期末テストの結果
さて、時にその期末テストだが、結果は大変芳しいものだった。日本史は前の高校で中間テストが八〇点だったのが、八十五点になった。難易度の差を考慮すれば、前の学校なら恐らく百点になっていだことだろう。
鷹鷲は自身の赤点ギリギリのアレな成績プラス俺の結果――学年一〇位となった――を聞いて、脱魂したかのようになっていた。しばらくして入魂して我を取り戻した鷹鷲は
「いや~ビギナーズラッなんとかってやつだろうな」
なんて言いながら、乾いた笑いを上げていた。そこまで出ていてなぜ完全な単語として覚えていない所が、やはり鷹鷲と言うべきところか。
さくら教諭が休み時間に教室に飛んできて、鷹鷲の戯言を馬耳東風する俺の両手を握り、
「国仲君っ、私はいつでもあなた味方よっ。勉強頑張りすぎて辛くなったらっ、いつでも言ってねっ」
と言った後、目を閉じて何度か頷いて教室を後にして行った。
何しに来たんだ、さくら教諭。まったく意味が分からんな。
鷹鷲にしろ、さくら教諭にしろ、俺は何を言われても、受け流しているだけで良かった。成績のこともだ。やってみた。できたところを集めたら、この点数になった。
逆に言えば、できなところも当然ある。それだけのこと。だから何点であろうが、それは俺の中で消化できることである。
だから、例えば意地でも成績上げてやろうなどとは思ない。決して勝ち組なんてものではない。それならとっくにもっと高成績になっていただろうし、彼女の一人でもできているだろうし、何よりあんなアホなことをすることはなかったんだ。
そう、そのきっかけが直接的なのか間接的なのか、認めないといけないことが一つあった。
「ホントにカミ様だな」
沢渡ミカ。彼女の助力が無ければ日本史で、あの結果は出なかった。実際、鷹鷲の中間テストから俺が予想していたよりも難易度が上がっていた。
「伸大、ホント呑み込みが相変わらず早いわね」
カナ姉にテスト結果を見せると、この反応だった。さらに
「ミカリンのおかげかな?」
俺の心中を見透かしているかのような視線を送ってきた。カナ姉だって俺がこんな点数取るとは思っていなかったんだろう。実際、カナ姉が言っていることは、俺の気持ちそのものだった。礼をしなければならない。「お供え物」と呼ぶ心境を垣間見た気がした。ある人にとっては、確かにブランドバッグやらエステ年間無料券を寄進するのも頷ける。だからこそ、競技に関心ある人しか見んだろうというDVDを差し出した鷹鷲には、どえらいツッコミの一つでも入れてやりたくなったが、それよりもだ、俺の頭をもたげたのは、果たしてミカさんに何を差し出したらいいのだろうということだった。
その日一日思案してみた。が、いざとなると浮かばないものだった。というよりも浮かびはするのだ。ランチ一週間とか、でかいぬいぐるみとか、化粧品とかアクセサリーとか、花束、アロマセットなどなど。しかし、浮かんでは消える泡沫のようなもので、どの案もあのファイルと等価交換になるとは思えなかった。何と言っても、あのファイルを学習参考書にしたらベストセラーになるだろうと思える代物だから。




