駐輪場
エンジン音が響き渡る。双発ではない。単発が二機。スクランブルだろう。偵察機を追い払うためにだ。
『何時何時出撃命令が来るとも分からないのに』。新野の吐き出した声を反芻する。スクランブルの回数も、一回の敵機も跳ね上がっている。それに……シーナ。あれは何だったのだろう。僕の知っている中であの飛行が出来る奴はそいつしか知らない。
確実に、あの戦闘機はタラマニアの機体だった。パイロットはミカゴタラ……同盟を組んでいるのなら異動は考えられなくもない。でも両国は戦争中だったはず。
それにタラマニアの【新型爆弾】の噂……。一発で町を壊滅させ得るとも言われている。それが出来上がったのに、何故ミカゴタラに攻撃しない?
煙草の箱を叩き、振って取り出す。ライタで火をつけた。
いつもは何をしていたかこういうときに思い出す。でもそれは曇りガラスを通したように曖昧だ。
駐輪場からバイクを出す。バックできないメカニズムは飛行機に似ている。でも鳳流は可変ピッチで後退出来る。
またあの喫茶に行こう。行こう、と思うと大抵その物に対してどちらかの感情を抱く。それが欲しくなるか、いらなくなるかだ。
僕にしては珍しく後者だった。渋い顔のマスタもストイックなホットドックも悪くない。
強制冷却の空冷が頬を冷ます。冷却フィンがないか手で触れて確かめる。勿論ついていない。
それを一瞬残念に思いながらカーブをきる。頭に冷却フィンがついていたほうが良い奴は結構いる。新野の顔を思い浮かべた。
次に篠滝の顔を思い浮かべた。きっと彼女には液体窒素の低温維持装置が装備されているに違いない。
駐車場にバイクを止める。ガラス戸を開けて中に入る。そこには、ついさっき思い浮かべた篠滝の顔があった。
はい、瓦解への序曲




