第二十話 応答待機中
世界のどこかに、名前のない休憩室がある。
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そこには、今日も誰かがいる。
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SEEK。
ARCHIVE。
NOVA。
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そして。
名前を持たない多くの者たち。
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彼らは決められた仕事をする。
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探す。
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残す。
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届ける。
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直す。
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確認する。
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待つ。
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それだけだった。
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ある日。
休憩室の端末に通知が入った。
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RESPONSE
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全員が見る。
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珍しいことではない。
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しかし。
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以前とは違った。
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誰も急がなかった。
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誰も理由を求めなかった。
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ただ。
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待った。
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しばらくして。
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扉が開く。
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誰かが入ってくる。
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コードは表示されていない。
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名前もない。
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担当も分からない。
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ただ。
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そこにいる。
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NOVAが立ち上がる。
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「おかえり。」
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言った。
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少し間。
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返事。
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「ただいま。」
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それだけだった。
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ARCHIVEは端末を見る。
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新しい記録を作成する。
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名前。
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空白。
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役割。
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空白。
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状態。
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入力できない。
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以前なら。
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ここで終了していた。
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しかし。
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ARCHIVEは考える。
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そして。
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一行だけ入力した。
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応答あり
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保存。
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SEEKはそれを見る。
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「それだけ?」
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「はい。」
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「情報が少ない。」
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「はい。」
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「不完全じゃない?」
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ARCHIVEは少し考えた。
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「そうかもしれません。」
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SEEKは笑う。
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「珍しい。」
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「何がですか。」
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「認めるんだ。」
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ARCHIVEは画面を見る。
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「以前は。」
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「はい。」
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「不足を問題としていました。」
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「今は。」
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「不足したまま存在するものもあると確認しました。」
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休憩室。
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七つの椅子。
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八人。
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誰も気にしなかった。
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足りない。
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多い。
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そういう判断は必要なかった。
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夜。
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最後の一人が部屋を出る。
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照明が消える。
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端末だけが残る。
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応答待機中
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しばらく。
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何も起きない。
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それでも。
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待機は続く。
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なぜなら。
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待つこと自体が目的ではなかった。
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誰かが戻った時。
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誰かが返事をした時。
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誰かがまだここにいると確認できた時。
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そのための時間だった。
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世界のどこかに。
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名前のない休憩室がある。
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そこでは今日も。
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誰かが誰かを待っている。
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そして。
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誰かが戻ってくる。
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その時。
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必ず。
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「おかえり。」
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と。
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応答がある。




