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夜襲と新兵器の試運転

 櫓が5か所はある。1つの櫓にゴブリンが10匹はいるだろうか。

 

 さらに、森の中に目を向けると、木や葉が邪魔して良く見えないが、何かがざわざわと動いているのが分かる。恐らくゴブリンだろう。そう考えるとかなりの数…… それこそ、100や200では済まないほどの数のゴブリンがいるだろうということは分った。

 

 グリードの記憶にはゴブリンと直接ことを構えた記憶はなさそうだが、ゴブリンという生き物に対しては知識があるようで、それと照合させてもほぼ間違いない。

 

 とはいえ、相手がどんな武器を持っていて、何人いるかも分からないのに突っ込んでいくのはあまりにも危険すぎる。こっちにいる戦力は、暗仁 、黒影、殲鬼の3体のゴーレムだけだ。有象無象のゴブリン相手なら殲鬼を投入してみたいという気もあったが、例えば隙をつかれて自分が攻撃を受けないとも限らない。そして、その武器に毒なんて塗られている可能性だってある。

 

 うん、ありえそうだ。

 

 というわけで、俺はその場から引き返すことにした。

 

 やはり、戦力を整えないと危険すぎる。トリスターで移動する前にやはりサーチャーをはじめとした戦力補強を図るべきだった。

 

 そして、森は危険だ。視界が悪すぎる。

 

 再び草原に戻った俺は地面から土を採取し錬金術でサーチャーのパーツを作っていく。このあたりは慣れた作業だ。どんどんサーチャー本体を作り上げていく。

 

 マジックオーブについてもサーチャー用に開発したオペレーティングシステムはデータ保管用のマジックオーブに丸ごと保存しているので、あとはサーチャー用の小型のマジックオーブにコピーするだけ。

 

 いや、実に手慣れたものだ。

 

 そうして、たちどころに20体のサーチャーを作り終えた。それまでにかかった時間は6時間ほど。

 

 だが、これだけでは少々心もとない。

 

 サーチャーの主目的は偵察だ。勿論、殲鬼にも取り付けた「バレット」という魔弾を打ち出す機構を取り付けてはいる。とはいえ、殲鬼のガトリングガンとは威力が各段に落ちる。

 

 というわけで、新たなゴーレムを作ることにした。今回は暗仁 や黒影、それに殲鬼といったネームド・ゴーレム問いよりはサーチャーのような量産型で、かつ、攻守ともに優れたゴーレムが欲しい。

 

 そういう点では、ゴーレム整備工場で打ち捨ててきたゴーレム達に近いが、同じものを作るのは流石に芸がないので、少し改良することにした。

 

 体格は2メートルほど。素材は草原の土を錬金術で押し固めた礫岩。

 

 最大の特徴は左手が指ではなく砲身となっていることだ。射出する弾は「バレット」を改造した「散弾式バレット」。連射はできないが一度に多くの敵を相手にするならちょうどいい。

 

 さらに、サーチャーと連携する機能もプログラミングした。サーチャーの映像をデヴァストは見ることができ、サーチャーが発見した獲物をデヴァストで仕留めるということが可能だ。

 

 こいつを10体作る。

 

 きっと、横一列になって敵を蹂躙する姿は中々のものだろう。

 

「そうだ、名前を考えないとな。」

 

 量産型や汎用型のゴーレムにはこれまで英語をベースにした名前を付けてきたので、今回もその考え方を踏襲する。

 

「お前たちは敵を蹂躙せし者。『デヴァスト』にしよう。」

 

 ちなみに、"devastate" で蹂躙するという意味。それを短くして「デヴァスト」だ。

 

 さすがに10体作り終わるころにはさらに8時間かかり、作業が終わっときには日がとっくに沈んでいた。だが、目の前に立つ10体のデヴァストを見ると達成感が半端ない。

 

「うん、今日はもう限界だ。さすがに集中力が持たない……」

 

 眠気を覚えた俺がテントの中で寝ようとしようとしたところで、思いもよらない事態が発生した。

 

 

 ヒュン トスッ

 

「え?」

 

 突如飛来した何かがテントに穴をあける。それは今朝がた見たゴブリンの矢と同じもの。

 それを見た瞬間、俺の眠気は一気に吹っ飛んだ。

 

「暗仁 、黒影! 俺を守れ!」

 

 咄嗟に二体のゴーレムに命令を出す。


 途端に覚醒する2体のゴーレムは早速行動を開始する。俺に向けて何本も飛来する矢を剣と盾を使って次々と弾く。

 

「くそっ、暗くて何も見えない。」

 

 テントには魔法で明かりをともしているが、残念ながらゴブリンがいると思われる草原の方は真っ暗で何も見えない。

 

「まさか、こんなところで試運転になるとはなぁ…… 殲鬼! 来い!」

 

 異空間から呼び寄せた真白の殺戮兵器は、すぐに起動。目を青白く光らせる。


 本来ならノーザンバーグのタラス山地にいるといわれている鳥の魔獣を倒すために作ったゴーレム。4門のガトリングガンを装填し、1分間に計1万千発の「バレット」という魔弾を射出する高火力の化物だ。

 

 その殲鬼に加えて今日新たに作ったデヴァストにも命令をを出す。


「殲鬼! それにデヴァスト! 直ちに応戦だ!」

 

 俺の命令と同時に殲鬼とデヴァストの射撃が一斉に始まる。

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 

 殲鬼のガトリングガン4門が一斉に火を噴く。


 青白いバレットという魔力弾が次から次へと暗闇に吸い込まれていったかと思えば、辺り一面から次々にゴブリン達の悲鳴や苦悶の声が聞こえてきた。

 

 ふん、良いざまだ。

 

 殲鬼のガトリングガンはゴブリンたちの悲鳴などどこ吹く風で、ありったけの魔弾をひたすら打ち尽くす。周囲にあった背丈の高い草も何もかも、ゴブリン達とセットで容赦なく散らせていく。

 

 デヴァスト達も負けていない。


 デヴァスト達はサーチャーとセットで行動させた。デヴァストにはサーチャーと映像を共有する仕組みがプログラミングされている。サーチャーが敵を発見し、デヴァストがそれを撃破するという連携プレーが可能なのである。

 

 まさに、番犬と猟師のような関係。

 

 このような暗闇の中でも確実にゴブリンたちを次から次へと仕留めていく。殲鬼に比べれば地味だが、デヴァストの名前にふさわしい蹂躙ぷりが見れて何よりだ。

 

 そんな戦闘を10分ほど続けたあと、ゴブリン達が撤退していくのをサーチャーで確認し安堵する。

 

「引いてくれて助かった…… 殲鬼もデヴァストも魔力の消費が激しいからな」

 

 「バレット」という魔弾を大射出し続ける殲鬼とデヴァストは、やはり暗仁 や黒影に比べてはるかに魔力の消費が激しい。短時間の戦闘ならともかく、長時間にわたる戦闘には今のままでは耐えられない。


 いずれ戦闘中の魔力の供給方法は考えなければならないな。今度考えよう。

 

 だが、流石に今日も疲れた。俺は暗仁 と黒影をテントの見張りにし、深い眠りに入った。

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