イルミネーションもたまには悪くない
まんのう公園にたどり着き、日没までしばし仮眠を取る二人。
まんのう公園のイルミネーションはどんなものなのかな?
◯登場人物
凰太
39歳
ゲーマー。兵庫県神戸市に住む。
沙絵、さーちゃん
42歳
香川県に住む。元は神戸市に住んでいたらしい。
バツイチで、中三の娘がひとりいる。
携帯のアラームが鳴っている……
「う……もう夕方になったんかな……?」
まんのう公園の駐車場に着いたあと、日没まで一時間以上あったので、車内で仮眠していた。
助手席のさーちゃんを見るとすやすやとまだ眠っていた。マフラーを巻いて暖かそうにしている。
普段の彼女も若く見えるが、寝顔を見ていると、更に幼く見える。42歳という実際の年齢より十は若く見えるんじゃないかな。俺がどちらかというと、年齢よりも老け顔だから、逆に俺のがめちゃくちゃ歳上に見られる気もする。
「パンケーキおいしい……むにゃむにゃ……」
夢のなかでもパンケーキ食べてる〜!!
相変わらず食いしん坊だな。でも、無理に我慢しているよりも、素直にそうやって言ってくれるほうがいい。
「さーちゃん、そろそろイルミネーション綺麗に見える頃やで〜」
「あ……めちゃくちゃ寝てたわ……もう暗くなってきたかな……?」
「うんうん、あまり遅くなってもあかんから行こっか」
周りを見ると、来たときにはあまり停まっていなかった車も、かなり増えていた。
ゆっくり中に入っていくと、他の観光客がいるにはいたが、そこまでごった返しているという感じではなかった。それに日が沈んで視界がそこまで広くないので、人がいたとしても、見えていないことも良かったのかもしれない。
「わっ! 見てみて、おーくん! 凄く光ってるよ」
入り口付近は光のトンネルのようになっていた。さーちゃんと俺はその光のトンネルを、ゆっくりと歩いていく。
すると、光のトンネルの出口の方に、イルミネーションというよりか、何か御伽の国のような世界が広がっていた。
「すご……」
俺が見たことがあるイルミネーションと言えば、神戸のルミナリエくらいだったが、ルミナリエは例えて言うと光のアーチだったり、光のお城、というイメージだ。
ここ、まんのう公園のイルミネーションはまた違っていた。
広大な公園の敷地に、なだらかな丘の全面に、光の草原がひろがっていた。
赤、青、緑、ピンク、白、様々な色の草原が、多彩な模様で描かれている。まさに描かれているようだった。
「めちゃくちゃ綺麗だね〜!! おーくんあっちも行ってみよ」
「あ、う、うん。思ってたより、凄いイルミネーションやわ〜! びっくりしたわ」
俺は都会よりも田舎のが好きと話したかもしれないが、別に自分をロマンチストと言うわけではないが、星空や、自然の景色、動物や花など、人口のものではなく、自然にあるものが基本的には好きだ。
なので、イルミネーションというと、人が手を加えた完全に人口のものなので、自然ではない、というただのイメージだけで、なんとなく気取ったものという感覚で、避けていたのもあったかもしれない。
でも、初めてイルミネーションも、それはそれで良いのではと思った。
人が加えたというのは、言い方を変えれば、色々な人の努力で成り立っているものということだもんな。この綺麗な光景を作るために、色んな人が携わっている。もちろんそこにお金も絡んでくるかもしれない。でも、それ以上に、たくさんの人に感動を与えてくれていることに、感謝した。
「おーくん。私、幸せだよ」
「え、どうしたん急に?」
「大げさかもしれないけど、私今まで、ここまで誰かに大事にされたことなかったから。おーくんが、ホントに私のこと想ってくれて……大事にしてくれて。私も、もっともっと大事にしたいと思ったよ」
暗くてよく見えなかったけど、さーちゃんは少し泣いている気がした。
「ありがとう。俺も、さーちゃんにいっぱい愛されていて、めちゃくちゃ幸せやで。あっ、でもさーちゃん」
「ん?どうしたの、おーくん」
俺は、思っている気持ちをそのまま伝えることにした。
「幸せはまだまだこんなもんじゃあないで。これからずっと続くんやから。だって、俺……さーちゃんの最後の人なんやから」
手を繋いでるさーちゃんが、少し震えていた。
「おーくん……好きっっ!!」
「いてっ!!」
累計何十回目かの、さーちゃんアタックである。さーちゃんは感極まると勢いよくぶつかってくる。本人はじゃれているつもりらしい。
「あはは、ごめんごめん。あっ、チサから電話やわ」
チサちゃんは今日は確か部活だから、今帰り中とかかな。
「あっ、うんうん。今イルミネーション見てるから、帰りにチキンとケーキ買って帰るからね〜」
そういえば、前にも言っていたな。クリスマスはチキンとケーキ。電話を切ったあと、さーちゃんが俺に言う。
「あっ、そうそう。前にチサとネットで見てて凄いね〜て言ってたのがあって、できたら作ってみたいと思ったのがあったんやけどね……」
その、さーちゃんから聞いた作りたいものは、とんでもないものだった。あ、決して危険という意味のとんでもないではないんだけどね。
イルミネーションをたっぷり堪能した二人。
帰りにチキンとケーキを買って、今晩は三人でクリスマスパーティーだ。
さて、サエの言う作りたいものとは何かな……?




