魔道具屋
巨大な皿と言えばいいだろうか。いや、計量器と言ったほうが適切か。とにかく、魔石を大量におけるような、直径恐らく5メートルはある多いな皿がそこにあった。
恐らく、その巨大な皿の台座が魔道具のコアであるマジックオーブが設置されている場所なのだろうと推測した。
「これが魔石をマジックオーブやパワーポットに変換する魔道具です。結構魔道具屋には普及している魔道具なので、あまり珍しいものではありませんが……」
恥ずかしそうに語る店員。どうやら機密情報でも何でもなく、魔道具屋としてはある程度当然備えておくべき設備なのだろう。
「この魔道具って売っているんですか?」
「この村では売られていませんが、割と大きな町に行けば普通に売られていると思います。魔道具屋を始めるにはこの手の道具を一通りそろえなければなりませんので、大きな町で必要な魔道具を一式購入するのが魔道具屋になるための第一歩ですからね。」
ふむふむ、と頷いておく。
別に俺は魔道具屋になりたいわけではないのだが、どうやらこの世界では魔道具を作り出す術があるようだ。それが俺のように魔術式を理解する者によってなされているのかどうかは今後調べる必要がありそうだ。
にしても、この魔道具に組み込まれている魔術式が知りたい。だがしかし、流石に今俺のマジックオーブを起動して目の前の魔道具の魔術式をコピーするにはこの店員が非常に邪魔だ。
もっとお金を積んでコピーさせてもらうか? とも考えたが、それはNGだ。魔術式をコピーする行為自体を誰か他人に安易に見せるのはマズイ。
とはいえ、大きな町でそのような魔道具を買うことができるというのなら、今は別に手持ちの魔石をパワーポットに変換してもらえればいいかとも思えてきた。この村にきていきなり騒ぎになるようなことは極力避けたい。
「ありがとうございます。勉強になりました。ところで、持ち込んだ魔石を全てパワーポットに換えたいのですが、可能ですか? 現金は持ち合わせていませんが、先ほどのような金の延べ棒だったらまだあります。」
「そうですね、現金ではないとなると計算が難しいのですが…… とりあえず金の延べ棒1本もあれば十分です。それにしても、魔石を売却ではなく全部パワーポットに換えられるんですか?」
少し訝しむように俺を見る店員だが、俺にはその理由がよくわからなかった。
「普通は売却するのが一般的なのでしょうか? すみません、ハンターになって日が浅くてその辺りの一般常識がないんですよ。」
「ハンターになりたてでこれほど大量の魔石を手に入れられるなんて、それ自体驚くことですが…… パワーポットにしろマジックオーブにしろ、ただのハンターには利用できないかと。マジックオーブは中身が空の状態ですから、何の魔法も使えませんし、パワーポットは魔術師には基本的に不要でしょう? 王都や大都市のゴーレム工場でしか需要がありません。」
その言葉を聞いてようやく理解した。それと同時に自分の発現が迂闊だったといわざるを得ない。なので咄嗟に考えた言い訳を使うことにした。
「魔道具やゴーレムの勉強をしていまして、それでマジックオーブやパワーポットが欲しいんです。」
「なるほどなるほど、同業者を志す方でしたか。それではお望み通りパワーポットにして差し上げますよ。しばしお待ちいただけますか?」
俺は小躍りして魔道具屋のカウンターで待つこと10分。出来立てほやほやのパワーポットを手に入れた。重量にして恐らくゴーレム10体分くらいのパワーポットだろうか。
「では、ありがたく金の延べ棒をいただくことにします。またのご来店をお待ちしていますね。」
丁寧なあいさつを受け、上機嫌で魔道具屋を後にした。
◇◆◇
グリードの応対をした魔道具屋のケルビーはグリードが店を出た後で金の延べ棒を見つめた。一目見ただけでそれがかなりの純度であることが分かる。
「こんな立派な金の延べ棒をあの青年がどうやって手に入れたのだろうか?」
それだけではない。
あの大量の魔石。
あんな量を手に入れるにはそれこそゴブリンの巣の1つや2つを壊滅させないと手に入らないだろう。つまり、それだけの実力を持ったハンターとなるが、あんなハンターはこの村では見たことがない。
「あの青年が何者なのか興味がわきますね。」
ケルビーの眼鏡がきらりと光った。




