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悪役令嬢とキャラ折り紙

 本日出迎えてくれたのは、可愛らしい紙人形だった。


 (ひさし)には、かわいい鶴や花、だまし舟やらが吊るされている。

 が、目を引くのはカラフルな看板に貼られた紙人形だ。


「まあ、かわいらしい」


 扇をもった女の子の人形。顔と体のバランスはどう見てもおかしいが、青色の瞳がくりっと大きくて、かわいい。とってもかわいい。奴さんよりもずっとかわいい。


 店に入るなりミツヒロに溢れる感想を伝えた。


「とってもかわいいですわ!是非作り方を・・・」


「アニメキャラクターを折るときの折り方なんだけれど。チョココロネ感を出すのに苦労したよ。再現度もまあまあだろ」


(アニメなんとか?チョココロネ?)


 アニメなんとかははじめて聞いた単語だが、チョココロネは以前聞いたことがある。あれはたしかはじめてこの工房を訪れた日。


『チョココロネ感が・・・』


「これ、わたし?」


「よく似てますよ」


 サンドラが余計な一言を言う。


「こんなに目がつり上がっていません!」


 髪型は出会った当初の髪型。目はちょっとだけ釣っているが、愛嬌はある。黄色い扇。着ているドレスは不思議な柄でかわいらしい。


「日本だと肖像権とかで訴えられるかもしれないけれど。こっちじゃそんなん関係ないし」


「貴族をこのように茶化して、名誉毀損で訴えられても知りませんよ」


「で、作りたい?」


「もちろんです」


「基本の作り方自体はまあ難しくはない。問題は目と鼻と口、眉のバランス。それでかわいいか、かわいくないかが決まる。後は、髪型をどれだけ上手に表現できるか。俺も5回失敗してしまって。あははは」


 そういって差し出された目が寄り目ぎみな令嬢と眉が太くつり上がっている令嬢。


(こんなの断じて私じゃない)


「他は?」


「あまりにもバランスが悪くてボツになった。見る?」


「いえ結構です!」


 ◆


「このドレスの部分はなんなんですの?」

「千代紙・・・包装紙用に提案して、紙の端切れは俺がいただくって まさか新聞紙(ピンク)を使うわけにもいかないし」


「ホウソウシ?」


「クリスマスのプレゼントがただの箱じゃなくてきれいな紙に包まれていたらテンション上がるっていうか」


(クリスマスというのはよくわかりませんけれど)


「どこか遠くの国では美しい絵を陶器の緩衝材にして運ぶそうですが」


「ふーんそうなんだ」


 その後は、勝手に商品棚を整え、ついで机に目を向けると放り出されている帳簿が目についた。


「収入が私の講義代と小物が数点。大物が一個って・・・よくそれで生活できますね?家賃も払ってるんでしょ」


「っちゃんと別収入もあるんだよ。空き家対策のために家賃はほぼタダだし。食堂が忙しい時は皿洗いを手伝ってタダ飯食えるしー何より俺の国の料理も面白がって作ってくれるのがうれしいし」


「家賃がタダ?」


「夜中に勝手に入ってくるやつがいるんだよ。空き家の中荒らされるだけならましだが、夜中に店の売り上げ盗んでいくバカもいるから。俺はかかし役。俺の方がよっぽど不審者だけれどな」


「それにしても三十分体験教室が50ってのは低すぎ。500はとりなさい」


「そんなにとったら子供が来てくれないだろう?」


「一ヶ月、その子供さえ訪れてくれないようだけれど?」


「ぐっ。ちゃんとやっていけているんだから、そこまで君が考えることじゃないよ。店回り明るくしたんだからそのうち客も入ってくるだろう」


「やっぱり窓を作りましょう」


 いくら外が明るくなっても、明かり取りの窓が小さく、工房内は全体的に閉鎖的な雰囲気だ。せっかくなら壁の全面をぶち抜いて明るくしたい。明るく華やげばきっとお客様だって入店しやすくなる。


「風の通りはよくなるかもしれんが、窓に税金取られるなんて嫌だからな」


 この国には窓税が存在するが。


「あれは...新聞と同じでブルジョワ層対策で数と大きさに対して課税しているだけで、庶民にはさほど影響は・・・」


「今はOKでもね、税なんてお上の気分次第で、どんどん上がっていくんだよ。俺寒いの嫌いだし。君だって、いつまでも芽の出ないヤツに構ってられない。支援がなくなった後で、増税されたらたまらないし、俺が出てった後、持ち主のガントが税金払うことになったらどうするんだ?」


「それは・・・」


「わかった。ガントの許可をとりつけて、今月の売り上げを先月の倍にしたら壁をぶち抜く許可をやろう」


「では、この店の折り紙端から端まで全部買います!」


「大人買いどころか、店買いかよ。映画の世界でしか見たことねー」


 彼は天井をふりあおいでいる。


(私なにかおかしなこと言った?)


「お嬢様。おそらくそんなことをすればまた嫌われてしまいます」


 忠告が背後から差し入れられる。

 男の人というのはどこまでもめんどくさい。平民だからだろうか?


「そんなに買ってどうするんだ。どこに置くん・・・ってお金持ちだから場所は困らないんか・・・」


「買ったものは母の知り合いに配りますわ。そうすれば宣伝にもなりますし」


(家に置きっぱなしなんてもったいない。そうよ、最初から知り合いに配ればよかったのよ)


 エレナの名案に、なぜか彼の顔は渋い。


「買ったあと配ろうが捨てようが、勝手ですがね」


 声も不機嫌だ。


「お嬢様・・・もっと別の方法を考えた方がよろしいかと」


 サンドラから再度の忠告。

 どうも旗色がよろしくないようだ。

 でも、すぐにいい考えは浮かばない。


「この件、持ち帰って、考えさせていただきます」


 ◆


 その日の帰り、エレナは食堂兼酒場で酔っぱらっているガントを捕まえることができた。


「ミツヒロさんのお家窓もう少し広くしてもいいですかね?」


「別に構わんだろう。広くしようがもう一つとりつけようが、窓税にはひっかからないだろう」


(よっしゃー!!)


 四日後、ガントの許可を携えて工房に訪れたエレナは、宣言した。


「商品を一旦、預かって売るわ。補償金として半額お預けします!」

キャラ折り紙。折ったのパンダくらいです。目の隈と口と鼻を描くのが超難しくめちゃくちゃ目付きの悪いパンダが出来てしまいました。

いつかはアニメキャラもチャレンジしてみたいですね。

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