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第1話:どうしてこうなった

「あ~これは、どうすればいいんだ……」


俺、春風未来は頭を抱えていた。


目の前では、金髪の少女が涙を浮かべながら震えている。


「ああ……私はこれからどんな辱めを……みんな……すまない……」


そして――

「格好良かった。やっぱりあなたは私の運命の人」


銀髪の少女が、なぜか俺の背中にぴったりと抱きついている。


「違う!誤解だって!」


俺の叫びも虚しく、周囲の視線が突き刺さる。


ざわめきが広がる。

(……どうしてこうなった?)


俺は現実から目を逸らすように、三時間前を思い返した。

________________________________________

「お~、着いたー!ここが学園都市アウレリウスか!」


思わず声が漏れる。


石造りの街並み。人々は当たり前のように魔術を使っている。火で調理する屋台、風で運ばれる荷物、水で手を洗う子ども。


どこを見ても、魔術が生活の一部になっていた。


「やっぱすげえな……」


俺は今日、アウレリウス魔術師養成学校の入学試験を受けに来た。


理由は単純だ。


この学校を出れば就職には困らない。学費は無料、成績優秀者には助成金も出る。


(奈々を、学校に行かせる)


妹の顔が浮かぶ。


両親はなんとかすると言っていたが、そんな余裕がないことは分かっている。


だから俺がやるしかない。


「……受からなきゃな」


受付を済ませ、試験までの時間を潰そうと歩き出した、その時だった。


――ガサッ


「……?」


音のした方へ目を向ける。


路地裏。

そこには、銀髪の少女と、男が三人。


「ヘイヘイ嬢ちゃん、どうしてくれんだ?俺の腕、傷ついちまったんだけどよぉ」

どう見ても因縁だ。


「やめてください」


少女は静かに言った。


声は落ち着いている。


だが――


よく見ると、膝がわずかに震えていた。


(……怖がってるのか?)


そう思った、が。


少女は一歩も引かない。


逃げる素振りもない。


ただ――

男たちとの距離を、測るように見ている。


(……なんだ?)

妙な違和感が残る。


「証拠はあんのか?こっちは見たって言ってんだぞ?」


「私は、嘘はつきません」


はっきりと言い切った。


その瞬間、男たちの顔が歪む。

「じゃあ身体で払ってもらうしかねぇなぁ!」


男たちが一斉に踏み込む。


その瞬間、俺の足も動いていた。


地面を蹴る。

一気に間合いを詰める。

――風を切る音。


「ぐっ!?」

「なっ……!?」

気づいた時には、三人とも地面に這いつくばっていた。


峰打ちだ。殺す気はない。


「女の子相手にそれはダサすぎるだろ。消えろ」


「くそっ……!」


男たちは這うように逃げていった。


静けさが戻る。


「……大丈夫か?」


俺は少女に声をかけた。


「ありがとう。助けてくれて」


銀髪の少女はそう言って、少しだけ息を吐いた。


だがその目は、まだ男たちが去った方向を見ている。


「別に。見過ごせなかっただけだ」


そう言うと、少女は俺を見上げた。


「……怖かった」


ぽつりと呟く。


そして、少しだけ間を置いて――


「止まれなかったら、どうしようって」


「……え?」


意味が一瞬、理解できなかった。


だが少女はすぐに首を傾げる。



「これって……運命?」



「……は?」


話が飛んだ。


「いやいや、そんな簡単に運命とか言うもんじゃないぞ。君かわいいんだからさ」


我ながら意味不明な返しだ。


だが少女は気にした様子もなく、小さく頷いた。


「……私、ティナ。ティナ=エトライト」


「ああ、俺は春風未来。未来でいい」


「未来……」


名前を呼ばれると、少しだけくすぐったい。


握手を交わした、その直後だった。


「……っ」


ティナの身体が崩れ落ちる。


「お、おい!?」


どうやら一気に力が抜けたらしい。


俺は慌てて支えた。


「無理もないか……」


「未来……やさしい」


「当たり前だろ。こんなの放っとけるかよ」


そう言った、その瞬間――


「そこのあなた!女の子を解放しなさーーい!!」


上から声。


次の瞬間、炎が降ってきた。


「うおっ!?」


とっさにティナを抱えて飛び退く。


さっきまでいた場所が、爆ぜるように燃え上がる。


「な、なんだお前!?」


「私はアリス=クインフォード!情熱の炎の魔術師よ!」


金髪の少女が堂々と名乗る。


いや、名乗ってる場合じゃない。


「その子を連れ去ろうとしているんでしょう!?このロリコン!」


「違うって!助けただけだ!」


「ロリコンはみんなそう言うのよ!」



会話が成立しない。


魔法陣が展開される。


まずい――


「待って!」


ティナが叫んだ。


炎が止まる。


「……私、未来に助けられただけ」


よし、これで――


「本当は……もう少しで終わってた」


「お前ええええ!?」


「やっぱり変態じゃない!」


悪化した。


「ティナ!頼む、もう一回!」


「……未来、やさしい」


「違うそうじゃない!!」


もう無理だ。


「ごめん!落ち着いてから話そう!」


俺はティナを抱え、その場から全力で逃げ出した。


後ろから「逃げるな変態ー!」という声が聞こえるが、無視だ。


________________________________________


「はぁ……はぁ……」


しばらく走って、ようやく足を止める。


「……大丈夫か?」


「うん」


ティナは小さく頷いた。


少しだけ、自分の手を見つめている。


「……弱い人は、すぐ壊れる」


「え?」


「ううん、なんでもない」


首を横に振る。


時間を確認する。


「やば、あと十五分か」


「何が?」


「入学試験」


「……あ、私も」


「マジかよ」

思わず笑った。


「じゃあ一緒に行くか」


「うん」



ティナは小さく頷いた。



その表情は、どこか安心しているようにも見えた。


________________________________________

試験会場に着いた瞬間、ざわめきが起きた。


「おい……今の見たか?」


「魔術……使ってなかったよな?」


視線が集まる。


試験官がこちらを見る。


「君、名前は?」


「春風未来です」


一瞬、空気が変わる。


「……面白い」

小さく呟く。


(なんだ……?)

違和感が残る。

だが――

それが、この先の運命を大きく変えることになるとは、

この時の俺は、まだ知らなかった。


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