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27/61

27 VSメガファイヤ


 新人戦が始まった。特殊な耐魔防具の装着が義務づけられ、魔法のみで戦うというルールだった。参加者は総勢百七十八人。


 ここまでトーナメントを順調に勝ち進んできている。

 まっ、当然だろう。なんたってオレは熟練者戦を制してきたんだ。


 いよいよ例のメガファイヤ野郎との対戦となった。準々決勝・第一試合目だ。


 アイツも無事にここまで勝ち進んできたわけか。やはり新人としては強豪の部類だったんだな。こっちを見ながら不敵に笑ってやがる。


「へへへへ。ぶっ殺してやる」


 オレを殺す? へえ。やれるものならやってみな。



 主審が合図する。

 試合開始だ。



 ヤツは早くもメガファイヤを打ってきた。こっちもミニファイヤを放って打ち消す。威力はほぼ互角だろうか。しばらくメガファイヤとミニファイヤの打ち合いが続いた。


「俺のメガファイヤがミニファイヤと同等なんてありえない!!」


 憤怒の形相となったヤツの顔は、まるで焼けた鉄ように真っ赤だった。

 ここでも観衆が騒がしくなってきた。


「メガファイヤとミニファイヤが互角だぞ」

「さすがは熟練者戦優勝者。ミニファイヤだけでよくやるぜ」

「確か、名前は……ロフェイだっけ。覚えておこっと」


 ヤツは歯を食いしばり、メガファイヤを連発している。気迫が感じられた。


 しかし……オレは少し飽きてきた。すべてが面倒に感じるのだ。おそらく魔力の使いすぎのためではなかろうか。なんてったって新人戦の前に、過酷な熟練者戦を戦ってきたばかりなのだ。この試合、スタミナを考えるとオレが不利になる。


 ああ、そうだった。オレはもう熟練者戦で優勝を勝ち取ったんだ。新人戦なんて無理して戦わなくてもいいじゃないか。もはや勝とうが負けようが、面目はじゅうぶん保てるはずだ。


 んっ、面目……? 


 だいたいオレがそんなものを気にしてどうする。こんな試合など負けたって構うものか。とにかく、もうやめよう。終わりにするぞ。


 いいや、ダメだ!


 ヤツの憎たらしいツラを見ろ。ミーンミアを侮辱した野郎じゃないか。コイツを勝たせることだけはしたくない。


 ああ、危ない、危ない。危うく試合を放棄するところだった。対戦する相手がコイツじゃなけりゃ、負けを望んでいたかもしれない。やはり魔力を消耗しすぎたために、気力がなくなってきたのだろうか。


 では、気力を高めるにどうしたらいい? この戦闘にワクワク感を抱ければいいのだが……。そうだ! 新しい魔法へのチャレンジなんてどうだ? よし、アレを試してみるか。


 ポケットに手を突っ込んだ。そのまま魔石を握る。ルーシャからもらったばかりの魔法の種――ファイヤのものだ。


 おっと。またヤツのメガファイヤが襲ってきた。ミニファイヤを打ち返す。困ったぞ。魔法の種を試す暇がない。おい、ちょっと待ちやがれ。


 ほんの僅かでいいから時間がほしい。

 ならばウインドで牽制してみようか。


 まず手をまっすぐ伸ばし、その位置に魔法陣を出す。しかしウインドは扱い方が少しばかり難しい。もし風の送り方を誤れば、反動でオレの体が後ろに飛ばされるからだ。



 ビュンっ



 ヤツが後ろに転んだ。成功だ。転び方が滑稽で面白かった。

 いいぞ。そんじゃ、この隙に!

 

 ふたたびポケットにある魔法の種を握り、さっと急いで取りだした。意識を集中すると、魔法陣が出てきた。


 同時に魔石がパリーンと砕け散る。

 またもや新魔法の習得に成功らしい!


 さあ、見てくれ。ミニファイヤより格上のファイヤを。


 オレの手の先には、ちょっと派手な魔法陣。

 これを見た観客が騒がしくなる。


「あの魔法陣って、ファイヤじゃないか」

「ファイヤ……。おお、それをまだ隠してやがったか」

「ロフェイのファイヤが見られるぞ」

「ミニファイヤより上だろ? いったいどんなファイヤだ」

「早く見せてくれ。ロフェイのファイヤを!!!」


 以前から思っていたことだが、観客は大したもんだ。魔法陣の形や文様を見ただけで、ファイヤだと認識できちゃうなんて。


 魔法陣から大きな炎が形作られる。まだ発射は止めておいた。手の先で炎がさらに大きくなっていく。


 ほう、こりゃすげえな。ミニファイヤとはぜんぜん違う。どこまで大きくなるんだ? うん、もういいだろう。そろそろコイツを飛ばしてみるか。


 ここで観衆の声質が変わった。


「なんだ、ありゃ」

「嘘だろ? デカすぎる」

「あれ、ヤバくないか」

「あんなん喰らったら絶対死ぬ!」

「まずいぞ、まずいぞ、まずいぞ」


 敵のメガファイヤ野郎も悲鳴のような声を出す。


「うわぁーっ!!」


 構わず発射……。


 ところがどうしたことか、試合審判団が割って入ってくるのだった。彼らの魔法により、光の壁が何重にも作られた。


 オレは慌てて発射を止めようとしたが、巨大炎は飛んでいってしまった。光の壁をぶち壊していく。そして敵のメガファイヤ野郎の体を包んだ。


 審判団は必死に消火。ヤツに回復魔法を施す。


 騒然とする観衆。


「だ……大丈夫だろうか」

「まさか、死んじゃいないだろうな?」

「あんなデカいファイヤ、ありえない」

「どんなヤツのメガファイヤよりも遙かに上だ」


 メガファイヤ野郎は応急処置されたあと、運ばれていった。


 しばらくして禿げ頭の男が会場の中央に立った。

 この禿げ頭、ギルド上層部の者だろうか。


 メガファイヤ野郎は一命を取り留めたと、禿げ頭から話があった。

 すると観客席から大拍手が起きた。さらに彼はこう説明した。


「……我々がさきほど試合を途中で止めようとしたのは、放たれようとしたファイヤの大きさがあまりにも大きく、危険だからと判断したからです。実際に放たれたファイヤの規模は、フレア並みでした。おっと失礼しました。フレアについてご存じない方もいらっしゃるでしょうから、一応、お話しておきましょう。普通の火系魔法において、ミニファイヤを初級だとしますと、ファイヤが中級で、メガファイヤが上級となります。基本的にはそれだけだとされています。しかしその上にもう一つあります。それがフレアというものです。めったにお目にかかれない幻級の魔法です……」


 これは観衆に向けた説明だろうが、オレはフレアのことをルーシャから聞いていた。なんたって今回の優勝賞品が、フレアを含む魔法の種なのだ。


「……よって、この試合の勝者をロフェイとします……」


 歓声と拍手に包まれた。


「……しかし次に行なわれる準決勝ですが、ロフェイは熟練者戦の優勝者であるため、彼にはファイヤ系の魔法を禁止とします」


 おいおい、嘘だろ。



 ところが、このあと話は一転するのだった。


 なんと、準々決勝・第二試合目の延期が決まったのだ。競技会場の工事が必要になったためらしい。観客はオレのせいにしているようだ。試合には勝ったが、なんだか悪役になった気分だ。ちょっと納得いかない。



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