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女性絵師と王子《番外編》

R15注意報発令中。

(うふー。ふー。やっぱり年は取りたくないものね。でも、『騎士団の訓練場』の出入り許可証ももらったし頑張らなくっちゃ!)


 チェリーは教えてもらった離宮の近くの木の上で殿下の朝練風景を眺めていた。

 ある程度走り込んだ後のようで、彼は上半身を半脱ぎしていた。


 弓を引き絞るときの腕の筋肉は全く無駄がなくしなやか。


 ひゅん とす。ひゅーん トス。すべて的の真ん中を射ていた。


 王子の体が不意にこちらを向いた。


「へ?」


 お互い既婚者じゃなければ何かが生まれていたかもしれない。


「殿下の全○が見たいだけでして、別に怪しいものじゃ」


「新手の夜這いか?」


 王子は弓をきりきりと引き絞る。


「ごめんなさい。鑑賞用としては優れてるけれど、私は旦那とピュアラブなのよ!」


 ◆


 絵の趣味は結婚しても夫に隠していた。でもある日、夫に見つかって。


 羞恥と恐怖で涙目になりながら謝った。離縁されるかもしれない。子供を取り上げられるかもしれない。ぶるぶる怯えながら審判のときを待ったが、


『おまえ天才だよ!』


 伝を使って、色んな出版社の挿し絵を仕事を持ってきてくれた。仕事は背景を黒く塗るとか、草を描くとかそんなのばかりがぽつぽつとだったが。


 そんなある日。


『お抱えの絵師全員に断られたの?』


『いっつも仕事欲しいって言ってる奴にもな!』


『ミッツ?年越えられずに打ちきりなるって言っていた?』


『最期に、いや、起死回生の一発をどーんとかましたいんだ。お前やってみるか?いや!やってくれ頼む!』


『いや原稿渡されても読めないし』


 多少の単語は読めても、こんな細かな文字の羅列は集中力が続かない。


『俺が読むから!』


 前後数話をほぼ一日かけてつっかえながらも旦那の解説つきでなんとか読めた。


『んー。なんか急展開すぎてついていけないけれど、内容はわかったわ』


『お前ならどのシーン選ぶ?』


『この場面かな?』


 ニヤリと嗤った顔は今でも覚えている。


『ここに、この一枚に!今のおまえの全部!全身全霊を込めろ!』


 子供の世話ほっぽって五十枚くらい描いて、そこから五枚にしぼり、最後はブンバーに決めてもらった。結局最後に残った五枚は最初に描いた五枚だったが...。


 その後夫は物語がどうなったとか語らず、チェリー自身もペンを執ることなく日常に埋もれていき。

 数ヵ月してその作家さんが時の人になりー私は

『公爵夫人の絵師』になった。


 ◆


 そして今に至る。


 狙われているのにチェリーは全然逃げようとしない。


「どうした?逃げないのか?」


「ああそこに暗殺者がいます。あのしなやかな身のこなし良いですよね。じゅる。あ、警備の人に捕まった?庭師さんも素敵な筋肉。やっぱり食べてるものからしてー」


 それどころか、弓矢に背を向けて、絵を描き始めた。


「は?」


 そして一枚がひらりと落ちてきた。


 第一王子はびきりと固まるのだった。ただ、警護の者が暗殺者を縛っているだけなのに、無駄に怪しい雰囲気が一枚のスケッチから漂っている。


「よくわかったな」


(警護の者よりか先に気づいた?)


「えー。薫りと筋肉の気配でわかりません?あと足音とか」


 王子の問いにチェリーは照れ臭そうに答えた。


 ◆


 後に、アングラ文化が花開くきっかけとなる一冊が出版される。


『冷酷王は黒の道化師の仮面を剥がす』

前回大事なことを書き忘れたので...。

カトリーヌ様は二次元派。三次元には興味ありません。

次回からは平和な年末年始。

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