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ドラムトの後を追い、闘技場に出た。
向いに設置された司会席からドラゴシャを筆頭にデカイカニやローブを着た奴らがこちらを見ている。
「ドリー……奴らはどんな奴らだ?」
「見た所、各王の中でそこそこ実力のある者達が集まっているようですが……」
即死もあり得る……やはり油断は出来ない……
『すぐにやれ』
『それではチェンジングを打ちます』
胸ポケットの骨兵は注射器をカジロウの胸に差し込み、液体を注入した。
ドラムトは止まり振り向いてドリーと後続の冒険者達の様子をうかがっている。
「君達……今なら引き返せるよ?」
ドラムトが冒険者達に忠告するが、ザンガンは一笑した。
「おぬしらドラゴンは相変わらず自信家だのぅ……ほっほ」
カジロウは肩に掛けたてあった銃火器に炎マガジンを装填し、ロックを解除する。
「ドリー……で?あいつはなんなんだ?」
「はい、龍王様の側近のドラゴシャでございます」
「仲間なのか?」
「先程の口ぶり……理由はわかりませんが恐らくは……」
「おいおい、来いよ……どうしちまったんだ?えぇ?骸王……俺が恐ろしいか?」
「ああ……俺は臆病なんだよ……今日の所は大人しく帰ってくれないか?」
カジロウは答えながら周囲に小さくした骨達を24体ばら撒き次々と【ラブネクロ】していった。
『殺して良い、全力で戦うぞ』
『承知致しました』
カイゼンハーツ、オーラ将軍を筆頭に骨達はギシギシと音を立てて立ち上がる。
『護衛隊長はカジロウ様を堅守……絶対に守れ』
「ガハハハ!……」
ドラゴシャは軽く息を吸い、自然と炎を吐き出した。
【ファイアランス】!
ザンガンはいち早く反応し、ザンガンの炎とドラゴシャの炎は熱風を散らしながら相殺した。
ドラゴシャはザンガンを眺めた。
「ほぅ?人間にしては良い炎を出すじゃないか……グフフ……生意気だ!」
ドラゴシャは深く息を吸うと再び炎を吐き出した。
どデカイ炎は空気を燃やし、黒くうねりながらカジロウの元へ突き進んでくる。
護衛隊長達は全面に出てオーラを展開し熱風を遮断した、ザンガンとカイゼンハーツは相殺を狙い魔法を繰り出したがその勢いは止まらない。
「少し下がっていてください」
ドリーは右手に握った黒い炎を放とうとした瞬間、後ろから更にデカイ炎が出てドラゴシャの炎を飲み込みドラゴシャの方へと突き進む。
ドラゴシャ以外の怪物達は避け、残ったドラゴシャは体を煤で真っ黒に汚しながらドラムトを睨みつける。
「テメェ……ドラムト……どういう……」
「兄さん……観客席を見て……関係ない客まで巻き込む気なのかい?」
ドラゴシャは観客席でバタバタと逃げようとしている愚民達を確認した。
「あぁ?……フ、フハハハハハハ!お前の考えてる事はたまによく分からんが、それが望みなら良いだろう」
ドラゴシャはマイクを手に取った。
『レディースエンジェントルメン!ご注目あれ!』
ドラゴシャは炎で身支度で騒ぐ観客席の一部を吹き消した。
『今から楽しい戦いが始まります!臆病者も!勇敢な者も!弱い者も!皆等しく着席し、骸王解体ショーを見物しろ!わかったな?……よし』
「ドラムト……どんなに愚弟だろうとお前は俺の仲間であり、かわいい弟だ……会場の客が心配なら俺は傍観しよう……お前達」
ドラゴシャは司会席に座り、部下に手で合図を送ると腕組みをして部下とカジロウの様子を眺めた。




