第22部分 思考
第22部分 思考
『じゃ話すからね、いい?』
レナとオレは、今チーフ室にいて向かい合っている。レナは半袖短パンで、実に気楽な恰好である。照明の下の滑らかで白い手足が眩しい。その愛しい足をオレの足に絡めながらレナが言った。
『みんなもうお金が有り過ぎてね、この世の合法的な楽しみもやり尽くしてさ、生きる目的さえ見失っているの。でも明日も生きていかなきゃいけないでしょ。いっそ早く死んじゃいたいけど、自殺するほど苦しくもないわ。どちらかというと、いつか平穏な死を迎えたいけど、この分だと永く生きて生き恥さらすのもイヤだし、周囲にも迷惑をかけてしまいそう…できれば「安楽死」を望みたいな…』
一息ついて、さらにレナが続けた。バックではオレの好きなaikoさんの「くちびる」が終わり、「ビードロの涙」が小さく激しく流れ始めたところだ。
『そうだ、いっそイケナイことを楽しみながら、いつか自分が安楽に殺されるのを待つのも面白いかも… スリルかも知れないな… もし、もし最後の勝負に負けたとしても、とにかく『部屋からひとり』の代表を出せば良いのだからさ。
はじめは十部屋くらいの滞在者が退屈のあまり始めたチキンレースみたいなものが段々と加熱して…ね。そんな人が口コミ的に集まり、ホテルに依頼する形で、今のカタチができてきたの…』
じゅっかい
こんな雄弁なレナを見たことが無い。オレは半ば呆れながらレナを見詰めている。レナはレナで、今まで溜め込んでいたものを一気に吐き出すように、述懐が止まらない…どころか加速していくかのようだ。
熱い… 薄いズボンの生地を通してオレのふくらはぎはレナの足の温度の高まりを感じている。
『部屋に三人なり四人なりが居れば、最終的に多数決に持ち込んででも自分は生き残るのだという人もいるの。中には遊んだ後でそろそろ捨てたい女とか若いツバメとかを半分騙した形で同居に持ち込んでね、処分を期待しているようなケースもあるんだって。もちろん自分の部屋から代表を出すときはそいつを提供してさ、翌日には退去手続きをしてしえばいいじゃない。ホテルは最終的にはおカネを持っている人の言うことを聞くわ、サービスで。だってビンボー人の言うことを聞くメリットは一つもないじゃない』
ただし、なんでも良いというワケではなく、幾つかの約束があるのだという。その約束を厳守することで、今まで秘密を守って来ることができたと言うのだ。しかし最近は気が緩みがちで、時々ドクターが良い顔をしないことがあると注意があったらしい。
①生贄の顔を傷つけてはならない。
理由は身体は服を着せて誤魔化せるけど、
顔は難しいからだそうな…
②生贄は強力な痛み止め(麻薬)を飲む権利、
または全身麻酔を利用する権利がある。
③生贄は特定の誰かに犯されることを拒むことができる。
④生贄は指名して性行為等を行うことができる。
諾否は指名された者との合意で決める。
⑤生贄は死に方をリクエストすることができるが、
死を拒否することはできない。
⑥生贄はS階メンバーに、死に様や死に姿を見られること
を拒否できない。
⑦S階メンバーは生贄の死を幇助できる。
諾否は生贄との合意で決める。
⑧死後はホテル指定の火葬場で火葬され…
『えっと何だったかな』とレナが笑う。
「お墓か供養かな?」
と、初めてオレが口を出す。
『そうそう、永代供養だわ』
レナが言うと、ちっとも物騒に聞こえない。そして、それがちょっと怖い。
以前、サブチーフの電話で言ってた
『今日も顔まで行きかけた』って、①に関わることかも知れないな。
「あとさ、気になったんだけど、いい?」
『どうぞ、なんでも』
「⑦の幇助って、早い話が殺人だよね」
『ん… そうともいうね』 レナは否定しなかった。
『お金ベラ棒にかかるけど、みんな気にしないから。「特権」て呼ばれてたわ』
なるほど、そういうことか、わかってきたよ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この物語が面白い、とかこの先どうなるか興味がある… などと思われた方にお願いします。
もうじき第1章がおわるのですが、ここまでの御感想や御意見を
ブックマーク 、 評価 、 感想 等の手段でお寄せいただければ幸いです。
筆者は単細胞なので煽てられると喜び、一層著作に励むと思われます。
ぜひよろしくお願いいたします。 楠本 茶茶




