第11話
検査を受けたり、病院に行った日から二日後。朝食を済ませた俺と西園寺さんは西園寺ママさんに呼ばれ初日に通された広間に居た。
「さて、二日ほど家を開けてたけど問題は無かったかしら?」
「はい、特には」
「鷹翔君も体調は大丈夫かしら?」
「はい、おかげさまで元気になりました。ただ、上げ膳据え膳なのがちょっと気が引けますね……」
家では両親に代わり家事全般をやっいたので気になってしまう。
「ふふっ、それは慣れて頂戴。だけど、鷹翔君はこれから忙しくなるわよ」
柔らかく笑うママさん、でもなんか背中が薄ら寒いんだけど……。
「い、忙しくですか?」
「えぇ、その前に……っと、丁度良く来たようね……」
メイドさんが入って来る、そしてその後ろに居る人を見て俺は驚きの声を上げる。
「母さん!?」
「やっほー鷹翔、元気してた?」
「やっほーって、いやいや! ここそういう軽い感じの家じゃないから!」
「え〜でも〜良いよね、澪奈ちゃん?」
「えぇ、大丈夫ですよ結翔ちゃん」
「結翔ちゃん!?」
西園寺さんも驚いている。
「母さん、説明をしてほしいんだけど……」
「いやー澪奈ちゃんと気が合ってさ、昨日はめっちゃ一緒に飲んじゃった!」
「飲んじゃったって……、すみません澪奈さん……」
「良いんですよ、私も久々にお友だちと飲むなんてなかなか無い事だし、久しぶりに楽しんじゃった」
上機嫌で笑う澪奈さん、それに応じて母さんも笑う。
「なんというか……楽しんでもらえたのなら良かったです……」
西園寺さんも苦笑いをしている。
「それで、母さんが澪奈さんと仲良くなったのはわかったとして、なんでここにいるの?」
「なんでなの、澪奈ちゃん?」
「ふふふ〜小鳥遊君。アナタは今、許婚とか居るのかしら?」
「えっ? 許婚?」
いきなり出てきた許婚のワードに間抜けな声が出る。
「いやいや、彼女とかすっとばして許婚ですか?」
「そうそう、許婚」
「居ないですけど……」
「そう、じゃあ彼女とかは?」
「居ないです……」
「そうなの? かなり見た目は格好良いんだから居てもおかしくはないのに……」
不思議そうに腕組みながら言う。
「いやいや、鷹翔が垢抜けたのはつい最近よ? それまでは、太ってはいなかったけどぱっとしない冴えない感じのオタクだったし。テレビに出るようになってから『これで俺も彼女が、ぐへへ』って言いながら身だしなみとか整え始めたじゃない」
母さんによって羞恥の記憶が暴露され顔が赤くなる。ここでそんな事言わないで良いのに!
「うぅ……折角忘れてたのに、掘り返さなくても良いじゃないか……」
結局、社交辞令でアイドルや芸人さんとトークアプリの連絡先を交換したくらいのうっすい生活だったし……。
「そうなのね、じゃあ都合が良いのかしら? 鷹翔君、零音の許婚……婚約者になっていただけないかしら?」
「はっ!? ……げほっげほっ!」
飲もうとしてたお茶が気管に入る。
「小鳥遊様!? お母様!?」
澪奈さんの発現と隣で俺が咽た事に西園寺さんが狼狽するが、すかさず背中をさすってくれる。
「そんなに驚くことかしら? 二人は既に同じ部屋で寝食を共にしてるんだし♪」
「寝食を共にぃ!?」
今度は母さんが驚く、というか教えて無かったんですか。
「同衾なんて普通に考えたら結婚した男女でのやることよ?」
「「うぐっ……」」
「肌を見せ合って? 一緒の布団で寝て? 今も四六時中一緒に居る。零音も嫌っている様子は無いし、お似合いだと思うのよねぇ……」
「諦めなさい、鷹翔。貴方と違って零音ちゃんは良家のお嬢様なの、そんな子と同衾したり肌を見せ合ったなんて一昔前なら〝コレ〟よ」
親指で首を斬る真似をする、いやいやそんな……。
「そんな馬鹿な事……ありそうだな……」
遠くの襖から|西園寺さん大好きメイド《夏季》さんがスコップ片手に今にも俺を殺さんとばかりに見ている。
「うぐっ……でも、西園寺さんの気持ちは?」
「零音の方は大丈夫よ。だって、満更でもないって顔をしてるし」
「へっ?」
意外過ぎる澪奈さんの発言に、西園寺さんの方を向く。すると耳まで真っ赤にして〝にへら〟と笑みを浮かべている姿が目に入る……可愛い。
「ふぇ? あっ、あのっ! これはそのっ!」
「鷹翔、女の子にあんな顔をさせたのなら責任取りなさい。お母さん、そんな甲斐性の無い男に育てた覚えないわよ」
母さんがニヤニヤしながら言って来る、楽しそうな顔が憎らしい。
「わかりました。婚約者の件は、前向きに考えるという事で。一回、西園寺さんと澪奈さんを含めてちゃんと話し合ってから答えを出そうと思います」
澪奈さんに視線を向ける、すると残念と言わんばかりに息を吐いて肩を竦める。
「そうね、勢いに乗せてOK貰えると思ったけど、話し合いは必要よね?」
「おっけー。じゃあ私、パパに電話してくるね~」
「うぐっ……ご案内します……」
血涙流しながら夏季さんは、母さんの案内を買って出てくれた。
「澪奈さん、どうしていきなり俺なのかを説明してもらえませんか?」
姿勢を改めて向き直ると、澪奈さんは柔らかい笑顔から真剣な顔に変化した。
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