「マウントする」をマウントしてみる
初出:令和7年11月20日
最近、某SNSで「マウント」について盛り上がった。
そもそもマウントとは何か。
ネットAIの回答によると「相手よりも自分が優位な立場にあることを、自慢や威圧的な言動によって示そうとすること」を「マウントをとる」と表現するそうだ。もちろん正式な言葉というよりネットスラングではあるが。
実は小生は総合格闘技のテレビ番組『PRIDE』が流行っていたとき、スカパーを契約しており、当時、総合格闘技の試合はペイパーヴューなどでテレビでよく観ていた。
総合格闘技にはマウントポジションという専門用語がある。グランドの展開で打撃技から関節技の攻防になったとき、対戦相手の上に乗った方が有利とされるが、このとき「マウントをとる」と表現される。
したがって、マウントとはもともと総合格闘技から来たネットスラングではないか。
小生がSNSにこのように書き込んで知識をひけらかしたところ、イイネを複数もらい、文字通り周囲に”マウントとった”いい気分に浸っていた。
ところがしばらくすると別の書き込みがあった。マウントの語源は動物行動学から来ているとのこと。
猿は相手の体の上に乗って自分の優位性を示す習性があるが、これをマウンティングと呼ぶ。これがマウントの語源ではないかとの解説。またネットスラングのマウントは完全に和製英語で英語にこのような表現はないとのこと。
これを書き込んだ彼/彼女(性別未確認)に、小生は完全に”マウントをとられた”形になり、忸怩たる思いに苛まれた。
1.なぜ人はマウントとりたがるのか
ところでなぜ人はマウントしたがるのか。あるいは他人にマウントをとると快感が得られるのか。
逆に他人にマウントをとられるとなぜ不快な思いをするのか。
およそ人間関係は主従関係で成り立っている。
職場では上司と部下。学校では先生と生徒。また生徒間ではスクールカーストという身分制度がある。
社会全体でみれば為政者と大衆という主従関係がある。
人間二人以上集まれば、必ずそこに主従関係が生まれる。平等な関係は一時的なもので、長時間付き合えば、だれかが別のだれかを支配する関係になっているのではないか。
夫婦という二人の人間関係でもこれは当てはまると思う。ただし若いときは夫が「主」で妻が「従」だったのが、高齢になるにつれ、妻が「主」で夫が「従」のように逆転する主従関係は、世間的によくある現象だ。
マウントをとる行為は自分が人間関係において「主」に回りたいという欲求かもしれない。
あるいはアドラーの承認欲求が変形したものとも考えられる。
いずれにせよ、特定の人間だけがマウントをとろうとするのでなく、だれでもマウントをとりたい欲求をかかえていると小生は考える。
そしてもちろんだれもが他人にマウントをとられることを不快に感じる。
ただしこの欲求には個人差があり、この欲求が平均的な人より極端に強い人の場合、SNSで周囲の人々から煙たがられるのだ。
2.実はネットはマウントをとられる人の理想郷
「マウントをとる」という言葉は、狭義にはネット内に限定されるが、広義にはリアルの人間関係においても使うことがあるようだ。
SNSでマウントをとられるのも不快ではあるが、しかしSNSはマウントをとられる側にとって、つまり攻撃を受ける側にとって、快適な環境にある。
SNSなら嫌ならアクセスしなければいい。嫌な相手を瞬時にブロックもできる。だがリアルな人間関係の場合、どうだろうか。
職場の上司、学校の先輩など、日頃から理不尽なマウントをとられ続けていても、その環境から脱出することは現実的に難しい。
こう考えるとネットやSNSは”いじめっ子”でなく、”いじめられっ子”にとって、天国と言っていい理想郷なのだ。
3.コンピュータ用語のマウント
ところでマウントという外来語には、上記で説明した総合格闘技や動物行動学以外にコンピュータ用語で使う場合がある。
コンピュータがリムーバルメディアと接続する場合、ライン入力(CUI)で操作するときに「マウント」というコマンドを使うことがある。
昔、勤めていたた会社の話だが、大型コンピュータ、メインフレームでは磁気テープを使うときに「マウントする」という言葉を使っていた。ただしその会社はすぐ辞めてしまったので、詳細は覚えていない。
セロ年代末頃だったと思うが、日経Linuxでマイコンボード、BeagleBoardの特集をやっていた。
組み込みリナックスをSDカードを使ってBeagleBoardにインストールし、BeagleBoardをネット端末にするやり方が日経Linuxに書いてあった。
このときリナックスPCを使い、ライン入力で操作しなくてはならず、SDカードをPCと接続するにはまず最初に「マウント」をオンにしてBeagleBoard内ROM系メモリにデータを読み込ませ、終わったら「マウント」をオフにしないとけない。
いかがだろう。あなたが業界関係者なら小生よりもっと詳しい人もいるかもしれないが、そうでなければあなたは小生の上記の記述と知識で小生に「マウントをとられた」と思うかもしれない。
しかしながらあなたがAIを使えば、小生の文章より詳細なドキュメントを瞬時に作成できるのだ。
これからの時代、知識やトリビアだけでは他人にマウントをとれなくなるかもしれない。
4. 「マウントをとる」VS「ノゲイラする」
さて総合格闘技では「マウントをとる」と試合が有利になると書いた。
だがマウントをとられてもまだ勝敗が決まったわけではなく、奇跡の逆転が起きる試合もある。
有名な「ボブサップVSノゲイラ」戦ではマウントをとられたノゲイラ選手が三角締めでボブサップ選手からギブアップを奪い、結果的に勝利している。
ここで提案だが、このようにマウントをとられた相手から、やり返して逆転勝利することを「ノゲイラする」と表現してはどうか。
ネットスラング「ノゲイラする」が世に普及すれば、世界は今より少し楽しくなるのではないか、と勝手に考えている。
(つづく)




