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みにくい顔だと思い込んでいるお姫様のおはなし  作者: 星野 満


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2/7

2. 花壇を見ながら呪文を唱えるお姫様

※ 自分がみにくいと思い込んだデイジー姫。彼女は王女とは思えない、あるまじき奇行を繰り返していきます。

※2026/4/18 修正済み

✧ ✧ ✧ ✧



 とても晴れた昼下がり、おつきのメイドたちがデイジー姫にいいました。


「姫様、今日はとても良い天気ですよ。たまにはお庭に出て散歩などいたしませんか」


「……そうね、良くってよ」


 引きこもりのデイジー姫も珍しく機嫌が良かったのか、メイドたちの誘いでお庭に出ました。

 


 お庭の花壇は赤薔薇(あかばら)や早咲きの白百合(しらゆり)、そしてその周りを取り囲むように色とりどりのひな菊(デイジー)たちが見事に咲き誇っていました。


 一年の中でも春から夏へと変わる、この季節が一番の見頃でした。

 

 この王宮殿の中庭に面した花園は、王女様たちの住む二階のバルコニーからもよく見えます。



 それぞれローズ姫様、リリアン姫様、デイジー姫様が誕生した(さい)に、三姉妹のお名前にちなんだ花の種を植えて見事に開花させた花園(はなぞの)でした。


 花園をプレゼントしたのは、父王である王様でした。


 王様はそれはそれは、花のように朗らかで美しい三姉妹を、心から愛していたのです。

 

 いずれは近隣諸国(きんりんしよこく)へお嫁にいってしまう王女たちを、せめて一時(ひととき)でも大切な花を()でるかのように、大切に育てていました。



✧ ✧


 

 久しぶりにデイジー姫は、お供のメイドを連れて部屋から中庭(なかにわ)に降りて来ました。


「これはこれはデイジー姫様。ご機嫌(きげん)麗しゅうございます」


「デイジー姫様、お久しぶりでございます」


 庭で働いていた従者(じゅうしや)たちが、デイジー姫に気づいて深々と帽子を取って挨拶(あいさつ)をしました。


 この王国では、お城の従者たちは王族がお見えになると、必ず挨拶する習慣になっていました。


「…………」


 デイジー姫はこの時、本来なら決まり文句の『ごきげんよう』と返事をしなくてはなりません。


 けれども無言でニコリともしませんでした。


 これはいけません、本来の王族の礼儀(れいぎ)に反しています。

 

 この国では、王女として家来からていねいに挨拶された場合は、挨拶した者に、微笑(ほほえ)んで一声(ひとこえ)かけるのが宮殿内の習わしでした。


 しかし、デイジー姫は誰とすれ違っても、その者の顔すら見ようとはしません。

 

 挨拶をしてくれた従者たちを一切無視して、デイジー姫はツンとすました表情で素通りしていきます。


 デイジー姫の態度に戸惑う従者たち。


 が、突然デイジー姫はピタリと立ち止まりました。


 

 彼女が見つめた矛先(ほこさき)は、美しい薔薇(ばら)白百合(しらゆり)が集中している見事な花壇でした。


「…………」


 花を見つめながら、デイジー姫は、急に親指を()んでブツブツ独り言を(つぶや)きました。


 デイジー姫のキツイ視線は、まるで無言の怒りに燃えているように、憎しみとも哀しみともつかない表情で、(つぶや)いています。


 後ろを歩いているおつきのメイドは、そんな王女の異変(いへん)に気づきました。


 

 ──はてさて、姫様は何をひとりでブツブツいっているのかしら?

 

 メイドはとても気になって一歩、デイジー姫から離れていましたが、足を半歩踏み出してデイジー姫に近づき、そっと耳をそばだてました。


 

 それはとても意外な言葉でした。


「わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい、わたしはみにくい!」



 まるで恐ろしい呪文(じゅもん)を唱えるかのように、デイジー姫の横顔は、血走った眼で延々(えんえん)と『わたしはみにくい!』を繰り返しいい続けているのです。 

 

( ひいいいぃぃ──!)


 あわやメイドはその場で悲鳴をあげたくなりましたが、どうにか必死で口を手で押えました。


 ゾッとしたメイドは、(こわ)くなってもう一人のメイドに耳打ちしました。


「ねえ聞いてちょうだい、姫様がとても恐ろしいの!──どうやらずっと部屋に引きこもってて、とうとう気が触れたに違いないわ!」と先ほど聞こえた呪文の話をしました。


「まあ、それはとっても面白いじゃないの!」


 その話を聞いたメイドはカラカラと笑い、休憩時間に他のメイドたちに、デイジー姫の呪文を面白おかしくしゃべりました。



 するといつしか城中のメイドたちはあちこちで、デイジー姫の噂をするようになりました。


『デイジー姫はどうやら魔女に(たぶら)かされたらしい。真夜中にひとり抜け出して、花壇(かだん)の前で恐ろしい呪文を毎晩唱えてるんだと!しかもその呪文ときたら……』


 (またたく)く間に、デイジー姫のあらぬ噂が城中に広まっていきました。



 


※2話もお読み頂きありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

この画像は生成AIで、くろくまくん 様が作ってくれました。画像をクリックするとみてみんに飛びます。

くろくまくんありがとうございます。

(2026/1/20)

まだこの頃は外見は可愛いデイジー姫です。

ただ、ここから段々容貌も変化していきます。

(。ŏ﹏ŏ)すみません。


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― 新着の感想 ―
やばいやばい!デイジーちゃんもう完全に被害妄想みたいになっちゃってるよ〜(ToT) しかもメイドも面白がって広めたら余計にダメなんじゃ… 王様のプレゼントの、三姉妹の名前にちなんだお花でできた花園。…
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