第九話 「グラス」
鏡華と六花の後を追ってついた場所は、小さな部屋だった。
綺麗な装飾のドアノブを一握り、そしてガチャリ、と開け…入る。
そこには、大人二人ほどが座れる椅子に座るというより、乗っているように見える
神童と、その横で姿勢良く立っている桜庭がいた。
彼女はいち早く俺に気がつくと、花のように顔を輝かせた。
「あ…」
しかし、気が緩んでいた事に気がついたのか、すぐに顔をこわばらせた。
そしていつのもように桜庭が鬼のような顔で俺に近づき、
「オイ、何ですぐについて来おへんのや!お前、鏡華様のSPやろ!?」
「…すまん」
呆れ気味にいった。桜庭には悪いが、怒っている彼の顔は如何にも女のように見えてしまった。
それを抑えるのに必死になって呆れたような顔をしていたのだ。
桜庭はまだ怒っている。それを神童が珍しく、「まあまあ」といってなだめていた。
しばらくすると、ドアの外からノックが聞こえた。
桜庭がその対応にでる。
しばらく話し込んでいる。
桜庭は話を終えたあと、神童に「しばらく失礼いたします」といって、
ドアから出て行った。
今この部屋(神童の豪邸よりは小さい)には俺と神童の二人。
小さな沈黙が続く。
俺は、咄嗟に思い浮かんだ質問を口にした。
「なあ…お前とさっきの宝珠…?って奴、どんな関係があるんだよ?」
「関係って…」
神童は俯き、黙り込む。
それから、数分経っただろうか。
飲み物を持ったメイドが部屋に入ってきた。
「鏡華様。お飲み物は如何でしょうか?」
そういって、メイドが差し出したのはワイングラス。
同じように持ってきた籠から、ボトルを取り出し、神童のグラスに注ぐ。
「あ、有難う御座います。頂きますね。」
「ええ、どうぞ。」
そういうメイドの額には、汗が流れていた。
それに何故かグラスに注ぐ彼女の手はブルブルと震えている。緊張しているのだろうか。
「…?」
注ぎ終えたグラスには、葡萄のような色が見える。
だがその色は普通の葡萄より黒く、何かを入れたような感じだ。
「では…頂きます。」
そういって神童はグラスを口に近づける。
その時ー…。
「鏡華様、そのお飲み物を飲んではいけません!」
ドアを強引に開けた音と同時に桜庭が飛び込んできた。
《パリンッ》
メイドが顔色を真っ青に変えたのは、その後の出来事だったー…。