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どうでもいい話 脱力エッセー  作者: カキヒト・シラズ


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82/88

シリーズ世界文学最高峰⑦ デイビット・コパフィールド vs キャンディ・キャンディ

初出:令和7年9月26日



 下手の横好きと言うべきか......ディケンズ「デイビット・コパフィールド」を読了した。

 面白かったかと言われると微妙。とにかく読むのに疲れた。だが最後まで読まずにいられなかったのだから、面白かったのかもしれない。

 ではどんな小説だったか。

 筆者の個人的分類では本作は少女小説の走りではないかと思うのだ。


 童話で言えば「シンデレラ」、漫画やアニメで言えば「キャンディ・キャンディ」や「小公女セーラ」、テレビドラマで言えば「おしん」のような物語。

 子供の頃、両親または片親をなくし、継母からいじめられたり、孤児院で育てられ、経済的に貧しく不幸だが、大人になるころにはお金持ちになり、イケメンと結婚してめでたし、めでたし、というストーリー。

 ただしデイビット・コパフィールドの場合、性別は男性だが。



1.あらすじ紹介


 主人公デイビット・コパフィールド(=私)がブランダストンの実家で生まれる半年前、父親は他界。その後、母は再婚するが、この新しい父親マードストンが主人公を虐待する。

 最初、主人公は学校「セイレム塾」に通うが、母親が病気で亡くなるとマードストンは主人公に学校をやめさせ、ロンドンに下宿させ、倉庫で働かせる。

 その後、下宿の主人ミコーバーが破産して夜逃げ状態となり、ホームレスになった主人公は、故人となった実父の伯母の家をさがして、ロンドンからドーバーまで野宿しながら歩く。

 伯母の家にやっかいになり、養子になった主人公。伯母の知り合いの弁護士ウィックフィールドの家に下宿し、カンタベリーの学校に通い、卒業後は司法書士?のような仕事に就く。この他、独学で速記を学び、副収入を得る。

 主人公は勤め先の上司の娘ドーラと恋仲になるが、結婚には上司が猛反対。ところが上司が交通事故(ただし馬車から落ちた?)で死亡し、その後、ドーラと結婚する。

 またこのころ主人公は作家として成功し、金持ちになり、勤め先を脱サラする。

 この前後、伯母が投資の失敗で散財し、一時はホームレスになるかと心配したが、家作をやりくりし、また主人公の作家の稼ぎなどもあり、なんとか経済的にことなきを得る。

 ドーラは若くして病気でなくなるが、その後、主人公は弁護士ウィックフィールズの娘、アグニスと結婚し、三人の子供に恵まれる。めでたし、めでたし。

 以上が大まかなメインストーリーだ。このメインストーリーに二つのサブストーリーが交錯する。


 ところで主人公が最初に通っていた学校「セイレム塾」では二人の同級生と親友になる。一人が優等生のスティアフォース、もう一人が落ちこぼれのトラドルズ。


 サブストーリーの一つは主人公の乳母ベコディーの実家とスティアフォースを軸とする物語。

 乳母ベコティーの実家は漁村ヤーマス。ここではベコティーの兄 (ミスタ・ベコティー)がいて、主人公とほぼ同年代で孤児のハム、エミリーなどと同居している。

 ときどき主人公はヤーマスに遊びに来るが、あるときスティアフォースを連れてくる。

 その後、主人公が学校を卒業したころ、ハムとエミリーが婚約する。ところが結婚直前、スティアフォースがエミリーを連れて、海外に逃亡する。

 それから数年後、エミリーはロンドンの貧民窟に蟄居しているところをミスタ・ベコティーに保護される。

 また嵐の夜、船が難破し、スティアフォースの水死体が発見される。このとき救助に向かったハムも溺死する。


 サブストーリーのもう一つはミコーバーと弁護士になったトラドルズの物語。

 弁護士ウィックフィールドの事務所を不正に乗っ取ろうとしたユライア・ヒープの悪事をミコーバーとトラドルズは協力して暴き出し、ユライア・ヒープは警察に逮捕される。


 ミコーバー一家とミスタ・ベコティー一家はオーストラリアに移民。乳母ベコティーだけが主人公の家で家政婦として雇われる。

 悪役を除き、彼ら主な登場人物も概ねめでたし、めでたしで終わる。



2.他の十大小説と比較


 ご存じの方も多いと思うが本作はサマセット・モームの世界十大小説に選ばれている。

 先に筆者は本作は少女小説に分類されると書いた。

 これは主人公が幼少期に不幸な人生を送ることが”お約束”のストーリーだ。

 主人公が出生時に貧しかったのは、たとえばスタンダール「赤と黒」の主人公、ジュリアン・ソレルにも当てはまるかもしれない。

 彼は丸太小屋で生まれている。

 ただし、少年時代の苦労を描いた作品でなく、あくまで青年時代から物語が始まる。

 田舎から上京して、立身出世を志す青年の野望をテーマとした物語。これが「赤と黒」だ。

 奇しくもこれは同じ十大小説のフランス文学であるバルザック「ゴリオ爺さん」にも当てはまる。


 十大小説で少女小説と言えば「嵐が丘」が定番だという意見が聞こえてきそうだ。

 しかし筆者の分類では「嵐が丘」は恋愛小説ではあるが、いわゆる少女小説のストーリーではない。

 幼少期に不幸な目に会うが、大人になって今度は復讐に転ずるのが「嵐が丘」だ。

 少女小説の場合は大人になったら主人公が自発的に復讐するのでなく、悪役が自動的に自滅してれる。

 復讐の物語という意味では、「嵐が丘」はデュマ「モンテクリスト伯」に近い。「モンテクリスト伯」では前半に主人公が悪役からひどい目に会わされ、後半から主人公が悪役に復讐に転ずるというストーリー。

 サスペンスタッチのピカレスクロマンだ(ただし筆者はジュブナイル版だけ読み、原作は未読)。

 

 


3.一人称小説で作者は”神”視点


 「嵐が丘」で個人的に好感を覚えたのは枠物語という小説のフォーマット(=方法論)だ。

 一人称小説「デイビット・コパフィールド」もまた内容ではなく、方法論から分析することもできる。

 作者と主人公コパフィールドは同一人物であるという設定で、作者がときどき作品に顔を出す。

 どこから物語を語り始めるか、その理由は何かを、作中で説明する箇所がある。

 作者が”神”視点で語るのは三人称小説では御法度かもしれないが、一人称小説の本作の場合、”神”視点のチート作者の余裕が独特の上質のユーモアを作品全体に醸し出している。

 このへんがディケンズ文学の本領発揮なのかもしれない(他のディケンズ作品は未読なので詳細は不明)。


 また長文で論理的な文章に魅力を持たせたことも本作の武器と言えるかもしれない。

 ただしストーリーがぼやけてわかりずらい部分があり、このへんが読みずらかったが。

 

(つづく)


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