レストラン
車の中ではどちらも口を開かなかった。何処へ行くのかを決めてないのに車はハイウェイを走る。
これが飛行機だったら如何だろう。彼女は何処へ機首を向けたのだろうか。
相変わらず車を打つ振動が此処は地面だと認識させる。
このまま離脱して上昇したかった。
何から?
地上から?車から?頬をうつ風から?あるいはこの空気から?
燃料は満タンだ。何処でもいい。どこか僕が知らないところへ行きたい。
このまま横に突っ込んで死んでしまおうか。
少なくともその方が生きているよりもずっと楽で、効率的だろう。生きていることほど非効率なものは無い。己が生み出す数百倍の物を消費し、結局何もプラスをせずに死ぬ。なら生まれないほうがずっと効率的だ。
戦争は何も生み出さない、唯破壊するだけだ。と言う人がいる。生きたいることに比べたらほんの些細な「破壊」だろう。
「幸せ」を作っている、と言う奴もいたなら、幸せって何だ?
精神的快楽?自己満足?本能欲求を満足させること?
赤ん坊のうちに麻薬漬けにして致死量を投与したら普通ではありえないほどの精神的快楽を伴って死ねるだろう。もがいて、苦しんで、悲しんで老いて死ぬのとどちらが幸せだろう。同時に二つするのは無理だからきっとこのまま分からないで終わるだろう。
空を見上げる。小さい頃、どうして大人たちがあんなに「宇宙」を信じられるのかが不思議だった。僕の目には話を聞くだけで簡単に信じる周りの人間がとても滑稽に映った。
自分は正常だと信じて疑わない。
教科書に載っていることは真実だと信じて疑わない。
今時分が見ている物が現実だと信じて疑わない。
それは僕の目にとても滑稽に映った。僕はそんなことを信じている奴らと距離を置いた。
車はハイウェイを下りた。少し走ったところに木造のレストランがあった。車はそこに入った。どうやら此処で食べるみたいだ。車はシノタキのロードスターとバイク、トラックが一台止まっているのみだった。
二階が住居なのだろう、錆びた鉄の階段があった。僕らはその横のガラス戸を開けて中に入った。
中はフローリングと木目の見える壁で纏められていた。動いていないシーリング・ファンが店の空気を一層重くしていた。
シノタキは店の一番奥の二人掛けのテーブルに座った。僕はその前に座った。店内にはもう一組入り口近くにいるだけだ。
「どうする?」
シノタキがこちらを一瞥して聞く。ほっそりしたシルエットが少年のようだった。
「さあ……少なくとも何か決めていた覚えは無いな」
ウェイトレスが来たので会話を中断する。注文を手早く済ませて彼女に視線を向ける。横を向いてを結んでいる。
「スナップ・ロールの時」
「……?」
彼女に視線を向ける。彼女はこちらを見ていた。
「ラダーとエルロンのタイムラグで沈み込みが変わる。どうしてる?」
「下に回りこむ」
僕は答えた。
「二機が連携して一機を落とす時、撃墜役の一機はほぼ上から来る。囮役からも後ろ下方は見えない」
「低空戦闘時は如何切り抜ける?」
彼女がまた聞いてきた。
あれ?ながびくなぁ。




