第34部分 特命
第34部分 特命
翌日、帝北ホテルが売却されるとの話が聞こえてきた。売却ということは、もう家宅捜索などの証拠集めも済んでいるはずだ。オレは即座に社長室を訪ねた。
「おはようございます、社長」
『あら、おはようタク。どうしたの?』
「社長、何も言わずに百万円ください。私用ではありません。領収書も貰ってきますので」
『なんで使途を言わないの?』
「社長が知ると責任問題になりかねませんから… お願いです」
『んんん、わかった。なんか知らないけど、失敗したらボーナスなしのボケナスだからね』
「必要な買い物なんです。ありがとうございます」
『三十分後に経理に行きなさい』
「はい、さすがです社長」
売却を委託された会社は、偶然バルが元勤めていた会社だった。オレはバルを介してコネを付け、フロント近くに祀られていた例のお稲荷さん、招き猫さんを含めて神棚ごと買い取った。少々値切って税込み八十万円だった。
「この神棚には本当に愛着があって、どうしても欲しかったんですよ」
ははは、そんなことあるかい!
二度目の特命報告は、社長のマンションだった。
「社長、先日は無理なお願いを急に… ありがとうございました。」
『ああ、ご苦労様。うまく行った?』
「もちろん。領収書と残りの20万円は経理に渡しました」
『はい、よくできました。じゃあご褒美あげなくちゃね』
熊野御堂玲子、三十四歳独身。オレも覚悟を決めて行ったから、ためらいはほとんどなかった。手が触れて、見つめ合って、目を瞑って。
『特命よ』
短いキス、長いキス、呼吸を忘れた永い永いてキス。狂ったように求め合うキス。
抱き締め合い、身体中を撫で繰り回す。ファスナーは緩み、ボタンは外れ、服の隙間から素肌をまさぐり合う愛撫。飢えたケダモノが我を忘れて相手の肉体にむしゃぶりつくのだ。オレも存分に食らったが、玲子も大胆だった。
クチビルから頬、舌を吸いあったと思えば耳の穴、彼女の舌が届かず濡れていないところはなかった。そして…玲子も濡れていた。
シアワセだ。オトコとして、オンナとして。これはこれで生きているってことなんだ。
なるほど、悪くないかもな。オレは苦笑いをかみ殺した。玲子もオレも割り切りなんだ、許してくれよ。オレもレナのすべてを許すから。オレはレナを愛してる、心の底から…
たしかにバルの言う通りかもしれない。
胸を触った、乳を吸った、ナニが入ったとかは、純粋に肉体の本能的反射的行動なのであって、それを以って『愛が消えた、無くなった』とは言えないはずだ。人間生活上で問題になるのは、「家族」と「相続」と「倫理」の問題であって、子供さえできなければ「割り切り」は特に問題にはならないはずだ。
『不倫は犯罪』というのは、結局「家族」と「相続」と「倫理」から見て、裁判がややこしくならないような原則なのではないだろうか。
そうなんだ、オレの生活の中心はレナ。レナを愛することなんだ。今までのおれから一歩先に突き抜けられた気がした。
玲子のクチビルは熱くぬめぬめと潤み、首筋にキスすれば、全身が震える
玲子の胸はなまめかしく揺れ、オレの手のひらの愛撫を待ち受けている
玲子のさきっちょは生意気に尖り、オレの舌先の挑戦を迎え撃とうとしている。
玲子とオレはひとつに繋がれ、肉体の絆を飽きず往復して確かめている。
イキかかって止まり、クチビルを合わせ、また快楽を求めて動き、イキかかる。
果てなく繰り返す、生物としての快楽… このまま溺れても、溺死しなければ良いのだ。
生きて… 生きてレナのもとへ戻れば良い。それがオレの結論だった。
そして改めて決意した。
オレが誰とベッドに入ろうと、オレはお前のものだ。
レナが誰のベッドに入ろうと、レナはオレのものだ。
お互いが、運命のロシアンルーベッド。もう迷わない。もう決めたんだ。
オレはレナの頭に銃を当て、
レナはオレの頭に銃を擬し、
オレの弾丸はレナを打ち抜き、
レナの弾丸はオレを打ち砕く。。
肉体よりもスピリット、フィジカルよりもプラトニック。
みんなが言うことって、もしかしたら狂気で、正しくないかも知れないんだよ。底の底まで覗いてみたら、まったく違う真実の景色が見えてくるかも知れないのにね。
オレは今、狂気から覚めた気がしてるんだ。
幻想かも知れないけど、オレは信じてこの道を進むしかない。
さあ、一緒に行こう、愛しいレナよ!
そして大きな問題が二つ遺された。
1つはルーベッドの新企画、玲子社長はまだ諦めていないし、これは難題だ。でもなんか最近ちょっとできそうな気もしてきたんだ。たとえばサブリミナルとかVRとか。あとはアズユーライク方式とかGO―PROとか。もしかしたら何とかなるかもしれないけど、報告にはまだ早いかもな。
もう1つはもっと難題だ。
オレの決心をレナにどうやって伝えよう?
今夜オレは殺されるかも知れない。
それでも本望だよ、レナ… 愛してる。
はははは、おれも群衆のひとりだったっていうワケだな、うん。
ここまでお読みいただいてありがとうございました。
なんとなく察しているかとはおもいますが、自分の中ではまだ完結ではありません。
作品応募の都合もアリ、少々充電期間をいただく思いもアリで、いったんここでしばらく打ち切ります。
また再開の暁には御愛読いただけますようお願い申し上げます。
もし読んでいて楽しいとか、続きが気になるという方がいらっしゃいましたら、評価やブックマーク、感想を誤字してきなどで御意見をいただければ幸いです。
重ねて御礼いたします、ありがとうございました。
楠本 茶茶




