ティアラとカンムリについて(コジロー談
「単刀直入に申し上げますと、あなたたちは今説明したシステムでは無いのです」
「はい?」
「あなたたちは、道が1本しか無い」
カンムリが返す。
「まっすぐすすんでるもん」
ティアラはカンムリに小石を投げた。
「つまりこういうことね、爆発的に増える可能性が、同じ道を歩いちゃう」
ツバメが現れた。
「大正解ー」
ひとりでぱちぱちと拍手した。
コジローは話を続ける。
「あなたたちにパラレルワールドは無い、しかし暗黒世界はある 」
ティアラは頭をフル回転させた。
答えは単純だった。
「えーと、言い方が変わるだけなんだけど、道が1本なのに可能性が増えてる?」
「正解です」
「そう、大問題に大正解」
いつの間にかコジローの横にいたツバメはまたぱちぱちと拍手をした。
ティアラは訊ねた。
「えーと、それだと、私たちが一瞬で大量にどわーっと暗黒世界に出るわよね」
「はい、そうです、しかし受け止めてくれました」
「じゃあ問題ないじゃない」
「問題ないことが大問題」
「世界が満ちてしまうかもしれないのです、あくまでもこの世界だけですが、不安要素は少ない方が良いのです」
「はぁ?」
「暗黒世界が無限なのか有限なのか、そこが確定していない。だから怖いのです。すべからく、あなた達が産まれる前に手は打たれていました」
「時止めと、無間殺」
「えーと、時間が止まってて、ムゲンサツ……?」
「時が止まった空間の中で、可能性が生じる前にそのアナタは断片に殺されていまふ」
ほか3名は思った。
大事なとこ、かんだな……。
「で、その怖い表現なんなのよ、殺されてるって」
「言葉通りです、全くの同時に可能性が無限大に広がるのです。あなた達の世界に関しては。あなた達が産まれる前、いえ、まだ受精すらしていない時、すでに特異な存在が産まれることがわかっていました。あなた達がどこで産まれ、そしていつなのか、目星はついていました。だから……」
「だから?」
カンムリも何となく気付き始めた。
「だから……って」
「だから、そのあたり一帯を封鎖して、女性は赤子から老婆まで全て隔離しました」
「隔離?隔離……嘘つくなよ」
「そこは私にもわかりません……」
「コノヤロー!!」
カンムリはコジローにこぶしほどの石を投げようとしたが、すでに石は粉みじんになっていた。
「殺されているかもしれません」
コジローは正直に答えた。
ティアラは冷静だった。
「全ては可能性が?」
「そうです。女性達が殺されている道か隔離されている道か、その選択は無情にも、どちらに転ぶかわからない、増えゆくあなた達のどれが消されているのかもわからない」
「じゃあ何であたし達はここにいて、それこそ、なんで産まれたのよ」
ツバメがまた瞬時に移動していた。
「無限の可能性……」
「そう、産まれてくる可能性」
「死ぬものは消せないが、万に一つ生きるものならば……」
そしてコジローは言い放った。
「私はすでに何万回とあなた達を殺そうと『思った』」
その目は哀しみを宿していた。




