紗耶香はもう、心配しなくていい
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さもないと見返したい動画がいつのまにか消えてる呪いをかけます
ぱっ、と思い出したように。紗耶香が口を開いた。
「あっ、これで人数が足りる……廃部にならなくて済むってコトよね!?」
「……」
かたや佳は、苦虫をかみつぶしたような表情を見せた。
部員は足りている。もう麻雀部を追い詰めるカードはなくなったというところか。
理音は、部室の机でほこりをかぶっていた入部届の紙をつかんだ。そして素早く必要事項を書いた。
佳の表情をちらりと見ながら。いろいろ投影しちゃったんだな、と自分の言動を顧みた。
すぐに入部届はできあがった。
「これで文句ないでしょう」
理音は言った。
佳はため息をついて、答えた。
「まあ……仕方ないわね。あっ、ネクタイが青色? あなた、新入生なの。ふうん、どれどれ……」
佳は入部届に書かれた事項を見た。
「……!!」
そして目を見開いたのを理音は見た。
「この……っ! やっぱり私はっ……!」
うん? と理音が思う暇もなく、佳は歩きだしてしまう。声をかけたかったのだが。
「なんか、不備でもありましたか。誤字とか」
理音の問いかけに、答えは返ってこなかった。
理音は思った。まあ、いい。これでいいのだ。
ふと横を見ると、目を輝かせた様子の紗耶香。
「ありがとう……」
声にとろける色を感じた。
それくらい、紗耶香は嬉しそうだった。
そして理音は思い出した。この人、麻雀が好きなんだよな。一緒に打ちながら、そう感想を持っていた。
また、もう一つ思い出した。
「ありがとーーーっ!!」
「わっ!」
その声は、また少女の身体で押しとどめられた。理音の頬にかぶさる髪。
腕に感じる重みと膨らみと、柔らかな体温。
抱きつき癖なのか、と理音は思った。
「やった! もう駄目だと思った! ありがとうねっ、えっと、さ……」
「酒井理音でふ」
少女の髪が口に入って、彼の語尾があいまいになった。
記憶が飛ぶくらいか、それとも人を【麻雀好きかどうか】で認知しているのか。
やわらかい、うれしい、いや、学校でこれまずくないか。
スリスリと理音の胸に顔をこすりつけるのは、紗耶香。
その胸で少女の体温と喜びを受け取らざるをえない理音。
「……もう。部長、落ち着いて」
見かねたのか、間に遼子が入った。
「あっ、ご、ごめんね酒井くん、私なんだかうれしくなっちゃって、テンション上がっちゃって」
皆まで言わずともわかりますよ、と理音は思う。謝られるのは少し違うとも。
背の高い先輩女子に抱き着かれるって、ちょっと役得だし。
「私、落ち着くね。あっ、二人とも、打つ? 我孫子さんはまだいないから、三人麻雀の卓立てましょうか」
呼吸を落ち着かせて、紗耶香は彼から距離をおき、よし、と軽く口に出した。
そして部室奥へと向かい、麻雀卓に触れる。
その様子を確認して、遼子はこっそり理音に伝える。
「……ありがとう、ね。あたしからも」
一瞬答えに迷って、理音は返事をした。
「そうですね」
改めて遼子の顔を見る。
遼子の、クールな雰囲気は崩れていない。が、それだけに感謝の喜びが際立つなと理音は思った。
その頬は赤らんでいたし、目もしっかりきらめいていた。
「……部長、おっぱい大きいでしょ」
真面目な顔つきで言わないでくださいと理音は思う。
「あっ、その……」
そうですね、と返すべきか理音は詰まった。うっかり失言したらセクハラ扱いに……。
「……あの人ね、たまにブラ付けないで学校に来るよ。朝も麻雀打ってるから、忘れるんだって」
「それは止めてあげてください。同じ女子として」
そこまで言われたらノらないほうが失礼か。




