51 コーリシャス軍総本部
「協力できません」
ミーンミアはディーフィーに、そう言って帰っていった。
突然の平手打ちに茫然とするオレ。
そんな……。どうしてだよ?
やっとせっかく再会できたというのに。
「あの……お客様、いまのお方は……」
「オレが話していた大切な獣人族の友人だ」
ルルロコが頭を下げる。
「あのお方が例の……。これは申しわけございません。わたくしはなんてことをしてしまったのでしょう。ご友人以上のご関係のお方に対し、わたくしの職業を伝えましたばかりに怒らせてしまいました」
「いやいや、前に言ったと思うが、友人以上というのは誤解だ。そりゃまあ、パーティ仲間は互いに命を預け合う存在だし、大きな信頼関係が必要だが……」
「互いに特別お慕いされている仲ではない、ということでしょうか」
「もちろんだ。付き合うなんてまずありえない」
だいたいオンナって、自分より弱いオトコしか相手にしないだろ? もし自分より強かったら、オトコを奴隷のように扱えないからな。どうせ鬼法も魔法も同じようなものだし。
「本当に問題ございませんのでしょうか? むしろ……お客様のお話が偽りであることを願いたい気持ちです。でなければご友人様が不憫です」
「何を言っているのか理解できない。不憫ってどういう意味だ。ひっぱたかれたのはオレだからな?」
一方、ディーフィーは困った顔になっていた。
「エキシビションマッチで大活躍している冒険者を、ようやくスカウトに成功したつもりだったが……」
「ミーンミアの代人って、そんなに強いのか」
「俺も対戦を直接見たわけじゃない。だが戦闘力は驚くほど高いと評判だ」
そっか。一度でいいから試合を見てみたいものだ。オレと同じロフェイって名前だっけ。偶然ってあるもんだな。
ミーンミアはディーフィーからの協力依頼を断ったが、オレは彼に協力することにした。なぜなら吸血魔人らの襲撃はオレのせいでもあるだろうし、ディーフィーにはたくさん世話になっているからだ。
吸血魔人への対応は、コーリシャス軍が主体とのことだった。ディーフィーたち親兵は、組織としてコーリシャス軍から独立しているため、通常はそのようなものには加わらないらしい。
しかし今回は非常事態であり、彼の弟である領主に協力を要請――というより、実際には『懇願』――されたものであるため、仕方がないそうだ。
オレはディーフィーたちとともに、コーリシャス軍の総司令官のもとへと行くことになった。当然、ルルロコは城から店に帰っていくこととなる。
「この度は、お客様をご満足させることができず、お詫び申しあげます」
「ルルロコ嬢は悪くない。こっちこそ最悪な客で悪かった」
「もう二度とわたくしを買われないよう、お願いいたします。可愛らしいご友人様を悲しませないためにも」
「からかいやがって。彼女とは本当にそんな関係じゃないんだ」
「羨ましいです、ご友人様が」
ルルロコはディーフィーの手配した馬車で帰っていった。
オレたちもコーリシャス城を出発する。
馬車の中。ディーフィーに、なんとなく尋ねてみた。
「ギルドからはどのくらいの数の冒険者が派遣されるんだ?」
「残念ながら、正式にはギルドから冒険者は派遣されない。中にはギルドと無関係に協力してくれる冒険者もいるだろう。だが全体からしてみれば、ほんの僅かでしかない。実質的には、ほぼ軍と親兵のみだ。ロフェイのご友人から協力を得られなくなったのは痛いな」
「じゃあ、なんでギルドは動かないんだろう」
「あまりこういうことは口にしたくないが、軍とギルドはちょっと不仲なんでな。軍が主体となるとギルドは参戦拒否となる……初めから想像はできてたさ」
「だとしても領主の鶴の一声で、簡単にギルドを参戦させられるんじゃないのか」
「いいや、いまの領主にそんな力はない」
「はあ? 領主って領内で一番偉いんじゃないのか」
「領主なんてお飾りにすぎない。現在、軍の総司令官が実質的な最高権力者だ」
なんだと?
馬車がコーリシャス軍総本部に到着。
まるでコーリシャス城を見ているような立派な施設だった。
総司令官が実質的な領内最高権力者というのはうなずける。
厳つい顔の総司令官に会った。
なるほど、最高権力者の風貌があった。
広いフロアが静まり返っている。
このギスギスした空気はなんだ?
わかったぞ。軍は親兵たちとも不仲だったかぁ。
軍と親兵との合同会議が始まった。
オレは親兵側の奥の席で、黙って聞いていた。
ところが軍の総司令官がこっちを指差す。
「冒険者ギルド代表からの意見も聞きたい。いかがかな」
オ、オレ? 冒険者ギルド代表?
慌てたのはディーフィーだった。
「彼はギルド代表ではない。我々親兵側の協力者だ」
「些細なことはどうでもいい。冒険者としての意見を聞きたいだけだ」
仕方なく立ちあがり、一礼する。
「まず親兵副隊長の話のとおり、オレはギルドを代表するつもりはない」
「おっとその前に冒険者としての戦歴を、聞かせてもらえないだろうか」
それもそうか。
「オレは冒険者としての日がまだ浅く、倒したモンスターの数も多くない。ただウルスロ町のギルド主催トーナメントで優勝したため、ここマハ・コーリシャスに来ることになった」
すると軍側がザワついた。
「ウルスロと言ったか?」
「ギルドのエキシビションマッチで暴れ回っているという、あの……」
「ほう、なんと心強い協力者だ!」
「確か名前はロフェイと言ったはずだ」
しかし軍側の一人が立ちあがる。
「嘘だぁ!!!!!!!! 皆、騙されるな。彼はロフェイじゃない。ロフェイはフードこそ深く被っていたが、明らかに女だったぞ」
「俺も女だと聞いた」
「俺もそうに聞いている」
「うん、俺もだ」
総司令官が「ゴホン」と咳払い。室内が静かになった。
「どうなんだ? 本物のロフェイなのか?」
ああ、ミーンミアの連れのせいで面倒なことになった。だいたい、なんでオレと同じ名前なんだよ。ウルスロの町にそんな冒険者がいたのか。熟練者戦にも新人戦にもいなかったと思うが。もしかして中堅者戦にでも出ていたのか。
「オレはウルスロ町のギルドの大会優勝者としてマハ・コーリシャスにやってきたが、まだエキシビションマッチには出場していない。ロフェイという者が活躍中とのことだが、オレとは単なる同名の別人だ。ただウルスロの本来の代表者は、オレのはずだったんだ」
「つまりウルスロ町ギルドにおいて、真の大会優勝者でであり、活躍中のロフェイという者よりも、実力は上なんだな?」
「上だなんて言ってない。実のところ、そいつのこと知らないんだ。対戦すらまだ見ていない」
胡散臭そうな者を見る目。それは軍の連中ばかりではなく、親兵たちもそんな感じだった。
ああ、くそっ。まったくなんだって言うんだ!
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