3. いつも床を見て歩くお姫様
※デイジー姫の奇行はどんどんエスカレートしていきます。
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『デイジー姫は夜ごと花園で呪文をする魔女』と悪噂が広まってから、姫は自分の外見にも無頓着になっていきました。
同時に食も細くなり、どんどん痩せていきます。
それまで愛らしかったデイジー姫のぷにぷにした二の腕は、ごぼうのように細くなり、髪の毛もバサバサで伸び放題です。
その有様をみた城の者たちは、“デイジー姫はまるで案山子だ”とヒソヒソ噂されました。
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城内の廊下でも、デイジー姫はいつも俯いてフラフラと歩きます。
そのせいで向こうから来る人や、廊下の脇にある柱や置き物によくぶつかります。
ある日のこと──。
珍しく散歩をしていたデイジー姫が部屋に戻った時、彼女は体中びっしょりでスリ傷だらけでした。
「きゃあ!──デイジー様、どうなさったのです!!」
その姿を見た乳母が悲鳴をあげました。
デイジー姫はびしょぬれでした。
おまけにお顔も、べったりと泥がついているし、ドレスも泥まみれです。
擦りむいた手足は、あちこちキズだらけで血もにじんでいました。
「乳母様、申し訳ありません。姫様は雨上りの中庭に出たのですが、下ばかり向いて歩くので、人にぶつかって転んで泥に汚れた池に落ちてしまいました。姫さまの後ろで歩いている私共は、間に合わずお助けできませんでした」
デイジー姫のお付のメイドたちがひらに謝ります。
「おおげさね。ちょっと擦りむいただけよ。乳母が調合したいつもの蜂蜜を塗れば治るわ」
デイジー姫の発言に呆気にとられるメイドや従者たちでしが、当のデイジー姫はいたって元気です。
「ああ姫様……なんとおいたわしい……」
赤子の頃から可愛がっていた乳母は姫のあまりの変り果てように、涙がこぼれて仕方がありません。
──これはもう、私の手にはおえない。
乳母はとうとう匙を投げて王妃様に報告をしました。
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そんなデイジー姫の悲惨な姿を遠くから見つめる城の従者や官僚たち。
みなヒソヒソと噂し始めます。
「デイジー姫は、頭がおかしくなったのでは?」
「わたしら下々の者にも、にこやかに微笑んでくれた“可愛いおちびちゃん!”」
「なぜ髪を切らない、あれではまるで畑の案山子だろう」
「あの姿が我が国の王女だなんて。恥ずべきことだ!」
たまにデイジー姫が出歩けば、城内のあちらこちらでデイジー姫を憐れみ、時には侮蔑をする者もいました。
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デイジー姫の奇行に一番怒ったのは父親の国王様でした。
「ワシは許さん、絶対に許さんぞ!」
城内のデイジー姫にカンカンに怒っています。
「なんたる事だ!三女とはいえ、王国の王女ともあろうものが、行事には一切顔をださないで、部屋に引きこもって、なおかつおかしな噂がたっているとは!」
すると慌てた王妃様と上の二人の姉君様が、王様の怒りを宥めようとしました。
「王様、どうかどうか、どうかお気をお静めくださいませ」
「そうですわ王様、デイジーは一時だけ心が病んでるだけです。すぐ元の素直なデイジーに戻りますわ」とローズ様。
「そうですわ王様、わたしたちもデイジーを支えますから、どうかお怒りをお納めください」
とリリアン様も加勢します。
しかし、王様は首をたてに振りませんでした。
それどころか王様の怒りはますます収まりませんでした。
「ならん! 既に家臣の報告ではデイジーは何か月も部屋に引き籠ってると聞いた!」
王様の怒号が王族の部屋中に響かせました。
「ローズとリリアン、お前たちが何度もデイジーを気遣ったのに、デイジーはお前たちにも、門前払いをくわせたというではないか!」
「まあ、そこまで知っておいででしたの」
「王妃、知ってるもなにもワシの目を節穴だとでも思っておるのか!」
「「ああ王様、どうかお許しを……」」
王妃様も姉君様たちも、王様がデイジーの素行の酷さについて全てお見通しだと知り、おろおろします。
「お前たちも、甘やかしてばかりでは、デイジーのためにならん! 王女なら王女としての役目を果たさなければならない。それができないなら、ワシはあのような怠慢な者を娘とは認めん!!」
とうとう王様は家臣に命じます。
「即刻、城からデイジーを追い出せ!」
「「ええ、王様!それは、さすがに酷い仕打ちですわ!」」
王妃様も、姉君さまたちも必死に止めましたが、王様の怒りは最後まで収まりませんでした。
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翌朝、デイジー姫は使用人の服と替えの下着を二枚。少しの食物と水。
そして少々の貨幣が入っている袋を渡されて、お供も誰もつけず城から追い出してしまいました。
※ デイジー姫はとうとうお城から追い出されてしましました。
※ ここまでお読みいただきありがとうございます。次回は2/3の予定です。
m(__)m




