13 魔法の実験
翌日早朝。また狭間の森へとやってきていた。
新しい魔石を入手したい。できれば光石も。そして使える魔法をもっと増やしたい。今回はどんな冒険になるのやら。同行者は親睦会のときと同様、ヘスナートとリムネとミーンミアだ。
しばらくしてD級モンスターが現れた。地を走る『人食い鳥』だ。飛ぶことはできないが、長い首や足を持ち、その先に付いた鋭い嘴や爪が危険だ。
ミーンミアはフットワークを生かしながら、間合いを詰めた。
しかしもう一歩が踏み込めないでいる。そこで遠方からリムネがミニファイヤを放った。モンスターにダメージは見られない。しかし隙は生まれていた。
ミーンミアの両手で握る短剣がモンスターを襲う。それでも力が弱いため、与えるダメージは小さかった。ふたたびリムネが魔法を放つ。今度は石爆弾系魔法のストーンボムだ。轟音に怯むモンスターの背後に待っていたのは、巨漢のD級剣術士ヘスナートだった。
ヘスナートの渾身の一振り。さすがのD級モンスターでも、それなりにダメージを喰らうことだろう。しかし僅かに空振り。一気にピンチと化した。
ここまでか。
だったらオレが。
手の先から魔法陣が浮かびあがる。
特大のミニファイヤだ。喰らえ!!
D級モンスター『人食い鳥』を、あっさりと倒した。
オレ一人で無難に倒せる相手だった。もちろん一発で決まった。しかも魔石を落としてくれた。だがオレには誰からも感謝の言葉はない。皆、頬をぷうっと膨らませている。怒らせてしまったみたいだ……。
「ロフェイ、ぎりぎりまで待ってくれって話だったじゃん。これじゃ俺たちの特訓にならないよ」
「早すぎたか。ごめんごめん」
オレの魔法はミニファイヤと拡大魔法のみ。それでも仲間の戦力は、オレのレベルに達していない。魔物を倒すには、ぶっちゃけオレ一人の方が効率的だ。
では何故、彼らと組んでいるのか。
理由は二つだ。
一つはまだまだ彼らから学ぶべきことが多いためだ。
もう一つは、一応、何かあった場合に仲間がいた方がいいと考えたからだ。
この先、魔族であることが人々にバレた場合、多くの冒険者がオレを殺しにくるだろう。それでも仲間がいたら、もしかして助けしてくれるかもしれない。親密な関係を築けていれば、オレの正体を知っても受け入れてくれるのではなかろうか。
ただ、魔族と人間は違う。友情のあり方についても、魔族と人間とで考え方にズレがあるかもしれない。オレはまだ人間のことを、正しく認識できているわけではないのだ。
ふたたびモンスターが現れた。
ジャイアントトロールというE級モンスターだとか。仲間たちが戦う。オレの出番は固く禁じられた。暇だな。何をしていようか。そうだ!
魔石を一つ取りだした。神官じゃなくても魔法の種にできるんだよな。場所だって神殿でなくともいいと聞いている。失敗したらもったいないけど、ちょっとやってみようか。
てのひらに魔石を置き、意識を集中させる。光った。成功だ! はたして、なんの魔法の種になったのか。新しい魔法を習得したい。また同じミニファイヤや拡大魔法というのは勘弁してくれよ。
それをぎゅっと握りしめる。光ると同時に破裂した。また成功のようだ。魔法陣が浮かびあがる。
おっと、こんなところで発動させてはならない。
慌てて発動を止める。魔法陣は何事もなくしぼんでくれた。しかし気になる。いま、オレ、なんの魔法を習得したのだろう。リムネのもとへと駆け寄った。
「何よ。いま戦闘に忙しいんだけど」
「ちょっとだけ見てくれ」
「いまじゃないと駄目なの?」
オレは魔法陣を浮かびあがらせた。
「これ、なんの魔法だ?」
「ウインドみたいだけど……」
「そっか。礼を言うぜ」
「忙しいのに、なんなのよぉーーーー」
ウインドか。前に話を聞いたことがある。風系魔法の最弱種だったっけ。風系は弱い順からウインド、トルネード、メガトルネードという種類があったと思う。いま習得したのは最弱種のウインドらしいが……。どんなものなんだろう。
さっきは発動を中止したが、やはり試すことにした。
モンスターとは反対側に手を向ける。もしモンスターを倒したら、また怒られるからだ。手の先から魔法陣が浮かびあがる。行けっ!
ゴォーーーーーーーーーー
凄まじい強風だった。大きな樹木を二本倒してしまった。ジャイアントトロールと戦闘中の仲間たちがこっちを向く。
「おい、ロフェイ。どうしたっ」
「ごめん。なんでもない。そっちはモンスター退治に集中しててくれ」
いま戦っているジャイアントトロールくらいならば、遠くに飛ばせるんじゃないか? まあ、そんなことしたら皆に怒られるだろう。だからやらないけど。それにジャイアントトロールを遠くに追いやったら、そいつから魔石も得られなくなってしまうだろうし。
ただ……トドメの一撃には向かなそうな魔法だな。戦闘においては拡大魔法と同様、あんまり役に立たないだろう。
いやっ、待てよ? いま魔法陣が出ているのは手の先からだ。これって手じゃなければ駄目なのか。たとえば……魔法陣を足の下にとか。
足裏に意識を集中してみる。
魔法陣が出てきた。
ビューーーーーーーーーー
足裏から激しい風が吹きだす。オレの体はまっすぐ空に向かって、一直線に押しあげられた。凄まじいスピードで山ほどの高さになった。
うっ、ヤバい、ヤバい、ヤバい!
どうしよう。どうやっておりればいいんだ?
風の調節ってできないのか。魔力を少し弱めてみる。わっ、駄目だ、駄目だ、落ちるぅーー。慌てて再度足裏に意識を集中する。今度はバランスを崩し、斜めに飛んでいった。怖い、怖い、怖い、ストップ!!
まったく安定しない。魔力の加減が難しすぎる。少し力を入れるとグーンと上昇し、少し緩めると途端に勢いよく落下。バランスも上手く保てないため、大きく横に飛んでいったりもする。
初めに思ったとおりだ。ホバーリングのようなことがができない限り、やはり戦闘には使えないだろう。おっと、それどころじゃなかった。いまオレ、着地できないんだ……。
しまった、落ちていく。
慌てて力を入れる。ところが、足は頭より上にきていた。体が上下に反転していたのだ。猛スピードで降下していく。途中、どうにか足を下に持ってきた。しかし安全な着地なんて絶対に不可能。駄目だ。死ぬしかないのか。
ひたすら上昇と下降の繰り返し。下が海だったら良かったのだが。せめて湖でもないものか……。しかしそんなものは見当たらない。オレは一直線に落下していった。
ドーーーーーーーン
激しく衝突した。オレの下には大事なものが……。
「ロフェイ、何やってるんだ! 俺の獲物だったんだぞ」
「ロフェイ、あたしたちに任せてって言ったでしょ!!」
「ロフェイ、もう少しでわたしの力で倒せるはずでしたのに」
そう。ジャイアントトロールをクッションにするしかなかったのだ。この巨体は動かなくなってしまった。
また皆に怒られた。
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