エピローグ
青い空。
白い雲。
僕はそこで戦った。
何のために戦ったのか。
どうして戦ったのか。
その問いに答えはなかった。
その問いに答えは必要なかった。
篠滝も、僕も、答えを必要としていなかった。
答えが、問いを穢すことを知っていたからだろう。
問い?
答え?
それが何か知ろうとすること、
それが問いで。
それが何か知るふりをすること、
それが答えだろう。
それは、あくまで地上にいた僕が考えたこと。
空では違う。
純粋さ。
それすらも必要のない、深い蒼。
美しい螺旋を描く、ロール。
綺麗に円を描く、ループ。
崩れ落ちる、ストール。
矛盾する、スリップ。
透き通る、ダイブ。
翻る、スナップ。
夢の中の神殿。
夢の中の少女。
夢の中の白刃。
全てが、沈殿するような重さと、纏わり付くような粘度を持っていた。
僕は、それが堪えられなくなって、だからいつも見たのは死ぬ夢ばかりで。
でもそれは別に、夢だけじゃなかった。
篠滝も、僕も、お互いにとってお互いが邪魔だった。
何もかもが、幻想。
飛ぶことだって、きっと幻想だった。
でも僕は、飛ぶことを選んだ。
きっと、篠滝はもう死んだだろう。
僕もだ。
僕が空で手に入れたもの。
そんなものは無い。
あれば、僕はきっと薬莢か増槽に詰め込んで落としていただろう。
そんな重さを持って飛べないからだ。
そこにあったのは、
軋むジェラルミンと、
空気。
冷たさ。
そして、向けられる銃口だ。
それだけだ。
それだけに、何の価値があるのか。
それだけに、何の意味があるのか。
それらもきっと、重すぎて飛べない。
きっと誰かが僕を嗤う。
それでいい。
それに価値も負価値もない。
不等号のない式。
それは、引き金を引いた瞬間に割れる。
僕らは引き金を引く寸前に見えるそれを見ていたかった。
きっと、それだけだ。
そう、それだけだ。




