11-0 大体合ってる御伽物語 -伊邪那岐命-
——「司命と!」「司録の」
「「大体合ってる御伽物語!」」
司録
「今回ご紹介するのは、日本神話の創世記を担った、この御方。伊邪那岐命です」
司命
「ついに来たね! 来てしまったと言うべきか」
司録
「ぼくだって、彼について説明する日が来るとは思いませんでしたよ」
司命
「緊張するうー」
司録
「嘘つけ。
さて、伊邪那岐命といえば、妻である伊邪那美命とともに国生みを行った始祖です」
司命
「ざっくり言うと、日本の島々と神々を量産した夫婦だな。少子化対策の成功例だ」
司録
「しかし、順調に進んでいた途中で悲劇が起こります。火の神を産んだ妻は、大やけど。そのまま亡くなり、黄泉の国へと去ってしまいます」
司命
「確かに、火の神の出産は難易度が高そうだ…。
しかし、ここであきらめないのが伊邪那岐命」
司録
「愛する妻を連れ戻すため、禁忌とされる黄泉の国へ赴いたとされています」
司命
「嫌な予感」
司録
「再会した妻は、〝ここにいる間、決してわたしの姿を見てはいけない〟と忠告します。伊邪那岐命はそのように約束しました」
司命
「〝見るなよ、絶対見るなよ〟は、伏線が立ちすぎだろ……」
司録
「はい。見ちゃいました」
司命
「ですよねー!」
司録
「約束を破り、妻をのぞき見た伊邪那岐命。そこにいたのは、腐敗し、蛆が湧いた姿でした」
司命
「トラウマ確定。R指定。ぼくなら泣く」
司録
「裏切られた妻は激怒し、黄泉の国の軍勢とともに伊邪那岐命を追いかけます」
司命
「天照大神と須佐之男命にせよ、この夫婦にせよ、家族喧嘩が国家レベルなんだよな」
司録
「伊邪那岐命は、追手に桃を投げつけながら、必死で逃げました」
司命
「桃じゃあ無理だろ」
司録
「最終的に、黄泉の国の入口を、千人がかりでも動かせない巨大な岩で封鎖します。二人はその場で離縁しました」
司命
「修羅場だなー」
司録
「岩を挟み、妻は〝一日に千人殺す〟と、夫は〝それなら一日に千五百人生まれさせる〟とののしり合いました」
司命
「どんな捨て台詞だよ。人口換算の喧嘩すな」
司録
「こうして、死と生の循環が定められたわけです。つまりこの喧嘩がなければ、人間は生まれることも死ぬこともなかった」
司命
「壮大なスケールだが、原因は夫ののぞき見だぜ?」
司録
「スマホと一緒。見るなと言われたものほど、見たくなるのです」
司命
「まーた、人間のことをわかったような顔をして。猫ちゃんのくせに。こちょこちょこちょ」
司録
「猫にだってわかります。無用な好奇心は破滅を呼ぶということですよ」
司命
「その理論だと、れーちゃんは一瞬で破滅するぞ。
で、悲劇の離婚のあとはどうなった?」
司録
「伊邪那岐命は、黄泉の国の穢れを払うために禊を行います。このときに生まれたのが、天照大神、月読命、須佐之男命などを含む神々です」
司命
「三貴子、爆誕。結果オーライなのかな」
司録
「ちなみに、左目から天照大神、右目から月読命、鼻から須佐之男命が生まれました」
司命
「顔面に宇宙が詰め込まれているな」
司録
「そんなこんなで、伊邪那岐命は日本神話界の超超超重要人物なのです」
司命
「正真正銘のラスボスだ」
司録
「そのような御方を取材しようなどと、焼き芋の恐れ知らずは底なしですか」
司命
「あはは! いいよな、あの無謀さ。物語が一番盛り上がるシーンだ」
司録
「笑っている場合ですか。まだ止められますよ?」
司命
「止めても行くだろうし。ここまで来たらもう、れーちゃんと三貴子に委ねるよ」
司録
「〝神様の言う通り〟ですか」
司命
「〝神頼み〟の方が近いかもな」
司録
「拝むことしかできませんね」
司命
「ぼくたちは応援係だ。でも、れーちゃんなら何とかなる気がする」
司録
「根拠は?」
司命
「ノリと勢いがすさまじいから」
司録
「ノリと勢いが通用する相手ですかね、伊邪那岐命は」
司命
「まあまあ。アマテラス様やツクヨミ様、スサノオ様の懐に入り込めたくらいだし」
司録
「じゃじゃ馬すぎます。これほど手に負えないとは」
司命
「自慢の後輩でもあるだろ?」
司録
「……ええ。胃が痛くなるほどに」
司命・司録
「「以上、〝大体合ってる御伽物語〟でした!」」




