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原っぱの上で気持ち良く寝ていたカジロウはパチッと目を開け、ねぼけて麻痺した思考が戻り、気が付いた時には夕焼け空を眺めていた。

「はぁ、よく寝たな……」

ふぅ……何時間寝たのだろう?


「カジロウ様、お目覚めですか?」

「やっとか……吾輩、腹が減ったぞ」

ドリーとマタタンの顔がヌッと視界に飛び込んできた。


「ああ……」

カジロウは起き上がり首をさすった。

首と腹の消え去った温もりを感じた……


俺はいつの間にかドリーに膝枕されながら腹にマタタンを乗せながら寝ていたのか……


「よく熟睡されていたようで」

「悪かったな、おかげで熟睡出来たよ」

「とんでもございません」

マタタンはカジロウの首に巻きつき、囁いた。

「カジロウ……飯の時間だ」

「確かに夕方だな、では飯でも行くか!」

「畏まりました……既にレストランの予約は……」

音拡張魔法を施された女性の声が公園に木霊した。

『はい、生徒の皆さん……ここがゴザエン公園です……教科書で習った通り、以前は京都で一番の力を持っていたミヨトミ家の屋敷が御座いましたが、解放戦争終戦の後……陰陽師達の処刑場となった場所です』


「なんだ?」

声の主は、その後ろでザワついている生徒達に歴史の説明をしているようだった。

「申し訳御座いません、直ぐに……」

「いや、良いよ……俺達はすぐにいくんだろう?」


説明をやめさせようと歩き出したドリーの手を引き止め、カジロウは生徒達の制服を観察した。


……魔法学校の生徒か……パエリ達と同じ学校だな……


「……カジロウ様がそう仰られるなら、それではレストランへ案内致します」


『それでは一時間程の自由時間と致します』


教師の一声で生徒達は蜘蛛の子散らす様に入った。


その中の数名はカジロウの元に走り寄って来る。

見覚えのある子供達だ……

「カジロウ様?」

「ああ……」

「カジロウ様!何処へ!」


カジロウは不思議がるドリーを余所に子供達の元へ走った。


「なんだ?カジロウ……知り合いか?」


小さな歩幅で兄弟達に負けじと一生懸命走るポラの足が草に絡め取られた。


「ああ!ポラ!転んでしまぅ!」

カジロウが叫ぶと首に巻きつくマタタンは尻尾を伸ばして躓き中を舞ったポラを受け止めた。


カジロウはパエリ達と共にポラの元へ駆け寄った。


「あぁ!大丈夫か!」

「パパパァ!ほら!ポラ、作ったの、ほら!」


ポラはポケットから手作りの貼り絵をカジロウの手の上に乗せ、カジロウと絵を交互に指差した。


恐らく自分を貼り絵で表現しているのだろう……不細工な絵なんだが、幸福感に満ち溢れている。


「怪我はないか?」

「うん!」


「カジロウ!……カジちゃん!……俺も!僕も!」


カジロウの手には次々と貼り絵が積まれていく。


……どれもこれも不細工で独創的にに表現しやがって!お前ら全員!天才だ!


「お前ら!全員天才!」

カジロウは涙腺を引き絞り、全員を纏めて一斉に抱き締めた。


一番年長のパエリはカジロウの腕をひらりと回避し口を開いた。


「カジロウさん……お久しぶりです……ゼスタさんは?そのオバサンは?」

パエリはドリーの角を視界に捉えて睨みつけた。


「ああ……パエリの歳なら魔王軍に加盟した事は知っているな?補佐役としてされたドリーだ

ドリーこの子達は俺の息子と娘だ」


「そうですか、パエリさん……以後お見知り置きを」

「ふんっ!」

手を差し出されたパエリはそっぽを向いてカジロウに自分の貼り絵を叩きつけた。

カジロウの顎を触ったり腕に乗っていたポラやその他の子供達も険悪な空気を読んで静かにしている。


……反抗期か……

「カジロウ様……レストランは十分な広さを確保しております、この方達もお呼びしては?」

「あんたなんかに言われたくない!汚らしい!」


「お前達、お腹は減っているか?」

「減った……俺も……」

子供達は無邪気に答えている。


「まぁパエリ、ご飯を食べてゆっくり考えようよ……下の子達もこう言っているし、一緒に行ってくれないかい?」


「……ふんっ!」

パエリはそっぽを向いてカジロウの服を掴んだ。

OKの意味なのは理解したが、パエリはこんな子だったか?

困惑したが、カジロウはあえて何も発言しなかった。


「それではご案内いたします」

「やっと飯にありつけるな……」

「キャハハハッ!マタタンの尻尾!」

マタタンは尻尾で子供達をあやしている。


魔法学校の教師に話をつけた後、

ドリーに連れられカジロウ達は闘技場の様なレストランへと案内されて入っていく。


服を掴んだパエリは無言で下を向いてついて来ていた。

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