第27話 港町の公開昼食会
疑わしい荷を差し止めれば、それだけ噂も広がる。
ゼファールの市場では、王宮向け食材が危ないらしい、港ごと腐っているらしいと、面白半分の話まで混じり始めていた。放っておけば、まじめな商人まで巻き込まれる。
「昼食会を開きましょう」
私の提案に、食堂の面々が一斉にこちらを見た。
「公開で?」
「はい。検品済みの材料だけで作った料理を、商人にも職人にも見える形で出します。どう見分けるかも全部説明する」
エイドリアンはすぐに許可を出した。ヘレナは少しだけ渋い顔をしたが、最終的には銀匙を置いて言う。
「王宮の名を使われた以上、私も席につきます」
昼、港の広場へ長机を並べ、白身魚の蒸し煮、豆の温菜、香草パンを出した。料理の前で私はひとつひとつ材料を示し、匂い、色、水へ落とした時の変化を説明する。商人たちは最初こそ半信半疑だったが、粗悪品の紅花が水を濁らせ、本物だけが香りを残すのを見ると表情を変えた。
「つまり、見ようとすれば分かるんだな」
「全部は無理でも、分かることはあります」
私は皿を配りながら答える。
「分からない時は、止める。そのための仕組みを作ればいいんです」
昼食会の終わりには、差し止めに不満を言っていた魚商まで、検品札を導入するなら自分の倉庫にも来てほしいと言い出した。
噂は放っておくと膨らむ。けれど、目の前で湯気の立つ食事は、意外と強い。誰がどんな顔で口にするかまで見えるからだ。
広場の端でエイドリアンがこちらを見る。その目にあったのは監督者の満足だけではなく、もっと私的な誇らしさだった。
少しだけ頬が熱くなり、私は慌てて次の皿へ手を伸ばした。




