デジャブ
お義父さんは、カフェの椅子にちんまり座って話し出した。
「あれは、私が25歳の時、梓と出会って…。あの時の梓は、とのかく、そうだな…可愛かった。無邪気で、幼くて…何ていうか恋愛経験の少なかった私は一気に夢中になった。婿養子になれ、と言われた時は迷ったけど、梓以外に考えられなかった。でも、結婚して2年目、杏菜が生まれて、おかしさに気付いた。梓は、杏菜を、今の明ちゃんみたいにね、母に預けると言って聞かないんだよ。それから家系図を見せられて…。君も見たろう…女が一人きり、生まれて終わりの家系図が200年続いていると…」
「は、はい…」
「私も若かったからね。娘を取り戻そうと思って、励んだよ。でも、子供はできなかった…。妾のことを聞いて、激怒したけど、結局、妻の魅力に逆らえずに…。妾は3、4人いたね。」
「そ、そんな…」
義父は、コーヒーを一口、二口飲んだ。そして続けた。
「でも、子供は杏菜だけだ。」
その言葉には、プライドとも自分への蔑みとも取れる、変な重みがあった。僕は、しばらく黙ることしかできなかった。
「あ、あの…」
「何だい?」
「妾と、奥様の関係は?恋愛関係になったりは…。すみません、こんなこと聞いて…」
「…。いいよ。割り切ったもんだ。妻は、男たちを虜にしておきながら、『あなた、妾でしょ?ほら約束したよね、出てって』って。容赦なんかないんだ。それで、私にだけ甘えてくる。愛してる…悪い気はしなかったよ。」
「あくまで、妻が愛するのは、夫だけってことですね…」
「そう。まあ、私の心はとうの昔に壊れてるんだろうな…」
「そんな…」
僕はすがるように義父を見た。一度目が合ったが、すぐにそらされた。
「君も頑張りなさい。二人目が生まれればいいだけの話だ…」




