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光弘と公爵夫人の密会

R15注意報。

苦手な方は回避願います。

「ついに来てしまった」


 気になる女の子のお宅訪問!それも親からの呼び出し。


 いや、エレナはかわいいとは思うが、身分どうのこうの以前に17歳!女子高生!法律違反!

 つまりは、レンアイ対象外!


 が、このアンサーで親が納得するかは不明だ。


「それにしてもでかいなー」


 公爵家というだけあって、貴族街のワンブロック丸々壁が途切れることなく続いている。これ全部家の敷地か?


「さっさと行きましょうや」


 隣には光弘と同じく呼び出しをくらったブンバー。隣には光弘よりか少し年嵩の女性。


「黒髪・・・」


「へ?」


「艶があってきれいですね。瞳も瑕疵のないオニキスで」


「オニ・・・」


 オニなんとかってなんだ?

 髪なんて、こっちに来てから洗うのサボりまくりなんだが。


「こほん。・・・挨拶を」


 ブンバーに促されて、女性が微笑む。


「ブンバーの妻のチェリー・ストーンです」


 ちょんとスカートの端をつまんで挨拶する様はどう見ても娘にしかみえない可憐な女性だ。


 屋敷に入ると途中でエレナの兄とすれ違う。


「いい...。いい!いーー」


 突然、チェリーさんが過呼吸のような状態になって、エレナ兄がぎょっとして振り返った。


「ご婦人。大丈夫ですか?」


「あの、いつもの発作です」


「サンドラ、すぐに一番近い客間で休んでもらいなさい。温かい飲み物と・・・具合が悪くなるようだったら、寝室をひとつ用意させて」


「だ、大丈夫ですので」


 すでに公爵夫人が部屋で待っていたのだが、


「降ってきましたあああ!」


 急にチェリー夫人が叫んだ。


「な、何が」


「天啓がどしゃ降りです!机お借りします!」


 ペンと小ぶりなスケッチを手にガリガリなにかを描いていく。まるでシャーマンのトランス状態のようにやばい。


「ん!カンペキ」


 で、出来上がったのがー


「おいこら」


「ただ、お二人が横に並んでいるだけ。目も合わせていません」


 互いを気にしつつも、視線を決して合わせない二人。

 よく描けてる。よく描けてるが!


「今すぐ燃やせ!」


 (俺とエレナ兄を使うなー!!)


 背中にぞわぞわとおぞけが走る。


「素晴らしいですわ!」


 そう声を上げたのは、公爵夫人だった。


「いいのか!?ほんとにいいのか!?題材明らかに自分の息子だろ!!」


「これはわたくし専用の金庫に厳重に保管いたしますので、なんの問題もありませんわ」


 絵がきっちり乾いたのを確認してから「汚れないように今すぐ私の部屋に」と預けている。


「こほん。わたくしはエレナ・スリーズの母カトリーヌ・スリーズです」


「お、おれじゃなくて私は杉田光弘です。こっちではミツヒロ・スギタですけれど」


 次いで、ブンバーが奥さんを紹介し、


「こっちは私の家内のチェリー・ストーンです」


 奥さんは紹介に合わせてさっきと同じように淑女の礼をする。


「あの絵の絵師にお会いできるなんてとても光栄ですわ。私、あの回の挿し絵に心を奪われた一人ですわ」


「は、はい。ありがとうございます。こ、こちらこそお会いできて・・・光栄?です。チェリーブロッサムの名で絵を描かせていただいています」


 公爵夫人は食いぎみに手をとるのに対して、若干引きぎみに答える。


「ああ、あの伝説の・・・」


 たった一枚の挿し絵で、今までの男性読者の半数が逃げていった。ただ英雄と従者が向かい合っているだけの絵なのに。


「本日お呼びしたのは、没原稿をこの場で読み上げていただくためですわ」


「まて・・・いや、ちょい待ってください」


「郷里の言葉だとか聞きましたが、恐らくこの国では読める者は一人か二人か・・・。読んでくださいますか?」


「ただの台詞とあらすじを飛び飛びに書いただけで、ほぼ箇条書きですし・・・」


 目の前では女性二人が顔を満面の笑みを浮かべ、真横ではチェリーが目を爛々と輝かせている。


「エレナには言うなよ・・・」


 チェリーのさらに隣に座るブンバーにもしっかり釘を刺しておく。


「まあ、公爵夫人の秘密の趣味をばらすのは時期を見てですな」


「ほほほほほ」


 ◆


 地獄の朗読会を終えた光弘は力尽きていた。


「俺なんで公爵夫人の前でびーなえるの朗読会シテイルンダロウ」


 美しい庭もきらびやかな屋敷も豪勢な食事もすべてがドーデモイイ。むしろ、読み上げている最中に高級食材がリバースしそう。


 ブンバーの手には口述筆記されたあらすじ。

 その妻の付近には、描き散らされた何枚もの絵が散らばっている。


「大変満足いたしましたわ。何か褒美をとらせましょう」


「褒美とかどーでもいいんで、二度とこんな下らないことで呼ばないでください」


「わ、私もいいですか!」


 チェリーが元気よく手を挙げると公爵夫人は「ええ」とにこやかに答えた。


「第一王子様の全○を見たいです!」


「お、おまえ!」


 さすがのブンバーも自分の妻にドンびいている。


「だってあなたの筋肉ショボいんだもの!庶民ではなかなかほどよい体格と筋肉というのは難しいです!世界一整っているという第一王子様のお顔と筋肉。是非間近で」


 チェリーさんの言葉に止めを刺されたブンバーは灰になるが、奥さんの目はギラギラ光輝いている。


「さすがに、全○は無理ですが、そうですね。警備の問題上、間近でというのは無理がありますが、朝練ビューポイント情報を持っているご婦人がたは何人かいらっしゃるでしょう・・・まれに寝所まで突撃訪問される方もいらっしゃいますが・・・」


「突撃訪問すれば○は見られますか!」


「貴族の令嬢ならいざ知らず、庶民なら問答無用で処分されますわよ?」


「じゃあそれは諦めます。死んじゃったら絵が描けないんで」


「実は私たち、キャサリアンヌ・サンドーラの名で本を出そうと思っているんですの。『トウジンシ』というものでして。是非バンブミッツ先生に監修をお願ー」


「好きに書いてくれて構わないです。俺の目の届かないところで!」


「監修はこのブンバーがお引き受けしましょう・・・」


 ブンバーも疲れきった顔で手を挙げる。


 そして、地獄の同人誌の寸評会に続く。


「もし、その『ドウジンシ』の挿し絵を描いてくださるのなら、私があなたのパトロンになりましょう。ついでに『騎士団の訓練場』の入場許可証も私の名で発行しましょう」


「もちろんお受けします!!」


 0.5秒回答。


「では、もう一つ描いていただきたい絵が・・・」


 ゴニョゴニョと何事かチェリーに伝える。


「白黒だと黒髪の艶を表現しきれないのが残念ですよね~」


 非常に嫌な予感がするが、これも漫画文化の発展のためだ。


「スケッチ貸して・・・」


 受け取ったスケッチの端に絵をちょろちょろっと描く。


「白黒漫画だとこんな感じか」


 めんどくさいので顔は描かずに前髪の三房だけ艶を出す感じで...確かツヤベタと言ったか、を描いてみる。


「わー。きれいに艶がある感じが伝わってきます!」


 見本を見た瞬間、また『降って』きたのか猛然と絵を描き始め、すぐに完成した。


「いやいや...。これって俺だろ!こーしゃくふじん自分の息子をネタにするのやめたれよ!」


「ただ息子が見知らぬ誰かの髪の毛先をちょっといじっているだけの絵です。息子に見せなければモーマンタイ」

次回もR15注意報。どの方も安全に読めるような作品なはずなんですけれど・・・。地雷が一人から二人に増えた。

ペンネームはカトリーヌ(フランス語)→キャサリーヌ。キャサリン(英語読み)風にして語尾だけフランス語風にしただけ。

カトリーヌ様は二次元派です。旦那(現実の男性)がダメすぎて現実逃避したくて沼へ。


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