表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/293

40.【俺】寝不足でも学校行くってえらくね?

 ねっむい。当たり前だけど(まぶた)が鉛のようだ。次はつまらないと評判な社会の授業。確実に逝くという自信がある。寝るのは仕方がない。けれど、この授業合間のプチ休み時間、ここで如何(いか)に休めるかで眠りの深さが変わるだろう。


 あっ寝れ……そ


「何か嫌な事でもあったの?最上君」


 ああああああああああああ


 肩ポンされて覚醒してしまった。誰だよ俺の眠りを妨げる奴はと恨みの籠った目を向ければ俺の前に女の子。明るく元気いっぱい、クラスのムードメーカー、陸上部の高瀬彩(たかせあや)がそこにいた。


 滅茶苦茶仲がいいというわけではないが席が俺の隣なので気になったのだろう。


「単純な寝不足。ふわぁっマジで眠いんだ。ってことでまたな高瀬」


「いや、私隣だし、まだ二限目なんですけど」


 茶髪を後ろで括った高瀬は顔も可愛く性格よしで、クラスの人気もトップ。俺も当初は隣同士になれたことを喜んだものだ。今では軽く話せる程度の良き隣人に仲が発展。まあもうここ止まり確定的だろうけども。脈の無いと分かってる女の子。彼氏がいるって噂も聞いていた。まあこれでいない方がおかしい。


「ってことでお休み」


「何かやってたの?テスト近いから勉強とか?」


 何でよりにもよって今日話しかけてくるのか。


「違う違うイチの事だからゲームだって高瀬さん」


 俺の代わりに返事をしたのは前も紹介した悪友、お猿の弥彦(やひこ)。お前だってゲームばっかの癖にとジロリと睨む。


「おい、睨むなってイチ。だったらお前何やってたんだよ」


「ゲーム」


「ゲームじゃねえか!何で怒られてんの!?理不尽だろ」


「寝不足でイラっとした」


「珍しいね、何のゲームやってたの?」


 それを言うなら高瀬がここまで話しかけてくる方が珍しいが……


「デュアルミッシュっていう一応レトロゲー?コンシューマーの奴だよ、絶対わからないと思う」


「高瀬さんってゲーム興味あるんすか?」


「うん、ゲーム好きだよ私」


 意外。聞いた弥彦も目をパチクリしてガっと身を乗り出した。


「VRとか興味ない?フェスっていう今すんごいゲームが出てて世界中のプレイヤーが集まってて。よっ良かったら俺と一緒に――」


「あっうん知ってるよ。今度友達とやる予定だから。ごめんね弥彦(やひこ)君」


 ガクっとうなだれる弥彦(やひこ)。流石にフレコ交換しようとかまでは踏み出さないようだ。絶対嫌われるから正解である。俺らモブは向こうから来るまで待つべきなのだ。まあ、そしたら一生こないけど。


「それでそれってどんなゲームなの?最上君」


 意外と食いついてくる。ゲーム好きってのは本当なのだろう。


「どんなゲームって言われてもなマジで一世紀前のゲームかなテキスト下に出るタイプの。ただやたらグラや反応がリアルで糞面白いんだよな」


「ホントに面白いのか?それ?」


「いや、だったら徹夜してないし。まあ街づくりとかに嵌るタイプだから俺に刺さっただけかもしれねえけど」


「町作れるの!?」


 ぐいっと寄ってきてうおってなる。スンスンいい匂い……じゃなかった。


「えっと……町つうか迷宮?多分、いずれは国造りになるんじゃないかなって。んで住人とか配下の魔物とか色々考えることあってさ」


 途中から何言ってるかわからなくなった。高瀬さんが近い。眼が輝いている。


「ねえ今度ネットで見せて貰っていい?」


「いや、オフゲーだし」


「あーそっかー」


「でも、配信する……かも」


「イチ、お前配信者になんの?」


「最上君配信するの!?」


 言ってしまった。配信は一時期廃れた文化だが今また配信サイトがVRに適合したため再熱している。そっちが主流なんで今時コンシューマーゲーム配信とか視聴者ゼロの可能性もあるけど。


「あっお前らだけに留めといてくれ、内緒な。妹に言われてさ。趣味みたいな感じで軽くやるつもりなだけだからさ」


「やる時教えてね。私のメアド知ってたっけ?」


「しらないけど」


 じゃあはいこれ私の番号とメモを差し出してきてふぉおおってなった。弥彦がすんごい目で見てる。怖。そして何かを思いついたようにハっとしキリリとした顔つきになる。ヤバい喋ってないのにこいつの考えてることがわかる。


「改めて自己紹介します高瀬さん、俺、イチのし・ん・ゆ・うの猿飛弥彦といいます。何とかというゲーム俺も聞いておきますね」


「そっそれは直接聞くから大丈夫かな」


 まあアドレスが知りたいのだろう。俺から聞けばあれだが、できれば彼女から欲しいのだ。それに親友とはいえ相手の許可なく勝手に教えられないし。ガクっと項垂(うなだ)れる弥彦。それを見て高瀬さんがクスクスと笑った。


「ごめんごめん意地悪だったね。はい、猿飛君もフェスで分からないことがあったら良かったら教えてね」


 うおお、メアドゲットおおおっと体全体で喜びを表現する弥彦。それをするから相手も教えにくいというのは無粋(ぶすい)だろうか。まあ、正直なので弥彦のこの性格は嫌いじゃない。


「ねえ最上君」


「ん?」


「無視しちゃ駄目だよ?返すのはいつでもいいけど、そういうタイプな気がしてさ」


 う゛。読まれている。女性に興味がないといえば大嘘だが、俺は三度の飯よりゲームな男。夢中になり無視して怒らせたこと多々有り。


 しかしだ。


(高瀬ってこんな奴だったんだな)


 色々、相手の事は表面だけじゃわからないものだ。こうして高瀬彩と猿飛弥彦は俺の配信コメ欄の常連となりデュアルミッシュを共に楽しむ友人となるのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ