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宝島で逢いましょう  作者: 沖藤 花香
第一章 はじまり
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1.プロローグ

2014年10月 沖縄県


目を閉じると静かに波の音が聞こえた。

風の音さえも聞こえるかのように

髪を優しく揺らしていった。

何かに守られているような柔らかい風。

とても心地がよかった。


閉じていた目を薄く開けると、夕日が水面を

きらきらと赤く染めながら

静かに沈んでいくところだった。

まるで、赤色の宝石が落ちて割れ、

粉々になっていくように見えた。


私の思い出みたい。

朝倉菜月あさくらなつきは心の中でそう思った。


今日も一日が終わる。

どんなに忙しい時でも、

楽しい時でも、悲しい時でも

時間は決して止まらない。

この瞬間も世界中のどこかでは、

恋人と過ごしている人や

家族と食事をしている人、

仕事をしている人、

電車に乗っている人、

走っている人、涙を流している人

笑っている人、悩んでいる人、

そして昔を思い出している人・・・

色んな人がいるだろう。


この夕日・・・とても懐かしい。

あれから一度も会っていないし、話してもいない。

逢えないなんて、連絡がとれないなんて・・

だけど、どこかで生きているでしょう。


夕日は完全に割れきったかのように、光らなくなった。

菜月はただ呆然と日の沈んだ砂浜で、立ち尽くしているだけだった。


すると波の音とは違う、別の音が聞こえてきた。

菜月は真っすぐ海を見つめながら、その音に集中してみた。

まるで葉を噛むような音だ。

それが砂浜を歩く音だと気付いた時には、

菜月の身体は、海に背を向け

音の聞こえる方を見つめていた。


どんどん日が沈んでいく中で、

はっきりと見えないが、

人が立っているのがわかった。

距離にしたら20メートルくらいだろうか。

しかもこちらを真っすぐ見ている・・


菜月は目を細めて、その「人」を見つめた。

そして自分の目がみるみる見開いていくのが

わかった。

そこにいる「人」が誰なのかわかったからだ。


忘れていない。

忘れるわけがない。

でもどうしてここに?


一瞬頭が真っ白になる。

言葉が出てこない。


ただ立ち尽くす菜月に

その「人」は一歩づつ近づいた。


波の音が遠く感じた。



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