53 会議②
翌日。
吸血魔人のヤツらとの約束は正午だ。太陽が最も高くなりかけた頃、空からヤツらが飛んできた。オレは総本部の広い中庭から手を振った。
これで軍の連中に話を聞かせてやることができるが……。はたして吸血魔人のヤツらは、ヒト族の心に訴えかけられるだろうか?
オレにできるのはここまでだ。ヒト族と魔人族の話し合いについて、魔族のオレは傍観することにしよう。
ただ……少ないな。吸血魔人がたった五人しか来なかったなんて。しかもその五人とも知らない顔だった。つまり赤髪のグフルーゴの姿もなかった。
オレには護衛が一人ついた。吸血魔人に襲われないようにとのことらしい。だが襲われるなんてありえない。それにたった一人がついたとして、そんなのが護衛になるものか。まあ、オレに対する『一応気を遣ってます』というアピールのつもりだろう。
その護衛は軍兵ではなく親兵だった。彼の顔に見覚えがあった。昨日オレがルルロコと二人で来賓室にいたとき、ディーフィーの使いとしてやってきた男だ。
それにしても遅い……。
吸血魔人らは早めに到着したというのに、どうして軍や親兵の連中はまだ現れないんだ? いつまでここで待たせる気なんだよ。
めまいがしてきた。
どうしたのだろう。この大事なときに。
待ち疲れのせいか?
吸血魔人の一人がうずくまる。
そしてまた一人、別の吸血魔人もうずくまった。
最初の一人はそのまま地面に倒れた。
おかしいぞ。これって……まさか?
と思った直後――。
ある吸血魔人が、突然叫ぶ。
「皆、飛びあがれ! 無色無臭の毒ガスだ!!」
なんだと? 毒ガス?
すぐさま吸血魔人の三人が地面から飛びあがる。他の二人は置きざりだが、やむを得ない状況だった。オレも魔力が込められず、ウインドを発動できなかった。
しかし飛びあがった三人のうち二人がすぐに落下した。すでにたくさんの毒ガスを、吸い込んでいたためだろう。
いま飛べているのは、たった一人の吸血魔人。
ところが……。
建物から魔弾が飛来。彼は打ち落とされた。
高所から石床への激突。即死だった。
何っ、嘘だろ?
どういうことだ。なんでこんなことを。
吸血魔人の意見を聞く場じゃなかったのかよ。
毒ガス……。オレまでも巻き込もうとしたんだな。ディーフィーも承知していたのか。いいや、護衛に親兵がついたことを考えると、それはありえないだろう。
建物の上から軍兵がずらりと顔を出した。
その中に総司令官もいた。眉間にシワを寄せている。
「たった五匹しか来なかったなんて。少なすぎるじゃないか」
総司令官の言葉ですべて理解できた。
大勢の吸血魔人を一ヶ所に集め、一気に殺す作戦だったのだ。
オレと護衛も巻き込んで。
うずくまっていた一人の吸血魔人が、体を起こす。
よろよろと立ちあがり、ニヤリと笑みを浮かべた。
「初めから騙し討ちなのはミエミエだったぞ。だから最小限の人数で来たんだ」
ピィーーーーーーーーーーーーーーーッ
その吸血魔人が指笛を慣らした。
総司令官が笑う。
「ガハハハ。馬鹿め、仲間でも呼ぶつもりか」
吸血魔人も声高に笑う。
「ハハハハ。ここに呼ぶわけじゃない。各地での総攻撃の合図だ」
なにっ、総攻撃だと?
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