撃退方法について考えてみる
テリーと相談した結果、おれたちは家にいることにした。
家を出たとしてもついて来られる可能性があるので、迎撃するなら間取りを熟知した家が一番だろうという結論に至った。
まあ、クリスマスイブの夜、男二人で幽霊から逃れるためにクリスマスムード全開の世界に飛び込むのも、寒い外に出るのも精神的負担が大きいというのが最大の理由だった。
「クリスマスイブにうちにやって来たことを後悔させたんねん」
「ほんまな」
おれもテリーも苛立っていた。
できる限り短期決戦。もうこの一日で決着をつけたい。やばいやつが家の中にいる状況じゃ安心して寝ることもできないし、このまま年を越すなんて論外だ。
とりあえず今日は様子見もかねて寝ずに過ごすことにした。ただ、やっぱり問題もあった。迎撃方法だ。
「テリー、さっきも話してんけど、まじで幽霊が出てきたらどう対処したらええと思う?」
買ってきたフライドチキンを齧りながら聞いてみた。……ん? 幽霊なんかな? おれは見てないしわからない。まあ面倒くさいし幽霊でいいか。
「そやな……とりあえずステゴロで仕留めにいこか」
「いきなり物騒やな。相手女の人なんやろ? 手荒すぎん?」
「………………」
反応がなくてテリーを見ると顔を皺だらけにして支部に顔をしていた。なにか言いたげな顔をしているのに促してもため息をつくだけだった。
「言いたいことは色々あるけどそれは置いといてや、いきなり人の家に侵入してるし、ゴミ袋とはいえ切り裂かれてるんやぞ。手加減いらんやろ」
「なるほど。でも、幽霊やで? 物理攻撃があかん場合も考えとかな」
「せやな、その時は消臭スプレーでいこ」
「よく聞くやつやな」
「せや。あれで除霊できるらしいからな」
「でも、今回のやつフローラルな香りしたんやろ? 悪臭じゃないけどいけるんか?」
「ほんまやな。なんか相性悪そう……なら塩でも撒くか」
「塩な。それはありかも。あとハーブソルトもいっとこ」
「なんでハーブソルトやねん。そんなとこにおしゃれ要素いらんやろ」
「こないだ買ってんけど使い勝手悪くてさ。今こそ使い時かなって」
「隼人、お前それ幽霊に怒られんぞ。在庫処分みたいに使うなって」
「あかんか……他なんかないやろか」
「そやなあ……あ! 音楽や」
「音楽?」
「なんかな、明るい音楽を流しとけば除霊というか幽霊が去っていくらしいで」
「幽霊が暗い存在やから明るいのが苦手ってことか」
「そうそう。だから将軍サンバがええらしい」
「えらい明るいとこいくな」
「あれ、衣装もキンキラキンやし、踊りも楽しげやし、歌ってるの将軍様やし、最強らしい」
「なら早速かけよか」
ということでおれたちはスマホで将軍サンバを流すことにした。
『SHO・O・GU・Nサーンーバーーーー!! オレッ!!』
おれのスマホから大音量で将軍様の声を垂れ流すこと一時間。将軍サンバのおかげか、それとも向こうにその気がないのか、おれたちは無事食事を終え、交代で風呂を済ますことができた。しかし、エンドレスで聞き続けた結果、ノイローゼになりそうになった。
曲をかけ始めた頃は良かった。
子どもの頃に流行った大御所時代劇俳優の曲で、口ずさむとうきうきしてくる。しかし、十回目ぐらいからしんどくなり始め、三十分経つ頃には頭の中に金色の浴衣を着た将軍様が踊り狂い、一時間ちかくなってくると頭の中の将軍様が三十人ぐらいに増えて眩しい笑顔を振り撒きながら行進を始めた。
はっきり言って気が狂いそうになっていた。
「頼む……一回止めてくれ。頭の中がサンバだらけや」
止めようか悩んでいた時、テリーが死にそうな声で言った。何故かテリーの目は充血している。おれは「そやな」と返事をしながら素早く音楽を切った。
一時間ぶりの静寂。
特になにもしていないはずなのに、二人とも謎の疲労感に襲われ、げっそりしていた。




