↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みにくい顔だと思い込んでいるお姫様のおはなし  作者: 星野 満


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/13

2. 花壇を見ながら呪文を唱えるお姫様

※ 自分がみにくいと思い込んだデイジー姫。彼女は王女とは思えない、あるまじき奇行を繰り返していきます。

※2026/9/2 修正済み

✧ ✧ ✧ ✧



 とても晴れた昼下がり、おつきのメイドたちがデイジー姫にいいました。


「姫様、今日はとても良い天気ですよ。たまにはお庭に出て散歩などいたしませんか」


「……そうね、よくってよ」


 相変わらず引きこもっていたデイジー姫も、珍しく機嫌が良かったのか、メイドたちの誘いで庭に出ました。

 


 庭の花壇は赤薔薇(あかばら)や早咲きの白百合(しらゆり)、そしてその周りを取り囲むように色とりどりのひな菊(デイジー)たちが見事に咲き誇っていました。


 一年の中でも春から夏へと変わる、この季節が一番の見ごろでした。

 

 この王宮殿の中庭に面した花園(はなぞの)は、王女様たちが住む、二階のバルコニーからもよく見えます。



 それぞれローズ姫様、リリアン姫様、デイジー姫様が誕生した時に、三姉妹のお名前に、ちなんだ花の種を植えて見事に開花させた花園でした。


 花園をプレゼントしたのは父王である王様でした。


 王様はそれはそれは、花のように朗らかで美しい三姉妹を、心から慈(いつく)しんでいたのです。

 

 いずれは近隣諸国(きんりんしよこく)へお嫁にいってしまう王女たちを、せめて一時(ひととき)でも大切な花を愛(め)でるかのように、大切に育てていました。



✧ ✧


 

 久しぶりにデイジー姫は、お供のメイドを連れて部屋から中庭(なかにわ)に降りて来ました。


「これはこれはデイジー姫様。ご機嫌(きげん)麗しゅうございます」


「デイジー姫様、お久しぶりでございます」


 庭で働いていた従者(じゅうしや)たちが、デイジー姫に気づいて、深々と帽子を取り挨拶(あいさつ)をしました。


 しかし、従者に挨拶されたのに、デイジー姫は無言でニコリともしませんでした。

 

 本来なら王族の姫君は、決まり文句の『ごきげんよう』とあいさつを返すのです。


 これはいけません、本来の王族の礼儀(れいぎ)に反しています。

 

 本来この国では、王女として家来からていねいに挨拶された場合は、挨拶した者に微笑(ほほえ)んで、何か一声(ひとこえ)かけるのが宮殿内の習わしでした。


 デイジー姫は誰とすれ違っても、その者の顔すら見ようとはしません。

 

 挨拶をしてくれた従者たちを一切無視して、デイジー姫はツンとすました表情で素通りしていきます。


 そんなデイジー姫の態度に戸惑う従者たち。


 が、珍しく突然デイジー姫はピタリと立ち止まりました。


 

 彼女が見つめた矛先(ほこさき)は、美しい薔薇(ばら)や白百合(しらゆり)が集中している見事な花壇でした。


「…………」


 花を見つめながら、デイジー姫は、急に親指を噛(か)んでブツブツ独り言を呟(つぶや)きます。


 デイジー姫のキツイ視線は、まるで無言の怒りに燃えているように、憎しみとも哀しみともつかない表情でした。


 後ろを歩いているお付きのメイドは、そんな王女の異変(いへん)に気づきました。


 

 ──はてさて、姫様は何をひとりでブツブツいっているのかしら?

 

 メイドは気になって、足を半歩踏み出してデイジー姫にそっと近づき、耳をそばだてました。


 

 それはとても意外な言葉でした。


「わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい!」



 それは、まるで恐ろしい呪文(じゅもん)を唱(とな)えるかのように、デイジー姫の横顔は、血走った眼で延々(えんえん)と『わたしはみにくい!』を繰り返し言い続けているのです。 

 

( ひいいいぃぃ──!)


 あわやメイドはその場で叫びたくなりましたが、どうにか必死で手で口を押えました。


 ゾッとしたメイドは、慌てて友人のメイドに耳打ちしました。


「ねえ聞いてちょうだい、姫様がとても恐ろしいのよ!」

 と先ほど聞こえた呪文の話をしました。


「まあ、それはとっても面白いじゃないの!」


 その話を聞いたメイドはカラカラと楽しそうに笑い、休憩時間に他のメイドたちに、デイジー姫の呪文を面白おかしくしゃべりました。



 するといつしか城中のメイドたちはあちらこちらで、デイジー姫の噂をするようになりました。


 その噂はおひれがついて、

『デイジー姫はどうやら魔女に誑(たぶら)かされたらしい。真夜中にひとり部屋を抜け出して、花壇(かだん)の前で恐ろしい呪文を毎晩唱えてるんだと! しかもその呪文ときたら……』


 瞬(またたく)く間に、デイジー姫のあらぬ噂が城中に広まっていきました。



 


※2話もお読み頂きありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

この画像は生成AIで、くろくまくん 様が作ってくれました。画像をクリックするとみてみんに飛びます。

くろくまくんありがとうございます。

(2026/1/20)

まだこの頃は外見は可愛いデイジー姫です。

ただ、ここから段々容貌も変化していきます。

(。ŏ﹏ŏ)すみません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
やばいやばい!デイジーちゃんもう完全に被害妄想みたいになっちゃってるよ〜(ToT) しかもメイドも面白がって広めたら余計にダメなんじゃ… 王様のプレゼントの、三姉妹の名前にちなんだお花でできた花園。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。