3-0 大体合ってる日本神話 -天照大神-
———「司命と!」「司録の」
「「大体合ってる日本神話!」」
司録
「今回は……日本神話といえば、この御方。太陽神、天照大神をご紹介します」
司命
「よっ! 主役級の登場だ。高天原のロイヤルファミリー、しかもセンターポジションだね」
司録
「地上では、伊勢神宮をはじめとする数多の神社で祀られています」
司命
「現役バリバリ。実質、ラスボスじゃん。登場が早すぎないか?」
司録
「ラスボスではなく、統治者です。高天原を統べる天照大神は、八岐大蛇を討伐した須佐之男命の姉にあたります」
司命
「この姉弟、残念ながら仲睦まじくはございません。ある日、天照大神は弟の素行にブチギレて、天岩戸という狭い岩屋に引きこもっちまった」
司録
「端折りすぎです。一朝一夕の怒りではなく、長きに渡る不満の蓄積のようですよ」
司命
「一体全体、何をしたらそこまで怒らせることができるんだ? ぼくも、れーちゃんに試してみたいもんだ」
司録
「御殿に糞をまき散らしたり、機織り小屋に馬の死骸を投げ込んだり」
司命
「倫理観ゼロ! 参りました!」
司録
「太陽を司る天照大神がお隠れになった結果、世界は真っ暗になり、様々な災いが起きたとされています」
司命
「大変だな。洗濯物も乾かねえし」
司録
「そこで神々が思いついた妙案が——岩戸の前で、飲めや歌えの大宴会。踊りの上手な天宇受売命の協力も得て、天照大神の気を引きます」
司命
「本当は、自分たちがドンチャン騒ぎをしたかっただけじゃねえの?」
司録
「あまりに外がにぎやかなので、天照大神はつい顔をのぞかせました。〝なぜわたしがいないのに楽しそうなのか〟と」
司命
「うぬぼれ屋さん! かわいいところあるね!」
司録
「岩戸を少し開けたとたん、あっという間に引っ張り出され、世界に再び光が戻ったとされています」
司命
「ちょろいもんだな」
司録
「とはいえ、国家存亡レベルの危機だったのですよ。閉所恐怖症と暗所恐怖症を併発しているぼくにとっては、想像するだけで過酷な神話でした」
司命
「おーおー、怖いでちゅねえ。よちよちよち」
司録
「……あごの下を撫でないでください」
司命
「しかし、そんな天照大神が、自分の神話を書き換えてほしいとは。何事だろうな?」
司録
「さあ。そのあたりは、焼き芋の取材に任せましょう」
司命
「ところでさ。
斐伊命は川の神で、天照大神は太陽の神だろ。神様ってそんなに種類があるのか?」
司録
「あります。日本神話においては〝八百万の神〟と表現されます」
司命
「八百万って、八百万体ぴったり?」
司録
「数え切れないほど多い、という意味です。つまり、この世のあらゆる物象には神が宿っている」
司命
「物象って?」
司録
「太陽、月、海、嵐、山、川、雷。木にも石にも火にも水にも。道具や言葉すら、それぞれの神が司っています」
司命
「じゃあ何? ぼくの眉毛の一本にも?」
司録
「〝司命の眉毛神〟はいないかもしれませんが、国民の眉毛全部をまとめて司る神はいるのでは?」
司命
「うわ、退屈そう。
しかし〝司る〟って、具体的には何をしているんだ?」
司録
「雨が降れば〝神様が泣いた〟、雷が鳴れば〝神様が怒った〟、そう捉える者がいるでしょう」
司命
「人間どもは、いちいち意味を与えなければ、理解も納得もできないからなあ」
司録
「でもそれは、あながち間違いではない、ということです」
司命
「ふうーん。じゃ、神様の機嫌は取っておいた方が無難だな」
司録
「ところが厄介なのは、同じ雨でも、ある者には涙、ある者には恵み、ある者には災厄に見えるということです」
司命
「誰かの正しさは、別の誰かの不幸になる。理解を得られないのは、人間も神々も同じってわけね」
司録
「八岐大蛇に変化した斐伊命しかり……あらゆる物象は、他によって意味を押しつけられる存在なのでしょう。
そして焼き芋の取材は、世界に別の意味を提案する行為なのかもしれません」
司命
「おかしな正義感だよなー。ぼくは、ぼく自身の世界を変えられれば、それで十分だ」
司録
「自分の世界を司る。ちっぽけな神ですね」
司命
「うるせえ!」
司命・司録
「「以上、〝大体合ってる日本神話〟でした!」」
天照大神編、スタートします!
平日は毎朝7時頃に更新いたします。




