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「皆様方、ここで少々お待ち下さい」
コロッセオの様なレストランに入ると、
ドリーはカジロウ達をロビーに残して受付に向かって従業員と話をしている。
おそらく席の確認を取っているのだろう。
いつもドリーの仕事ぶりは信用しているのでカジロウはロビーのソファーに腰掛け、正面の窓を眺めていた。
そのレストランは高台にあり、窓からは街を一望することができる。
ちょうど夕陽が落ちようとしていて幻想的な風景だ。
「わぁ〜!みんな小っちゃいね!……きれいねぇ〜」
子供達は窓を眺めてはしゃいでいる。
「カジロウさん……」
「ん?ああ……」
振り向くとパエリが座るカジロウを見下ろしている。
……少し威圧感を感じるのは単に夕陽で顔が照らされているからなのだろうか?
「パエリ、どうした?」
「カジロウさん……さっきの質問です」
さっきの質問?……
「…………え?」
「……ゼスタさんは何処ですか?」
「ゼスタさんなら使い魔でお知らせ致しましたので、まもなく到着いたしますよ」
いつの間にか受付を済ませ背後に立っていたドリーがパエリの質問に答えた。
「……オバサンには!聞いてない!あんたなんか!嫌いよ!」
静かなロビーにパエリの怒号が木霊し、
ドリーはやや驚いた顔でパエリの様子を伺っている。
……これは叱らなきゃダメだな
「パエリ……さっきもドリーの事を悪く言っていたね?何を怒っているのかはわからないけど……」
「カジロウ様、私は気にしておりませんので……」
気遣うドリーに対してカジロウは首を振った。
「ドリーそういう問題じゃないんだ……パエリ、君はドリーに不満があるのかい?」
「違う!私は!……あ……ちが……ただ!……」
「今日はドリーさん、パエリ?どうかしました?」
ゼスタは酒瓶片手にこちらに歩いてきてパエリの様子を伺っているが、パエリは俯いたまま何も言おうとしない。
ゼスタも何も言わず、パエリの事を抱きしめた後に話し始めた。
「……貴女は何も言わなくて良いですよ……さぁみんなでご飯を頂きましょう」
「やったぁ!……腹減ったぁ!」
ゼスタは子供達に声をかけ、付いてきた子供達を連れて歩いていく……
「パエリさん、ゼスタさん達行きましたよ?」
「…………ドリーさん……あの、ごめんなさい」
「いえいえ、お気になさらずに……あえて言うならば貴女にとってはオバサンと言うよりお婆さん……いやそれでも若すぎるくらいでしょう……それではゼスタさん達を案内しますので」
ドリーはにこやかに笑うとゼスタたちの後を追って走って行った。
パエリは無言でカジロウと手を繋ぎ、パエリを連れてカジロウはドリー達の後を追って歩いた。
パエリが歩きながら震える声で呟いた。
「……父さん……また消えて……しまうの?」
その言葉がカジロウの探究心を突いた。
……パエリは無闇に人を傷つける様なことを言う子じゃない、何かがあったんだ。
『骨達、パエリの奴隷購入時の記録があった筈だ!探せ!』
カジロウの自宅の掃除をしている骨兵が記録を出して眺める。
奴隷記録は身長や体重などが書いてあり、転売され多分だけページは追加され厚くなる……パエリの本は他の子より若干厚い……その重みが骨兵を通してカジロウを何とも言えない気持ちにした。
『一番古いページを見るんだ』
売主は……ジェーン・メイスン……母親か……
備考欄には商人が売主から聞いた事を乱雑にメモ書している。
備考欄……金に困り売った為。
暴力によるアザ多数
数カ所、残る可能性あり
性的経験あり
『カジロウ様……今私が孝行している先の主人がジョン・メイスンとジェーン・メイスンの夫妻です、彼らは旅行中で間も無く帰る予定です』
『わかった、お前とカイゼンハーツを交換する。カイゼンハーツ後は頼んだ』
『承知いたしました』
カジロウは平静を装って歩き、ドリーに案内されるまま、パエリを他の子供達とともに席に着かせた。
コロッセオの貴族専用席の様な場所でカジロウは手すりに手をかけて闘技場でマイクを持つ司会者を眺めながら、無心に努めていた。
『レディースエーン!ジェントルメン!本日は闘技レストランへお越し頂き!誠に有難うございます!』
「カジロウ様……ザンガン達冒険者にもお越しいただこうと思うのですが……」
「ああ……任せる」
ドリーはカジロウの表情に違和感を感じつつも
先程帰還した使い魔を確認した。
……もう少し嫌な顔をすると思ったのですが……いや、私はカジロウ様の安全を考えるだけ、余計な詮索は……
……?……この子……気のせいか?……何かがおかしい?
ドリーは先程購入した使い魔を出し、ザンガン達の元へ飛び立たせた。
ーーーーメイスン夫妻の家
「うぉー!帰ったぞ!」
「ふふふ……貴方ったらぁ」
「がははは!聖スケルトン様様だぜ!こんな事になるってわかってたら……あん?」
メイスン夫妻が勢い良く開けた先の机に
いつもより一回り大きいスケルトンが座ってこちらを見ていた。
「ヒューヒュー……メイスン夫妻ですね?私はカイゼンハーツと申しまして、カジロウ様、直属のスケルトンです」
「ひっ!あなた!」
「しゃっ!喋りやがった!」
奇妙で何処となく不気味な声にジョンは驚き尻餅をついた。
「ヒュー……ヒュー……突然失礼、この声は風の魔法で出していますので……そう怖がらずに……」
「は……はぁ……で、直属のスケルトン様が何用で?」
「まぁまぁ取り敢えずお掛け下さい……ヒュー」
カイゼンハーツに促され、夫妻は椅子に腰掛ける。
ジョンは少し考えて口を開いた。
「……ちょっと失礼じゃございやせんかね?何で自分の家の椅子に何であんたの許可が?」
「そうでしたね……ヒュー」
「まぁいいや……で?何だ?」
「少しだけ……お話をお聞きしたくてまいりました……ヒュー」
「話?」
「そうです……以前、パエリと言う子がここに住んでいたと思うのですが……」
「……ああ、パエリの事か……あの子は隣にいるこいつの連れ子でしてねぇ〜」
ジョンはジェーンの肩を寄せて話し始めた。
「いえね……あの頃は今とは違って村も貧しくて……仕方なかったんですよ……こんな事になるって分かってたらもっと楽しんだのに……残念な事をしましたよ」
ジョンに同調し、ジェーンも話し始めた。
「でもあの子……せっかく連れてきた客に対して反抗したり、私に新しい父親はいらない何て言うんですよ?私の都合も考えない身勝手な子でしたよ……」
「……最低な奴らだな……ヒュー」
目の前に居るスケルトンの雰囲気が変わったが、ジョンは頭に血が上って怒鳴りだした。
「……なんか文句あるのか?あんたいきなり来て何だ?ああ!?テメェ失礼じゃねーか?ここは俺の家だ!出て行け!」
カイゼンハーツはジョンとジェーンの腕を掴み、ジョンの腕をゆっくりゆっくり捻っていった。
「あ?……あんだぁ?離せ!コラ!」
ジョンは抵抗し、カイゼンハーツの腕を叩いたが、カイゼンハーツが動きを止めることは無かった。
「いてぇ!よせ!わかった!やめろ!ぐあぁ!」
カイゼンハーツの剛力にジョンの腕が悲鳴を上げ、次第に骨が肉から飛び出した。
「なぁ!もうよせよぉ!やめてくれ!」
その後もジョンは泣いていたが腕が捻り切れるまで止めることはなかった。
「うがぁぁ!」
ジョンは腕が切れるなり床に膝をついて痛みに動けないでいる。
カイゼンハーツはゆっくりとジェーンの方を見た。
「ひぃぃ!嫌よ!やめて!」
「ヒュー…あんたは実の母親だろ?何故こんなロクデナシから守ってやらなかったんだ?…ヒュー」
「ひぃぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
『最低な奴らだな……まぁいい……カイゼンハーツ!そいつらは牢屋に閉じ込めておけ!そこで何不自由なく生かしておくんだ!』
『生かして……おくのですか?』
『ああ……絶対に殺すんじゃないぞ……それとその夫婦がパエリの客として紹介した者も全て捕らえろ!扱いは同じだ!』
カジロウは通信を終えて溜息をついての手すりに背中を付けた。
目の前では弟を膝に乗せたパエリが優しく微笑んでいる。
「パエリちゃん!さっきは怖かったよ!」
「ふふ……ごめんね……さっ次は何を食べたい?」
「そこのブドウ!……私はバナナ!」
……殺すか……拷問するか……
「何ですか?カジロウさん?一緒に食べましょうよ!」
「ああ……今いくよ」
それはパエリが大人になって望なら……彼女に決めさせよう。




