27 VSメガファイヤ
新人戦が始まった。特殊な耐魔防具の装着が義務づけられ、魔法のみで戦うというルールだった。参加者は総勢百七十八人。
ここまでトーナメントを順調に勝ち進んできている。
まっ、当然だろう。なんたってオレは熟練者戦を制してきたんだ。
いよいよ例のメガファイヤ野郎との対戦となった。準々決勝・第一試合目だ。
アイツも無事にここまで勝ち進んできたわけか。やはり新人としては強豪の部類だったんだな。こっちを見ながら不敵に笑ってやがる。
「へへへへ。ぶっ殺してやる」
オレを殺す? へえ。やれるものならやってみな。
主審が合図する。
試合開始だ。
ヤツは早くもメガファイヤを打ってきた。こっちもミニファイヤを放って打ち消す。威力はほぼ互角だろうか。しばらくメガファイヤとミニファイヤの打ち合いが続いた。
「俺のメガファイヤがミニファイヤと同等なんてありえない!!」
憤怒の形相となったヤツの顔は、まるで焼けた鉄ように真っ赤だった。
ここでも観衆が騒がしくなってきた。
「メガファイヤとミニファイヤが互角だぞ」
「さすがは熟練者戦優勝者。ミニファイヤだけでよくやるぜ」
「確か、名前は……ロフェイだっけ。覚えておこっと」
ヤツは歯を食いしばり、メガファイヤを連発している。気迫が感じられた。
しかし……オレは少し飽きてきた。すべてが面倒に感じるのだ。おそらく魔力の使いすぎのためではなかろうか。なんてったって新人戦の前に、過酷な熟練者戦を戦ってきたばかりなのだ。この試合、スタミナを考えるとオレが不利になる。
ああ、そうだった。オレはもう熟練者戦で優勝を勝ち取ったんだ。新人戦なんて無理して戦わなくてもいいじゃないか。もはや勝とうが負けようが、面目はじゅうぶん保てるはずだ。
んっ、面目……?
だいたいオレがそんなものを気にしてどうする。こんな試合など負けたって構うものか。とにかく、もうやめよう。終わりにするぞ。
いいや、ダメだ!
ヤツの憎たらしいツラを見ろ。ミーンミアを侮辱した野郎じゃないか。コイツを勝たせることだけはしたくない。
ああ、危ない、危ない。危うく試合を放棄するところだった。対戦する相手がコイツじゃなけりゃ、負けを望んでいたかもしれない。やはり魔力を消耗しすぎたために、気力がなくなってきたのだろうか。
では、気力を高めるにどうしたらいい? この戦闘にワクワク感を抱ければいいのだが……。そうだ! 新しい魔法へのチャレンジなんてどうだ? よし、アレを試してみるか。
ポケットに手を突っ込んだ。そのまま魔石を握る。ルーシャからもらったばかりの魔法の種――ファイヤのものだ。
おっと。またヤツのメガファイヤが襲ってきた。ミニファイヤを打ち返す。困ったぞ。魔法の種を試す暇がない。おい、ちょっと待ちやがれ。
ほんの僅かでいいから時間がほしい。
ならばウインドで牽制してみようか。
まず手をまっすぐ伸ばし、その位置に魔法陣を出す。しかしウインドは扱い方が少しばかり難しい。もし風の送り方を誤れば、反動でオレの体が後ろに飛ばされるからだ。
ビュンっ
ヤツが後ろに転んだ。成功だ。転び方が滑稽で面白かった。
いいぞ。そんじゃ、この隙に!
ふたたびポケットにある魔法の種を握り、さっと急いで取りだした。意識を集中すると、魔法陣が出てきた。
同時に魔石がパリーンと砕け散る。
またもや新魔法の習得に成功らしい!
さあ、見てくれ。ミニファイヤより格上のファイヤを。
オレの手の先には、ちょっと派手な魔法陣。
これを見た観客が騒がしくなる。
「あの魔法陣って、ファイヤじゃないか」
「ファイヤ……。おお、それをまだ隠してやがったか」
「ロフェイのファイヤが見られるぞ」
「ミニファイヤより上だろ? いったいどんなファイヤだ」
「早く見せてくれ。ロフェイのファイヤを!!!」
以前から思っていたことだが、観客は大したもんだ。魔法陣の形や文様を見ただけで、ファイヤだと認識できちゃうなんて。
魔法陣から大きな炎が形作られる。まだ発射は止めておいた。手の先で炎がさらに大きくなっていく。
ほう、こりゃすげえな。ミニファイヤとはぜんぜん違う。どこまで大きくなるんだ? うん、もういいだろう。そろそろコイツを飛ばしてみるか。
ここで観衆の声質が変わった。
「なんだ、ありゃ」
「嘘だろ? デカすぎる」
「あれ、ヤバくないか」
「あんなん喰らったら絶対死ぬ!」
「まずいぞ、まずいぞ、まずいぞ」
敵のメガファイヤ野郎も悲鳴のような声を出す。
「うわぁーっ!!」
構わず発射……。
ところがどうしたことか、試合審判団が割って入ってくるのだった。彼らの魔法により、光の壁が何重にも作られた。
オレは慌てて発射を止めようとしたが、巨大炎は飛んでいってしまった。光の壁をぶち壊していく。そして敵のメガファイヤ野郎の体を包んだ。
審判団は必死に消火。ヤツに回復魔法を施す。
騒然とする観衆。
「だ……大丈夫だろうか」
「まさか、死んじゃいないだろうな?」
「あんなデカいファイヤ、ありえない」
「どんなヤツのメガファイヤよりも遙かに上だ」
メガファイヤ野郎は応急処置されたあと、運ばれていった。
しばらくして禿げ頭の男が会場の中央に立った。
この禿げ頭、ギルド上層部の者だろうか。
メガファイヤ野郎は一命を取り留めたと、禿げ頭から話があった。
すると観客席から大拍手が起きた。さらに彼はこう説明した。
「……我々がさきほど試合を途中で止めようとしたのは、放たれようとしたファイヤの大きさがあまりにも大きく、危険だからと判断したからです。実際に放たれたファイヤの規模は、フレア並みでした。おっと失礼しました。フレアについてご存じない方もいらっしゃるでしょうから、一応、お話しておきましょう。普通の火系魔法において、ミニファイヤを初級だとしますと、ファイヤが中級で、メガファイヤが上級となります。基本的にはそれだけだとされています。しかしその上にもう一つあります。それがフレアというものです。めったにお目にかかれない幻級の魔法です……」
これは観衆に向けた説明だろうが、オレはフレアのことをルーシャから聞いていた。なんたって今回の優勝賞品が、フレアを含む魔法の種なのだ。
「……よって、この試合の勝者をロフェイとします……」
歓声と拍手に包まれた。
「……しかし次に行なわれる準決勝ですが、ロフェイは熟練者戦の優勝者であるため、彼にはファイヤ系の魔法を禁止とします」
おいおい、嘘だろ。
ところが、このあと話は一転するのだった。
なんと、準々決勝・第二試合目の延期が決まったのだ。競技会場の工事が必要になったためらしい。観客はオレのせいにしているようだ。試合には勝ったが、なんだか悪役になった気分だ。ちょっと納得いかない。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!
【評価】と【ブックマーク】で応援をお願いいたします。
下の ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に変えてくださると、
最高にうれしいです。




