落ちこぼれのレッテルと急な告白
――――はてさて、今日から高等部か。
ナギは目を覚ました。
「ぅうむ、春眠暁を覚えずとはよく言ったものじゃのぉ」
兎に角眠い。
当回しに春の陽気に充てられたと言っているのだろう。
「あふ…眠い」
そこへ、ルナがナギの部屋へ入ってきた。
「おはようさん」
「うむ、やはり春は眠いのぉ」
「でも起きてよ、今日から高等部に行くんだからさ」
一瞬『春眠不覚曉』という言葉が脳裏を過る。
が、それも束の間、ナギは布団から出ると、さっさと布団を畳んで押し入れに仕舞った。
「相変わらずナギは行動が早いな」
「ふふん、これでもそなたよりは経験を積んでおるぞ?」
普段、ナギはベッドでは無く雑魚寝。
故に布団を片付けなければならないのだが、普段から慣れているせいか、早い。
そしてもう既に着替えている――――女子が一般に着る制服姿を。
因みにルナは反対に男子の制服だ。
「しっかし僕も母さんも驚いたよ。あれだけナギが男子の制服嫌がるのは」
「それはルナも同じじゃないのかの? …まぁどうにもあれは妾には合わんのじゃ。男女差別、反対じゃの~」
ルナはあはは、とあきれた様に笑った後、「じゃあ、朝ご飯食べに行こうか」と確りと朝食を摂る事を促した。
「賛成じゃのぉ」
● ● ●
二人は朝食を摂りに向かった。
朝食を摂った後、ナギ達はギルド『獣王』のギルド長室に居た。
「まぁ、気を取り直しておはようね」
この女性の名は、アルテミス=ウルフォウス。
れっきとしたギルドマスターであり、ルナの母親兼、ナギを引き取った人物でもある(しかしナギの正体は知らない)。
「母さん、今日呼び出したのは学校の事で、で合ってるんでしたっけね?」
「そうよ~」
「童は兎も角として、ルナは色々な意味で目立ち過ぎる、その為の対処は万全であろうな?」
「大丈夫、大丈夫よん♪」
「その余裕が怖いよ、母さん」
うっ、とルナは思わず引いてしまった。
「はい、これ」
出されたのは金色の指輪。
「これは?」
「ん~、これは【超禍の封環】って言ってね? これである程度魔力を抑えてくれるんだから便利便利♪」
アルテミスはルンルン気分でいる。
「ありがとう、母さん」
「んじゃ、ぱぱーっと転移しちゃいましょ」
「ギルドの皆の許可は?」
「ちゃ~んと済ませてるわ」
パチンとアルテミスが指を鳴らすと、そこに学園の姿があった。
こういう時に限り、高も呆気無くさらりと魔法を使ってしまう辺り、情緒に欠けるのは勿体無が気がしてならないと感じてしまうのだからナギとルナにとっては目下悩みの種であった。
――――閑話休題。
● ● ●
シェルノブール魔法学園。
ナギ達がこれから通う魔法学園。
これまでは普通の学校で過ごしてきたが、ギルドに在籍している以上通わざるを得なくなったのだ。
「何もかもが圧倒的じゃの」
兎に角城みたいな外見をしているからなのだが。
「兎に角会場に行きましょう♪」
「僕達より母さんの方がハイテンションって…マジで恥ずかしい」
「うぬう、ルナもそう思ったか」
「ああ」
入学式会場には大勢の人が来ていた。
「さ、ここよ。座りましょ」
ナギ達一同は椅子へ座る。
「って、母さんは向こうの席だって!」
ルナは保護者席を指さす。
「え~」
「じゃないですよ?」
「ぶぅ…けちんぼー」
しぶしぶ席を離れるアルテミス。
(難儀なやっちゃのぉ)
式が終わり、ナギ達は教室へ向かった。
向かった先はFクラス。
「妾は余り歓迎されていないようじゃのぉ」
「獣人だからね」
「人種差別反対、じゃ」
「ああ」
ナギ達は扉を開け、教室に入る。何人かいる。
「格差社会反対じゃ」
室内はぼろかった。
いや、ぼろっちいと言った方が良いか。
木造らしく、何もかもがボロボロに脆くなっているのか丸解りである。
此処で授業しろ、と?
ふざけるな、と怒鳴りたい衝動に駆られ、ぐっと堪えるナギであった。
「というより、昔の学校の教室の様な感じじゃな」
「昔の教室?」
「うおっほん…むう、その様な事よりも席に座るのじゃ」
ナギは無理やり話を逸らした。
「話を逸らさない」
「大人な対応じゃ」
「大人?」
ナギは顔を逸らす。
「そうじゃ、大人の事情というやつじゃ」
「事情?」
ナギの心は冷ややかであった。
「まぁ、それはいいや、席座ろう」
(助かったのぉ)
時間がたち、生徒が粗方集まった時女性教師が入ってきた。
「今日からお前達落ちこぼれの担当をする事になった、エリス=エギンレイヴだ!」
(別にこのクラスに入ったからと言って落ちこぼれだけがいるのはおかしいんじゃがのぉ、妾達が居る時点でな)
「初日から飛ばしてくるのぉ。うむ、激を入れてくれたお蔭で俄然やる気が出てきた」
「何を変な事を言っている」
「変ではない、教師の鑑じゃと申しておるのじゃ、寧ろ誇る事じゃと申しておる」
(ナギ、相変わらずだな)
「まぁいい、兎に角このクラスに入ったからには地獄を見て貰おうか。さて、お前らは耐えられるかな?」
厭味ったらしい口調でエリスは話す。
「取り敢えず名前だけは聞いといてやる」
鎌は掛けたつもりじゃが…さて、どうしたもんか、などと考えている間にナギに順番が回ってくる。
「妾の名はナギ=ハゴロモと申す。特技は変化の術じゃ、宜しくのぉ」
ナギの自己紹介が終わった途端ざわついた。
《ナギ、もうちょっと当たり障りのない紹介をしてくれないか》
ナギが席へ移動していた時、ルナがこそっと言った。
《ついつい周りの反応を見たくてのぉ》
と、自由過ぎるナギであった。
最後にルナ。
「僕の名はルナ、ルナ=ウルフォウス。座右の銘は『限界なんて有って無い様なモン』だ。…ま、取り敢えず宜しく頼む」
(お主も言っている傍からやってくれるのぉ)
「終わったか、取敢えず今日はここまでだ、帰れ」
そう言うなりエリスは出て行ってしまった。
さて、この教師をどう料理しようか等と身の毛もよだつ様な無い様の話でざわめく始末であった。
そこへ、がつがつがつ、どかっ…という音を立てながらナギとルナの両名の見知った人物が駈け込んで来たのだ。
「ふ~間に合ってよかったよぉ」
「げ、母さん」
そう、アルテミスが其処に現れたのだ。
と、いうよりは“やってきた”と言うのが正しいか。
「やれやれ…主の方向音痴にも困ったものじゃのう」
「方向音痴じゃないもん! まさかこのクラスにいるとは思はなかっただけだなんだもん!」
「じゃあ母さんは僕達が何処に行くのか…所属すると思ってたんだ?」
「とーぜん、『S』! だからそこでずっと待ってたのにぃ」
「あの、どういう事ですか?」
突然、一人の少女が声を掛けてくる。
「え、ああこの娘達――――むぐっ」
何かを言おうとしたので、大慌てでアルテミスの口を塞ぐルナであった。
「あああ、大人の事情、そう、大人の事情なんだ、あはははははっ」
冷や汗を掻きながら、言い包めようと躍起になっている姿は何ともみっともない姿である。
「大人の事情?」
「そそそ、ほ、ほら行こう、母さん!!!」
「主等、済まんの」
ナギ達は大慌てで、その場をそそくさと後にした。
学園の寮の入り口まで逃げてきたナギ達。
「ふう、ギルドマスターともあろうお方がこうも尻軽とはのぉ」
「母さん、少しは自重してくださいよ」
「ぶーぶー!」
「これで大人というのが恥ずかしい」
「同感じゃ」
「兎に角僕達は学生寮の方に用事があるんで、今日はもう帰って」
「何で?」
「…一度胸に手を当てて考えてみたらどうじゃ?」
「何で――――」
「『転移門』!」
ナギは妖術で展開した扉を開けて、アルテミスをギルド長室に送り返した。
「ナ~~~イス、フォロ~~~」
「やったね、百点満点。…こほん、暫く転移出来ない様にしておいたぞい」
「それで良いよ、GJナギ」
「お~あた~り~~~」
「そのネタ、何時まで続ける気?」
「…おろ?」
最後の最後で、滑るナギであった。
● ● ●
学生寮に入ると、豪華な造りだった。ほんとに宿舎なのかと一瞬思ったが、Fクラスなので期待してはいけない。
「まぁ、洞穴よりはましなのは、確かじゃろうな」
「一体今まで同生活していたんだ?」
「洞穴で昼寝」
「…それだけ?」
「たまぁに退魔師に遭う程度かのぉ、と着いたの」
退魔師、という言葉の意味は解らないが、兎に角悠々自適に暮らしていたという事実は理解出来る。
暫く歩いて到着した先に待ち受けていたのは、プレハブの様な簡素な宿らしきものだった。
特段、オンボロと言う訳では無いが、派手さに欠けるのは確かな様である。
「そう言えば…昔から気になってたけどナギって魔獣か何かなのか? たまにそう思える時が有るんだケド…」
昔、疑問に思っていた事をルナはドアノブを回す。
「む? 妾は化生の物…つまりは『妖』じゃよ」
「アヤカシ? いやいや、ナギは何者だ?」
二人はすいすいと中へと入っていく。
「――――異世界人」
ぼそりと、呟く様に事実を明かす。
「――――へ?」
「ふむ? 聞かれたく無かった訳では無いぞよ? 別に聞かれなかったから話さなかっただけじゃしの」
けらけらと悪戯っぽく笑う。
「ええええっ!?」
ルナは目を剥き、今日一番の大声を上げた。
吃驚仰天、とはまさにこの事だろう。
ナギはけろりとした表情で、ぼすっと継ぎ接ぎだらけ、そして所々綿が飛び出したボロいソファーに腰掛ける。
「そうじゃ。話の続きじゃが、妖とは人々を化かし妖す、闇の住人じゃな」
「闇?」
「ただ、妾がどの立場かと問えば…この世界では確か――――ふむ、『神聖獣』級といった所かの?」
「し、神聖獣!?」
ルナは目の前にある机をばんっ、と思いきり叩く。
「ほれほれ、驚かすでない。机が壊れるじゃろうが」
ナギは呑気に頬杖をしている。
「いやいやいや! な、ナギが異世界人で妖で、聖獣で…てホント、驚く事ばっかりなんだけど!? 度肝が抜け過ぎて腹ン中がすっからかんな感じだよ!?」
「因みに軽く1300は生きて――――おっと、口が滑ってしもたわ」
「ぶふっ!?」
その言葉にまたもやルナは驚いてしまった。
「……下手したらそこら辺にいるエルフより長生きじゃないか」
「ほ、ほ、ほ。それが妾、じゃ」
「いや、解らんって」
「兎に角今は眠い、晩御飯になったら起こしてたもれ」
「えっ? …えええええっ!? ちょっ……」
ナギは獣化し狐の姿になると「くあー」っと欠伸をして寝てしまった。
困った、僕は料理が殺人的だからな。
一応自覚はしているのか。
それよりも彼女にとっての問題は別の所にあったと様で、
「はぁ…今日の僕は驚いてばかりだ…」
暫く、溜息が止まらなかった。
人物紹介#1
名前:ナギ=ハゴロモ(羽衣巫)
性別:男性
年齢:大体1300年
種族:半妖(九尾狐と人間のハーフで神聖獣級)
属性:無し
魔武器:妖刀・大太刀「蜘蛛切丸」(能力は魔法やそれ以外の力をそのものを問答無用で切裂く)
使い魔:???
容姿:腰まである黒髪に何もかもが足りない幼女な姿。女巫服がナギの私服。ギルド員としている時は狐のお面を被っている。
主人公。
異世界の住人なので、魔力を生み出す、魔臓器官が無い。
その為落ちこぼれの様な扱いではあるが、大気中のマナを使用し、魔法を放つことが可能。
また、半妖の為強力な妖力、霊力を持っている故に魔法に頼らなくても戦う事が可能である。
また、ギルド『獣王』に所属しており、ランクは『SSS』以上の『ⅩⅩⅩ』。
かなり自由奔放でマイペースな少女といった性格。
家事全般はそこそこ出来るらしい。
学力は上位に入る。
趣味は昼寝。
一人称は『妾』で、「~じゃ」「~じゃのぉ」が口癖。
二つ名は『逢魔ヶ刻』
名前:ルナ=ウルフォウス
性別:女
年齢:16歳
種族:闘獣人・狼(獣化可能)
属性:闇
容姿:金色の毛皮に銀色の瞳、男性衣装に身を包んでいる。
ギルド員としている時は般若の面を被っている。
使い魔:???
魔武器:双爪“シルバーウルフ”(能力は重力の枷を外し、高速戦闘を可能にする)
ヒロイン(?)。
ギルド『獣王』のギルドマスターの娘で、ランクはナギと同じ『XXX』。
少々、少年染みた思考の持主で熱血が入っている。
学力はナギに次ぐ程。
家事も得意だが、料理に関しては殺人的に不味い。
恋愛関係に関してはドベなのは愛嬌である。
一人称『僕』、または『俺』。
「驚異的な身体能力と高い魔力がそれ相応の実力を醸し出している。
二つ名は『天上の震覇』
名前:アルテミス=ウルフォウス
性別:女
年齢:32歳
種族:闘獣人・狼(獣化可能)
属性:風
使い魔:???
魔武器:???
容姿:銀色の毛皮に金色の瞳。
紺色のローブと紺色の魔女がかぶる帽子をかぶっている。
ギルド『獣王』のギルドマスター。
実力はナギやルナより格段に劣る『SSS』であるものの、『X』級に迫る程。
きちんと仕事はこなせる人。
一応ワイルドセクシーダイナマイツボディー(笑)の持ち主。
料理は一流だが、その他の家事は壊滅的でルナとは正反対。
異世界に飛ばされ、身寄りのないナギを引き取った人物でもある。
性格はナギに近く、自由人だがナギより子供っぽく我儘が入っている分、性質の悪い性格となっている。
二つ名は『天下無双の獣王神』




