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異世界防衛戦線  作者: 暇人
二章・綻び始める幻想の世界
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九節・叛逆の狼煙

スカスが確保されたのち、ゴルダラ王国ではツジゲン帝国との会合が開かれていた。

まず口を開いたのは、ゴルダラの国王だった。

「まさか貴公の国がまさか降伏するとはな、案外呆気のない最期だったよ。」

「何とでも言うがいい。話は早く片付けたい、貴公らはいくらの領土が欲しい?くれてやるだけくれてやる。」

「…あまりにも虫が良すぎるな、我が軍より圧倒的に準備を重ねていたのはツジゲンの方ではないか。どう言うつもりだ一体何が狙いだ。」

「やれやれ…私の信頼も地に堕ちたものだ。折角、領土をくれてやろうと思っていたのだが」

「しょうがない。君が条件を与えなければ、私は領土を奪わない。それでいいな」

「なるほど、君たちは戦争に勝利したというのに何もいらないということだな。ならばそれで決まりでいいか」

「ああ、まさに暖簾に腕押しといった感じで拍子抜けだ。」

交渉は決裂した。だがあまりにも虫がよすぎると警戒されたゴルダラ国王から、国土を奪われる心配は無くなった。ジョンは、突如交渉しに現れたアルリ皇帝に向かってあの事を聞く。

「あの、アルリ皇帝様…スカスは、やはり処刑したのですか?」

「その事なら心配はいらん、スカス・マダは我々が丁重に保護させてもらっている。」

「…妙な事はしないでくださいね、俺の唯一無二の親友ですから」

「それに君は、この国の人の心と少し違うな。君の考えていることを言い当ててやろう」

「…え?」

「これでもマジク程ではないが、私も魔術の心得があってね、人の思考を読むことには長けているのだ。」

「それで、君は恐らく如月烈火のやり方に賛同できない。そうだろう?」

「な、何故それが」

「君の思考の波形がスカスくんとよく似ていたのでね。安心したまえ、私のところで保護しているのは如月烈火に対抗する力を蓄えるためだ。君たちの体術だけでは奴に勝つ事はできないからな」

「な、なるほど。ブロンダのことまでバレバレだとは…」

「そこで君に私からも提案があるのだが…」

「…何ですか」

そして暫く経ち、ツジゲン帝国にアルリ皇帝が帰還をする。

あの闘い以降、如月はイラつきを隠せない。まさか最後が降伏といった結果で、その上自分と同等か、それ以上かの龍が襲いかかり、異世界で無双するつもりが、異世界で追い込まれ続けている。俺が思い描いた世界とまるで違う、こんな事は許されない。俺がこの世界の頂点でなくてはいけない。そうじゃなきゃ、死んだ俺が報われない…

「どうしたの!?如月!気が立ちすぎよ?こんなの貴方じゃない!!」

「何を言ってるんだルナス!!これが本当の俺さ!結局誰かにも追い越されていって誰も俺のことを理解しなくて!!!俺はどこの誰よりも弱いさ!!最強なんかじゃない!いつも神様は非情だ!こんな風に嘘ばっかりつきやがって!!こんなののどこが最強だ!!!俺はこんな半端な力が欲しかったわけじゃない!!俺はただみんなに認めてもらいたいだけなんだよ!!!」

城の壁に頭を打ち付け、剣を壁に切りつけ、ルナスを殴ったりもした。自らのストレスを発散しようとしているんだ、何故周りは俺を追い越していく。俺はこの世界で最強だ、創造主だ、それを追い越すだなんて神を侮辱していることに他ならない。それはスカス・マダも例外ではない、適当に書いたダマスカスという国の名前をひっくり返した名前の鍛冶屋の弟子が何であそこまで強いんだよ。全くもって理解不能だ、まさかあのアメジという鍛冶屋にあそこまでの力があっただなんて思えもしない。何故こうなる!何故俺はこんなにも早く追い込まれていく!

「如月!貴方はもう認められているよ!なんでそんなに焦る必要があるの?半端な力がそんなにも気に入らない?だったら鍛えて強くなればいいじゃないの」

「鍛える?鍛えるだと!?俺はその言葉が一番嫌いなんだよ!!!俺は今までそうやって鍛えた!頭も良くなった!!!だけど俺はその鍛えに裏切られた!裏切られ続けた!!鍛える度に自分の自力に絶望した!」

「貴方なんなのよ!見損なったわ!信じられない!最低よ!」

「ああ!どこへだろうと行くがいいさこのクソアマ!!」

「クソアマですって?分かりましたわ!!二度とあなたの顔なんか見たくもないわ!最低よ!」

バタン、ととても強くルナスは扉を閉じる。すると、如月の部屋はピタッと静かになる。

如月は一人になりたかったのだ、今日だけは、元の自分、いわば引きこもりに戻らせてくれ、と。

「はぁ…俺を取り囲んでいる世界はいつも地獄さ、どこへ行ったって天国はない。いくら俺が変わっていようと俺は俺でしかない…こんな世界くだらない、だったら、俺が今度こそツジゲン…《現実》を打ち砕いてやる…」

部屋から駆け出したルナスは、王の玉座へと焦るように向かう。

「…おお、ルナスか。如月はどうした?」

「あんな男、私は知りませんわ。努力することをめっきりと忘れている。本当に信じられない」

「なんだと…あの如月が、なんという事だ。やはりツジゲン帝国は精神汚染まで仕掛けていたのか。」

「お父様!そんなんじゃありません、如月は、男として最低です!彼は化けの皮を被っていただけなのよ!いつも努力することを放棄し、棚からぼたもちを期待し続けているだけの男!そんな人、いくら恩を売っても意味はないでしょう!」

「お父様ももう信じられません!私はこの城から出て行きます!」

「ルナス…」

ドタン、と大きな音でルナスが出た後扉が閉まる。ソルアス国王は変わり果てた娘の姿を見て、衝撃を受け放心状態となる。あそこまで可愛かった娘が、あそこまで鋭い眼光に化してしまうだなんて。

そして城から出た先にいたのは、ジョン・ブレイダだった。

「よう、お嬢ちゃん。」

「騎士団の一員なんかに用はありませんわ。私はこれから王女と言う資格は捨てるのですから」

「だから、嬢ちゃんの助けになってやろうと思っていてさ。聴いてたぜ?あんたらの一部始終」

「え?」

「如月が許せないんだろ?変えたいんだろう?だったらやる事はたった一つだ。反旗を翻すんだよ。この腐れきったゴルダラ王国にな!」

「あんたと一緒に、ソルアス国王反対派を国中から集めまくるんだよ。そうすりゃ、あいつらに対抗する術は自ずと手に入るさ」

「…ならば、ジョン・ブレイダ。貴方は騎士団章をここで置いて行きなさい。わたしに付いてくる者にはその標章はふさわしくない」

「フッ…当たり前だぜ!地位とか名誉とか、正直くだらないんだよな!」

そう言いながら、肩に取り付いた標章を外す。その標章は、ジョンの決意の下に、そよ風と共にどこかへと去って行った。

城下町には、騒ぎを聞きつけ大通りに人々が集まる。大の娘が王国から出て行くと言うのだ。噂は一瞬のうちに広まるものだ、一瞬のうちに大通りに人がぎっしりと集まる。前を通る程のスペースは空いては居ない

為、そこでルナスは高らかに宣言する。

「道を開けよ。この道は我が王女・ルナス・ゴルダラが通る道である。」

すると、道はルナスとジョン、その2人が通れる道が開いて行く。

気がつくとルナスとジョンは、城から出て居た。

「…もう後戻りはできないぜ、お嬢ちゃん。」

「ええ、二度とあの日々に戻るつもりはありませんわ。」

「しっかし、あんたにあそこまでの肝っ玉が据わって居ただなんて思いもしなかったぜ。かっこよかったぜ、ルナス王女」

「…照れるじゃないの」

「へっへっへ、あんたのそう言う顔、俺の前で初めて見せたな。」

たった今、叛逆の狼煙が上がり始める。国を二分する、大きな戦いへの、狼煙が。

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