第2話
西園寺さんと出会った数日後。特に日常への変化も無く、今日も変わらず学校を終え、恒例の部活動勧誘から逃げ、夕食の食材を買って歩いていると。見知った顔がふらふらと足元がおぼつかない姿で歩いていた。
「西園寺さん?」
「へっ? あぁ、小鳥遊様……ごきげんよう……」
白雪の様な肌が青い、そして目の下の隈が酷い。誰が見ても明らかに睡眠不足である。
「どうしたんですか? だいぶお疲れのようですが……」
「あはぁーここ数日ぅーちょっと忙しくてぇー」
ふらふらと頭が揺れながら語尾が伸びている、今にも落ちそうだ。
「っと……大丈夫ですか!?」
倒れ込む西園寺さんを受け止める、急に倒れたせいか周囲の人もギョッとしている。
「すぅーすぅー」
「ちょ!? こんなとこで眠らないで下さい!」
「むにゃむにゃ……」
「いやベタですか!?」
周囲の人達がざわつきながらが遠巻きに見ている、スマホを構えてる人もいる。
(このままだと痴漢とかいってSNSで晒されるかも!?)
「西園寺さん、すみません!」
とりあえず慌てて担ぎ上げる、お姫様抱っこになってしまうが許してもらおう。
◆◇
「ふぃー焦ったぁ……」
急いで自宅まで帰りソファーに寝かせる、幸か不幸か今日の両親は仕事で家に帰ってこないし変に勘ぐられる必要は無さそうだ。
「思わず連れて帰ってきちゃったけど……どうしようか?」
西園寺さんとはこの間初めて会ったばかりだから連絡先も知らないし。荷物を漁るのは犯罪だ。
「とりあえず、夕飯の支度してようかな。西園寺さんは食べるのかな?」
本当に凄く疲れているのか爆睡している。
「起きたら聞いてみようか、まぁ食べるでしょ」
それから数時間後、作った夕食を食べていると西園寺さんが目覚めたようだ。
「あれ? 私……ここは?」
「えっと……おはようございます?」
「っつ!? 小鳥遊様!?」
西園寺さんがビクリとしてこちらを見る、その後自分の格好を確認して顔を真っ赤にする。
「ままま、まさか私!?」
「えっと、寝落ちしちゃってたのでウチに運ばせてもらいました」
「あっ、それはすみません……」
――くぅぅぅぅ……。
「あうぅ……すみません……」
可愛らしく鳴ったお腹を抱える西園寺さん。まぁ数時間も寝てれば当然か。
「とりあえず、ご飯にしませんか? 簡単なものしかないのですけど……」
「あっ、いえ! 不躾に眠ったばかりか食事までは!」
――くぅ。
「あうあうあうー」
もう一度可愛らしくお腹が鳴ると、顔を真っ赤にして悶絶する。
「あー実は、起きたらお腹空いてるかと思ったんで作っちゃったんです。食べてもらわないと勿体ないので、もしよければ。それと、一人で食べるのも味気無いですし」
――くぅ……。
三度目のお腹の悲鳴だ、相当にお腹空いてるのだろう。
「ううぅぅ……いただきます……」
陥落した西園寺さんは一度身だしなみを整えるとの事で洗面所へ急いで行った。
「そ、それじゃあいただきます」
対面に座った西園寺さんが手を合わせる。
「あ、美味しい……」
「良かったです。とはいっても、冷凍ものを煮ただけですけどね」
「それでもです、ここ最近忙し過ぎて、しっかりと食事が出来ていなかったので……」
「そうなんですか?」
「はい、最近仕事が忙しくて……あっ……」
つい言ってしまったのか、慌てて口を閉じて明後日の方角を見る。どうやら一般人には話しちゃいけない事だったみたいだ。
「そうだったんですね、それじゃあ今日は沢山食べて下さい。おかわりもありますので」
聞かなかったことにしつつ彼女へ食事を勧める。食べ終えちゃったしお風呂の準備でもしておこう。
「すみません、食べ終えちゃったのでお風呂の準備をしてきますね。それとおかわりのご飯はそこの炊飯器に入ってますので」
「あ、はい……ありがと……おおおお、お風呂ですかぁ!?」
「えぇ、流石に入らないと気持ち悪いですし。それに臭いますからね」
「におっ!? 確かに、そうですが……いささか性急すぎる気が……(ごにょごにょ)」
何を言ってるのだろうか、まさか……西園寺さんは仕事が忙しくてお風呂に入れない所謂『風呂キャン界隈』なのでは!?
「うぅ……わかりました。時間が大丈夫でしたら先に入って下さい! 母さん秘蔵の超高級入浴剤がありますので!!」
普段、忙しいであろう西園寺さんに寛いでもらえるように、念入りに風呂掃除をしなければ……。
「ふぇ!? あ、あの小鳥遊様!?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
それから食事を終えた西園寺さんをお風呂へ案内して料理の後片付けをしていると。今更ながら同年代の超美人が自分の家の風呂に入ってる事に気付き、そわそわする事になってしまった。
「あ、あのぉー、お先お風呂いただきましたぁー」
いつの間にかお風呂から上がっていた西園寺さんに声をかけられる、そして何故か服が俺のシャツを着ている。
「ああああ、あいっ! お湯加減とかどうでございましたでしょうか!?」
「ひゃい!? とと、とっても気持ち良かったですっ!」
何か湯上りの西園寺さんから良い香りが……俺と同じシャンプーとか使ってるんだよな!?
「小鳥遊様?」
はっ、トリップしてた!?
「よよよ、よかったでござる! せせ拙もお風呂にはいってきましゅ!?」
近付いて来てた西園寺さんから逃げるように転がり出てお風呂場へ向かう、どうして俺のシャツ着てるとかそういう問いをすっ飛ばして逃げる事しか出来なかった。




