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無職のおっさん、幼女にTSして後日談  作者: 芥部


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20/20

後日談16 名探偵おタヒの事件簿 下


 普段そこそこまとも(?)なチケンだが、メテクエのことになると狂信者に変わる。

 話も聞かなくなるし狂人のように滔々とメテクエについて語り始める。そうするともう誰の手にも負えない。

 おタヒやグリセルダが理解出来るかどうかに関わらず気が済むまで語り続けるのだ。


 知らない世界のことを延々語り続けるチケンは、二人にとって微妙に恐怖だった。現実に友達がいないせいか、と二人は微妙に失礼なことを思っていたが実はメテクエ友達が数人いるし、なんならSNSで延々メテクエの話をしている。

 ある意味、ヴェレルよりも恐怖を感じる時があるのは事実だ。

 ヴェレルのサラへの思い入れとはベクトルが少し違うことだけは理解していた。


 そしてグリセルダとおタヒには『メテクエのお陰で救われた』という負い目がある。


 チケンがメテクエのガチャで天井を叩きまくっていなければ、今頃二人はどうなっていたのかわからない。

 ただ死んでいるだけで済んだかどうかすら怪しい。


 以前おタヒが自分よりもメテクエを大事にするのか、とまるで仕事と私どっちを取るのという若奥様のような詰め方をしてチケンを激怒させてしまったことがある。


『メテクエは俺の宗教だっつってんだろ、宗教に口を出すなら宗教戦争だ。俺はお前が謝るまで帰ってこない! 飯は食料庫から勝手に出して食え!』


 結局そこから三日、平岡を連れて三人のチケン全てが家出をし、帰ってこなかった。行き先は高橋の家で、高橋の実家でゲームと釣りを満喫して帰ってきた。

 グリセルダは来るかと問われて一応断った。

 数日でおタヒが落ち着くだろうことが予測できたからである。


 その結果おタヒはグリセルダの冷たい視線を浴びながら、食料庫から自分で飯を出して食うという屈辱を味わった。

 今まで食事の支度を一回もしたことがなかったし、これからもする予定がなかったおタヒにとってはまるで奴隷にでもなったかのような仕打ちに感じられた。


「何たる屈辱! 斎宮の私が自分で飯の膳を上げ下げするなんて……」


 結局三日目におタヒが折れてチケンに詫び、戻ってきたという事件がある。

 この件で一番被害を受けたのはある意味グリセルダである。

 ただ、グリセルダは食料庫から自分で出して食べる程度のことは問題なく出来るので、おタヒが勝手に大ダメージを受けていただけだ。

 

 この件は上手く立ち回らねばあの事件の二の舞になりかねない。おタヒとグリセルダは悩んだ。


 ちなみに今回も同じ結末になったらグリセルダはチケンに着いていくつもりでいる。

 実際の所、家の中にチケンが色々設置したセンサーで何かあればインテが検知してすぐ駆けつけることが出来るようにはしてあったらしい。

 なので、次回は自分がいなくても大丈夫だろう、という考えだ。


「私たちめてくえの事は何も知らないわよね……」

「確かにな……興味もないが、多少は知っておいたほうがいいのかもしれぬが、サ終とやらでどうにもならぬしな」


 おタヒが困り顔になる。チケンがそれほどまでに情熱を持って遊んでいるゲームなのだ。一応どんなものか知っておきたいという気持ちはあったが、サービス終了しているので手のつけようもない。


「だが作り手が居るではないか、この家の中に」

「あっ、そうね、平岡が物語を書いたのだったわね!」


 善は急げとばかりに二人は平岡の部屋に押しかけた。

 困惑する平岡におタヒがまくしたてるように事情を説明し、ところどころ足りない場所はグリセルダが追加で補足を入れる。

 それを聞いた平岡は少し考え込んでいた。


「システム面の問題だから今すぐに対処は無理だけど……多分、チケンくんはハマったゲームをやり尽くすまで止めないタイプの人だと思うんだよね」

「確かに凝り性だな、チケンは」

「せっかくなら書や囲碁に凝ってくれたらいいのに……」


 脱線しそうな二人にほんの微量の苦笑をしながら、平岡はノートパソコンを開き何かを入力しているようだった。


「チケンくんがメテクエが原因で倒れでもしたら僕も悲しいからね……その件についてはファビエ王子とも相談しておくから、もう少し時間をいただいてもいいかな?」

「頼んだわよ、だってめてくえのこと何もわからないんですもの!」

「うむ、上手く取り計らってくれ。我らの朝食の一大事だからな」

「そうよね! 平岡も日の出とともに朝餉が食べたいわよね!」

「僕は作ってもらえるだけでも充分だから……」


 自分に同意しない平岡にやや不満な気持ちを感じたが、おタヒは諦めて自室に戻った。チケンに生活を監視していたことを悟られたくない、と思う程度の常識はかろうじておタヒにも残っていた。

 

 その数日後、チケンに驚天動地の出来事が起こる。

 朝七時半。眠気を堪えつつ朝食を出し終えて何気なくSNSをみると、メテクエのアカウントが久々に動いている。

 その告知を見た瞬間、朝の眠気で動かなかった頭に脳内物質が満ちて一瞬にして覚醒する。


『メテオライトクエスト アップデート情報

 ◯月◯日 Ver12.12.12配信! 


 アップデート内容


 既知のバグの修正

 ショップの修正

 エターナルダンジョン新規フロア追加


 アップデート配信期間は年内いっぱいとなっております。ぜひ本当の最後の配信をお楽しみください!』


「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 チケンは三人揃って絶叫して、全員が同じポーズでスマホを持ち、三人揃って号泣している。どう見てもヤバい集団にしか見えない。


「どうしたのだ!?」

「ついに気が触れたの、チケン!?」


 グリセルダとおタヒはうろたえる。朝からチケンがこんなにも怪しい挙動をすることは少ないからだ。


「うううう、平岡さん、社長、カハールカさん、そしてすべてのテオデジの社員の皆様……ありがとう……!! 宇宙一の神ゲー、メテオライトクエストが神アプデをしてくれたんだ!」


 チケンは溢れる涙を隠すこともなく満面の笑みを浮かべる。こんな晴れ晴れとした笑顔を浮かべるチケンを見るのはダンジョン最下層での記念撮影以来、と言っても過言ではない。


「うわっ、ショップの更新が一日一回になってる! もう一日中張り付かなくて良いんだ! その上にラストダンジョンの新規フロア追加だなんてあまりにも良すぎる……まさに神更新だ……!」

「良かったではないか、チケン」

「本当に良かった! 今までメテクエのために二時に寝る生活だったからな……これで睡眠時間が確保できるぞ!」


 グリセルダとおタヒはホッとした。これでチケンが体調を崩すことはないだろう。


「でもやっぱ一番嬉しいのは、年内限定とはいえメテクエが新規DLできるようになったことだな……この神ゲーに一人でも多くの人に触れてもらいたいからな!」


 チケンが笑顔でそう言うと平岡ははにかんだ笑顔を浮かべる。やはり自作を気に入ってもらえる人物の言葉は何よりも嬉しい。


「感謝なさい、チケン! こうなるように私が御仏に祈りを捧げてあげたのよ!」

「マジかよ! まあなんか嘘か本当かわからねえけど、ありがとうな、おタヒ……!」

「これで明日からはちゃんと朝起きなさいよね!」

「おう、任せろ!」


 その日一日チケンはご機嫌で、おタヒの無茶振りにもグリセルダの注文にも笑顔で答えていた。

 それからというもの、チケンは夜は早く寝て朝早く起きるようになり、おタヒたちは七時きっかりに朝食を食べられるようになった。


 謎を解いたおタヒは満足する結果を得た。

 チケンは新たなアプデと布教チャンスに喜び、グリセルダと平岡も規則正しい朝食にありつけている。

 

 全員が得をした……と思いきや、この事件で損をしているのは、インテ経由で勤怠を管理している星間司法庁である。

 なにせ一日あたり三十分の早出。ひと月約十五時間の超過勤務が追加されることになる。

 早出手当を出すことは問題がないのだが、王に部下の超過勤務でお小言をもらうほうが怖い。


 スフォーのメンタルは今日も絶好調に削れていたのだった。



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