させるのね!」


 技術者としての私の脳髄に、これまでの人生で最大、いや、全宇宙の歴史上でも類を見ないほどの強烈なインスピレーションの電流が走った。

 私はミルフィーユのフォークを置き、白板の前に立ってガリガリと新たな魔法陣……いや、宇宙の真理そのものを記述する『究極の神聖数式』を書き殴り始めた。


「いい、ルミア! これを実現するためには、人工月『アストラル・ルナ』を始めとする世界中のすべてのA&Lインフラ、そして並行世界に張り巡らせたネットワークの全魔力を一点に集中させるわ! さらに、地下の魔力プラントの出力を限界突破オーバークロックさせて、空間に【絶対特異点オメガ・ポイント】を創り出すの!」


「素晴らしいわ! つまり、この船そのものを【新しい宇宙のビッグバン・シード】にするということね!」


「ええ! 名付けて、超時空・新宇宙創世計画……【A&L ジェネシス・プロジェクト】よ!! この計画を実行すれば、私たちは古い宇宙の資産をすべて引き継いだまま、新しい宇宙の創造主(システム管理者)になれる! 新しい宇宙では、星の数も、命の数も、資源の量も、すべて私たちが自由に設定できるわ! 文字通りの【無限のブルー・オーシャン】よ!!」


「…………ッ!!」

 ルミアの瞳孔が、限界まで拡大し、美しい三日月の形に歪んだ。


「あはははははは!! えげつない! えげつなすぎるわアリス!! これぞ究極の事業拡大! 宇宙そのものの新規立ち上げ(スタートアップ)よ!!」


 ルミアは歓喜の声を上げ、猛烈な勢いでヒマ端末に『新宇宙のビジネスモデル』の構築を始めた。


「いい、アリス! 新しい宇宙では、すべての星に最初からA&Lペイの端末を埋め込んでおくわ! 生まれてくる新しい生命体には、遺伝子レベルで『A&L商会への忠誠と課金意欲』をインプリント(刷り込み)しておくの! 天国も地獄も神も、最初からすべて我が社の子会社として設立登記しておくわ! 究極の、完全なる絶対独占宇宙の誕生よ!!」


 もはや神すらも引くレベルの、宇宙の私物化。

 新しい命が生まれる前から借金を背負わせ、呼吸をするたびに魔導商会に利益が入るように物理法則そのものを書き換える。

 私は親友の恐るべき経営手腕に、畏敬の念を通り越して、純粋な芸術性すら感じ始めていた。


「さ、最高ねルミア社長! じゃあ、今すぐこのジェネシス・プロジェクトの起動シークエンスに入って、宇宙の初期化テストを――」


「――私の許可なく、君が生きるこの『宇宙の法則』を、勝手に書き換えるなど、許されると思っているのか?」


 ふいに、執務室の空気が物理的に凍りつき、絶対零度の冷気と、全宇宙の星々を滅ぼすかのような極上の威圧感が部屋中を満たした。

 重厚な扉が開く音すらなく、漆黒の軍服に身を包んだ帝国の影の皇帝、ユリウス大公が私の背後に立っていた。


「ゆ、ユリウス様! お疲れ様です! どうですか、私たちの究極の宇宙創世ビジネス!」


 しかし、ユリウス様のアメジストの瞳は、これまでに見たことがないほど剣呑で、ドロドロとした独占欲と、宇宙の真理そのものを己の愛で塗り潰そうとするかのような狂気的な光に満ちていた。

 彼はスタスタと白板に歩み寄り、私が描いた『新宇宙創世の神聖数式』を鋭く睨みつけた。


「アリス。君は新しい宇宙を創り出し、すべての物理法則を自由に設定できると言ったな。……それはつまり、その新しい宇宙において、君と私が出会い、結ばれるという【確定した運命】が、何かの手違いで数ミリでもズレる可能性があるということか?」


「えっ? あ、いや、もちろん私とユリウス様が一緒にいる設定は絶対条件(必須プログラム)として組み込みますけど、宇宙の膨張の過程で多少の量子的な揺らぎが……」


「絶対に許さん」


 ドゴォォォォォォンッ!!!

 ユリウス様から放たれた圧倒的な魔力プレッシャーで、執務室の空間そのものが歪み、私の手元にあった試作の特異点コア(極小のブラックホール)が、一瞬にして彼の指先で完全に握り潰され、無に帰した。


「ゆ、ユリウス様!? 私の徹夜の特異点が!!」

「君と私の愛の軌跡が、一ミリでも、一ミクロンでも揺らぐような宇宙など、創る価値すらない。……もし新しい宇宙のどこかに、君が私以外の何かに微笑みかけ、私以外の何かに気を取られるような法則が存在するのなら、私はその新しい宇宙が誕生した瞬間に、私の全存在を懸けて物理的に消滅させる!!」


 それは、常軌を逸した、宇宙創世ビッグバンレベルでの絶対的な独占愛と束縛だった。

 妻との愛にミリ単位の揺らぎすら許せないから、新宇宙の法則そのものを力業で検閲すると言い張る男など、全並行世界、全次元を探してもこの魔王パトロンだけだろう。


「大公閣下。いくら貴方でも、理不尽が過ぎますわよ。アリスの宇宙創世が完了しなければ、この世紀の究極ビジネスが頓挫してしまいますわ!」

 ルミアが呆れたように抗議するが、ユリウス様は氷のような視線で彼女を一瞥しただけだった。


「私の妻との完全なる永遠の愛は、無限の宇宙の利益よりも重い。……アリス、この『ジェネシス・プロジェクト』のマスター権限(創造主の座)を、私に渡せ。そして、新宇宙の第一絶対法則(物理定数)を、私の魔力波長で完全に書き換えろ」

「う、上書き?」


「そうだ。他の有象無象の星がどう回ろうと、新しい生命がどう進化しようと知ったことか。だが、【アリス・フォン・ヴァルハイトの絶対的幸福と、ユリウスによる完全なる独占】だけは、光の速度や重力定数よりも優先される、新宇宙の第一原理(絶対法則)としてプログラミングしろ」


 ユリウス様は、不敵に笑って私を見下ろし、私の腰を強く引き寄せた。


「新しい宇宙では、君が呼吸をするたびに私が愛を与え、君が目を瞬きするたびに私が君を守る。……君に危害を加えようとする存在は、宇宙の法則によって発生すら許されず、君の美しさに目を奪われた者は、因果律によって自動的に消滅する。……君にとっての絶対の愛であり、唯一の宇宙は、永遠に私だけだ」


「ひゃっ……!? ゆ、ユリウス様、それはもう宇宙の法則じゃなくて、究極の『全自動・超次元アリス過保護システム(ユリウス様限定)』じゃないですかっ!!?」


 私が顔から火が出るほど真っ赤になって抗議するが、もはや暴走した大公閣下の愛の暴力を止めることは誰にもできない。

 私の純粋な宇宙革命は、彼の手によって「妻を全宇宙の悪意から完全に隔離し、宇宙の真理そのものを『大公閣下の愛』で塗り固めるための絶対防衛空間」へと完全に組み込まれてしまったのである。


「(……ほんと、どこに行ってもこの二人のイチャイチャには頭が痛くなるわ。まあ、大公閣下の魔力がシステムにリンクしたことで、宇宙創世の爆発力ビッグバン・エネルギーが神の領域を完全に凌駕して無限大になったから、ビジネスとしては最高ね)」

 ルミアは、呆れ顔でヒマ端末を叩きながら、悪びれる様子もなく新たな宇宙の定款(事業計画書)を完成させた。


 ◆◆◆


 新宇宙創世ビッグバンを実行するためには、現在の宇宙のすべての魔力とエネルギーを限界まで圧縮し、特異点を起爆させるための『究極の点火エネルギー』が必要となる。


 その恐ろしい宇宙創世の真実を、文字通りの『地獄の底』で支えさせられようとしている者たちがいた。

 グランド・リヴァイアサンの地下最下層、魔力自家発電プラント(懲罰房)。


「ウガァァ……!! ギァァァァ……!!」


 巨大な鉄の回しハムスター・ホイールの中で。

 獣と化し、筋肉の限界を超え、前回の「死後・来世の絶望」を突きつけられたまま、もはや魂そのものがすり減るまで走り続けているギルバート元王子とザイード元王子。

 彼らの背中には重さ百キロの鋼鉄の天使の羽が食い込み、頭上には超高熱のマナ・リングが輝いている。


 その時、彼らの目の前に設置された巨大モニターがパッと明るくなり、ルミアの姿が映し出された。

 ルミアは、ヒマ端末を操作して、再び彼らの脳に『少しの言語理解力と理性』を、悪魔的な正確さで復元させた。


「……あ? はっ……!? お、俺は……ここは……?」

 ギルバートの瞳に、久方ぶりに明瞭な理性が戻る。

 しかし、彼が正気を取り戻した直後、頭上のスピーカーからルミアの無慈悲すぎる宣告が響き渡った。


『あらあら、元・殿下たち。長い間のハムスター労働、本当にお疲れ様だったわ。……今日で、貴方たちのその惨めな回し車生活も【終わり】よ』


「お、終わり……!? 本当か!? ついに、ついに俺たちは解放されるのか!?」

 ギルバートとザイードの顔に、信じられないほどの希望の光が差した。彼らは回し車の中で泣き崩れ、互いに抱き合って歓喜の声を上げた。


「やった! やったぞザイード! 俺たちはついに許されたんだ! 地獄が終わるんだ!!」

「ああ! 長かった……本当に長かった! ありがとうアリス! ありがとうルミア社長!!」


 彼らが感涙にむせぶ中。

 モニターの中のルミアは、この世のすべての邪悪を凝縮したような、極上の笑みを浮かべた。


『ええ。終わるわ。……この【古い宇宙】と一緒にね』


「……え?」

 ギルバートの笑顔が、ピシリと凍りついた。


『いいこと? 我が社はこれから、この古い宇宙を特異点に圧縮して消滅させ、新しい宇宙を創り出す【A&L ジェネシス・プロジェクト】を実行するの。そのための新しい宇宙の大爆発ビッグバンを起こす【起爆剤エンジン】として、貴方たちの肉体と魂を使うことにしたわ』


「き、起爆剤……?」


『そうよ。貴方たちの回し車は今、特異点ジェネレーターに直結されているわ。これから貴方たちには、リミッターを完全に解除して、光の速度を超えて【無限大の回転】をしてもらうの。……貴方たちの肉体は摩擦と超重力で素粒子レベルに分解され、その極限の苦痛とエネルギーが新しい宇宙を生み出すビッグバンの種になるのよ』


「なっ……!!?」

 ギルバートとザイードの顔が、絶望という言葉すら生温い、完全な蒼白に染まった。


「ま、待て! じゃあ俺たちはどうなる!? 新しい宇宙で、俺たちは解放されるんじゃないのか!?」


『あら、言ったでしょう? 貴方たちの肉体と魂は【起爆剤】として完全に燃え尽きて、宇宙の塵(バックグラウンド放射)になるのよ。……つまり、新しい宇宙には貴方たちの存在は一ミクロンも引き継がれない。天国にも地獄にも行けず、来世すらも存在しない。貴方たちは、新宇宙の礎となって【永遠に消滅】するのよ!!』


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」


 完全なる存在の消滅。

 もはや労働地獄すらも許されず、宇宙の肥やしとして消費されるという究極の宣告。


『さあ、歴史的な新宇宙創世まで、カウントダウンを開始するわ。……十、九、八……』


「や、やめろぉぉぉ!! 嫌だ! 消えたくない!! 走る! これからもずっとハムスターとして走るからぁぁぁ!!」

「俺はまだ死にたくないぃぃぃ!!」


『三、二、一……イグニッション(天地創造)!!』


 ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!!


 ルミアの宣告と共に、回し車の床の熱板が、超新星爆発のごとく燃え上がった。

 ギルバートとザイードの肉体は、強制的な魔法の力で光速を超えて回転し始め、その肉体は悲鳴を上げる間もなく光の粒子へと分解されていく。

 彼らの肉体と魂から搾り取られた、命と存在を削る極限のエネルギーが、巨大な特異点コアへと凝縮されていく。


「アリスぅぅぅぅぅぅぅ!!! 俺がぁぁぁ!! 俺が悪かったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 かつて私を無能と嘲笑い、自らの地位にあぐらをかいていた愚かな男たちの最後の絶叫。

 それは、古い宇宙の崩壊の轟音に完全に飲み込まれ、誰の耳にも届くことはなかった。

 彼らの存在は、最強のエンタメ帝国と大公閣下の愛の世界を創り出すための『ビッグバンの火種』として、一滴残らず、魂の欠片すら残さずに完全に消滅ロストしたのであった。


 完全なる因果応報。究極のザマァの終着点。

 ここに、無能な元婚約者の物語は、宇宙の塵となって永遠に幕を閉じたのである。


 ◆◆◆


 ――そして。

 極大の特異点が圧縮限界を迎え、新宇宙を創り出す大爆発ビッグバンが始まった瞬間。


 グランド・リヴァイアサンの最上階、ペントハウス。

 窓の外では、古い宇宙が光の渦に飲み込まれ、古い星々が消滅し、新しい銀河が凄まじい勢いで誕生していく、神の御業たる圧倒的なスペクタクルが展開されていた。


 しかし、その宇宙の激動の中心にありながら、このペントハウスの中だけは、ユリウス様が展開した『絶対防塞・愛の結界』によって、一ミリの揺れも、光の眩しさも届かない、完璧な静寂と甘い空気に包まれていた。


「……美しい光景だ。古いしがらみも、君を傷つけた過去のすべてが消え去り、君と私の愛のためだけに創られた新しい宇宙が産声を上げている」


 ユリウス様は、新宇宙の誕生を満足げに見下ろしながら、私を背後からきつく、そしてどこまでも優しく抱きしめた。

 彼の大きな手が私の腰を撫で、極上に甘く、そして狂おしいほど熱い声が耳元に響く。


「ゆ、ユリウス様……。本当に、新しい宇宙ができちゃいましたね。……私、なんだか夢を見ているみたいです」

 私が顔を真っ赤にして彼のアメジストの瞳を見上げると、彼は私の首筋に顔を埋め、甘い吐息を吹きかけた。


「夢ではない。これが私たちの現実であり、永遠だ。……アリス、新しい宇宙の法則プログラムは完璧に機能している。この宇宙では、君が望むすべての魔法がノータイムで発動し、君が笑うだけで世界中が幸福に満たされる。……そして」


 ユリウス様は、私の左手を取り、そこにはめられたアメジストのマスターリングに深く口付けを落とした。


「私以外の何者も、君の心に触れることはできない。君のすべては、この新しい宇宙の真理として、私だけのものだ。……もしこの宇宙に終わりが来るとしても、私は何度でも宇宙を創り直し、永遠に君を愛し続ける」


 帝国最強の影の皇帝からの、宇宙創世すらも凌駕する、逃げ場のない究極の独占と愛の誓い。

 彼の言葉はどこまでも重く、狂気じみているのに。私はその圧倒的な庇護と熱に、完全に心を奪われ、もはや彼なしでは息をすることすらできないほどに、彼を愛し抜いていた。


「……はい。私、この新しい宇宙で、何億年でも、何兆年でも……ずっとユリウス様だけの妻でいます。貴方の隣で、世界で一番面白くて、一番幸せな魔法を作り続けますから」


 私が彼のアメジストの瞳を見つめ返し、満面の笑みでそっと口付けを交わすと、彼は限界まで理性を吹き飛ばされたような、しかし最高に幸せな瞳で私を抱き上げた。


「ああ。君のすべてを、新しい宇宙の果てから果てまで、魂の底の底まで、永遠に愛し尽くしてやろう」


 世界中の富と概念をビジネスに変え、ついには宇宙すらも創り直してしまった、魔導商会A&Lのえげつなくも痛快な覇道。


 そのすべてを手に入れたルミアは、今頃別の部屋で、新しい宇宙に生まれた無数の星々に向けて、さらなるえげつないビジネスプラン(星ごとの関税や、命のサブスクリプション)を嬉々として練り上げていることだろう。彼女の商売に、永遠に終わりはない。


 そして私は。

 最強のパトロンにして、最高の夫であるユリウス様の腕の中で、誰にも邪魔されない、そして神ですら介入できない、甘すぎる『永遠のハネムーン』を過ごし続ける。


 窓の外には、私たちが創り出した真新しい青い地球と、煌めく新しい銀河が広がっている。

 無能な元凶たちは完全に消え去り、残されたのは、圧倒的な魔法の技術と、えげつないビジネス、そして、世界で一番甘くて重い、至上の愛だけ。


 私たちの痛快で、常識外れで、そして最高に幸せな魔導ビジネスと新婚生活は、この新しい宇宙と共に、無限の未来へと向かって輝き続けるのだった。


(全36話 完)

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