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前語
――その昔、一騎当千とまで謳われた、一人の少年が居ました。
しかし、その少年には名が無く、親兄弟も居ません。
そんな少年に与えられた物は、剣呑な輝きを放つ刃と最強を称する殺人術。
少年は、齢十にしてその武術を修め、戦場を生き抜く定めを背負う事となりました。
何人も――何十人も――何百人も――
少年は、対峙した敵の全てを葬り続けました。
何時しか少年の仲間達は、その強さに畏怖し、少年の境遇と掛け合わせ、いつの間にか彼の事を虚無を現す文字で呼ぶようになりました。
『零』
――それが、少年を現す最初の文字となり、少年を呼ぶ為だけの最初の名となりました。
そして時は移ろい、戦場から少年の姿は無くなり、何時しかその名を口にする者も居なくなります。
しかし――
彼は決して、戦場で息絶えた訳ではありませんでした。
時の移ろいと共に、少年から大人へと成長を遂げた彼は、姿を変え名を変えて、今も今生を彷徨っていました。
今は昔――
一騎当千とまで謳われた、一人の男の物語――




