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リースと光の王太子  作者: 御心
幼少期編
20/20

19話 医務官助手 カイン


ラーシェイルがレイルと契約し帰城すると、何処からか風のうわさを聞きつけたようで、すでに王宮内はお祭り騒ぎで、王と王妃は勿論のこと臣下たちも大層喜び、急遽宴会が開かれた。

どれ程王子とリースとの契約がこのファラリス王国にとって稀有なものかが分かる。


その宴の席で、レイルが人間の言葉を全員の脳内に話しかけて皆を驚かせたのは言うまでもない。


因みに何故王宮内に知られていたのかと言うと、ユリシスが喜びに耐えきれず涙を流しながら風の伝達魔法風の便り(エアバード)を使い知らせていたからである。






数日後

ラーシェイルは保護していた青年、カインにお見舞いをと思い両手に滋養に良い食べ物を持って、この度新しくパートナーとなったレイルと共に医務室に向かっていた。


「カインもレイルとならお話しが出来るかもしれませんね!」


『「うむ、わしに任せろ。」』




コンコン


「失礼します。」


「ラーシェイル殿下。おはようございます。」


医務官長が出迎える。


「おはようございます。カインの具合はどうですか?」


「ええ。傷の具合はもう良いのですが、まだ言葉を発することはできないようで、彼もまだ気が滅入っているのかもしれませんね。」


「そうですか。色々なことがあったようですし、お兄様が早く見つかると良いですね。」


「ええ、心配でしょ…」


『「カインとやらは何処におる?」』


医務官長との会話を食い気味に遮るレイル。


「おや、彼が噂のレイルですね?確かに頭の中に声が聞こえてくるのは不思議な感覚ですね。」


「レイルならカインの心の声を聞くことが出来るのではないかと思って。」


『「しゃべっとらんと早く案内せぬか。」』


「レイル、少し落ち着いて下さい…。」


「ふふっ。こちらです。」






「カイン、ラーシェイル殿下がいらして下さいましたよ。」


「カイン、おはようございます。具合はいかがですか?」


カインは少し目を見開き、驚いた様に見えたがぺこりと頭を下げて、枕元に置いてある羊皮紙とペンを手に取ってスラスラとペンを走らせ挨拶を返す。


『「お前がカインじゃな?わしはラーシェイルと契約したレイルじゃ。わしの言葉は聞こえておるな?」』


頷きながらも再び驚いたカインの様子にクスリと笑みがこぼれ、ラーシェイルと医務官長は視線を合わせる。


『「カインよ、話せないのはラーシェイルから聞いておる故、心の中で思うだけでよい。少しわしと話してみんか?」』


――コクリ


一瞬の間をおきカインが頷く。









『「あやつはこの国の人間ではないな。」』


「やはりそうでしたか。」


「レイル、何故そう思うのですか?」


『「僅かだが話し方に訛り(なま)や違和感を感じる。それに匂いが違うのだ。」』


「に…匂いですか?」


『「そうじゃ。わしら精霊にしか分からん帝国の邪悪な匂いじゃ。」』


「ではカインは帝国の人間だと?」


『「わしの鼻は誤魔化せん。まず間違いないじゃろう。」』


「レイルがそこまで…。医務官長は何故カインがこの国の住人ではないと思ったのですか?」


「ええ。筆談で数回会話をしましたが、彼の字には独特な特徴がありました。初めはただの癖かと思いましたが、彼は自分がファラリス国民ではないことを知られて欲しく無いように感じました。彼を王宮に置いておく以上素性を知らないのは危険かと思い、大資料室で調べると『カイン ホールドマン』と言う出生記録はありませんでした。」


「なるほど。…ではジークに相談してみます。ジークも帝国の出身なので少しはカインのことが分かるかも知れません。」


「お願い致します。ラーシェイル殿下。カインのことはわたくしにお任せ下さい。」


「はい、お願いします。」





その日の夜

ラーシェイルはミシャーラの部屋を訪ねて、ミシャーラが遊び疲れて眠りにつくまで待っていた。


「ようやく眠りましたね。……何かお話しがあるんじゃないですか?殿下。」


「流石です。ジーク。……カイン ホールドマンと言う方をご存知ですか?」


「………!カインと言うのは知りませんがホールドマンの性は知っています。」


「やはりご存知でしたか。」


「しかし何故その名前を知っているんですか?」


「以前に保護した背中に傷を負っていた青年を覚えていますか?」


「もちろん覚えてます。」


「彼自身がカイン ホールドマンと名乗ったんです。傷を受けたショックで言葉を発する事が出来ないみたいで今は筆談で会話しています。双子のお兄様もいるようですがあの事故の時にはぐれてしまったようで…。」


「何故あいつらがこの国に?ホールドマンは代々、皇帝陛下の側仕えをしている一族です。俺がいた頃はラグト ホールドマンと言う男が側仕えでしたのでおそらく息子達かと思いますが、国を離れるなんて余程の事がないと。」


「少しカインと話しをしていただけませんか?何故かは分かりませんが、彼は自分が帝国出身だと知られたくないようで心を開いてくれないんです。早く元気になって欲しいですし。」


「分かりました。俺で良ければ。」


「お願いします。レイルもまたお願いしますね。」


『「うむ、任せておけ。」』






後日ラーシェイルはジークフリートをつれて再び医務室にいるカインを訪ねた。

傷は癒えた様でベッドから立ち上がり朝日の光を浴びて窓の外を見ている。


「カイン、おはようございます。」


カインはぺこりとお辞儀を返す。


「体良くなった様で安心しました!今日は専属騎士のジークをつれて来ました。無口ですが優しい人なので怖がらないで下さいね。」


ラーシェイルは『第一王女』の肩書きは言わずにまるで自分の騎士であるかの様に振る舞い、カインを警戒させないように軽く紹介する。


因みにレイルはラーシェイルと同化しているので姿はもちろん、感知することはできないのでカインにはわからないだろう。


「ジークフリート ストリングスだ。よろしくな坊主。」


(えっジークフリート ストリングスって言ったら前帝国騎士長だった。この国にいたのか。)


ジークの言葉にカインは一瞬の間をおき再びお辞儀をする。


するとカインが何か書き始めた。

もちろんファラリス語で。


―あの、何度も来て頂いてありがとうございます。ですがもう大丈夫なのでお構いなく。


「そんなこと言わずにもっとお話ししましょう!」


―でも、お忙しいのでは?


「いえいえ。カインの事が心配でつい足がこちらに来てしまうのでお気になさらず。」


―そうですか。


「カインのお兄様のことも心配ですね。今ファラリス中を捜索してますがそれらしい方は見つかっていないので心苦しくて、せめてカインだけでも元気になってほしいので、これくらいしか出来ませんが。」


―充分です。すごく良くしてもらって感謝してます。

(見つかるわけない。だって兄さんは帝国にいるんだから。)


「そう言ってもらえて嬉しいです。あっ、傷が癒えたのならそろそろ家に帰りたいですよね。明日にでもお送りしますよ。」


肩をピクリと動かして何も言わなくなってしまった。


「あれ、どうしました?私何かまずいことでも言いましたか?」


―家には帰れません。


「どうしてですか?」


カインは再び黙ってしまった。

それを見たラーシェイルはジークに合図をする。


「それは坊主が帝国の人間だからか?」


ジークがため息をつきカインに問う。

するとカインは頭をバッと上げ驚いた様に警戒する。


「そんなに警戒するな、帝国の人間だからって悪い様にはしない。まあ俺も帝国出身だが今は専属騎士として仕えている。ラーシェイル殿下にじゃなく第一王女のだがな。」


「カイン、あなたが帝国出身だからと言うだけで私達はあなたを傷つけることはありません。そのつもりなら助ける必要などないでしょう?」


カインの目が少し和らぐ。


「俺は王族が嫌いだった。しかし殿下と姫様に救われた。だから生涯をかけてお守りすると心に決めた。カインお前がもし、帝国から逃げてきたと言うのなら、この国にいれば良い。きっと喜んで迎えてくださる。」


珍しく饒舌のジークは言い終わった後、恥ずかしそうに顔を背ける。


『「悪いがお前が心の中で思っていることを聞かせてもらった。帝国の言葉で兄が帝国にいることも、このジークフリートが元帝国騎士長だったと知っていたこともな。」』


ライルの言葉を最後に観念した様でカインがラーシェイルを真っ直ぐに見つめ、口を開く。


「い、今まで黙っていてごめんなさい。」


初めてカインが綺麗な声で言葉を発する。


「あんまり国同士が仲良くないから帝国出身だとバレると、何かされるんじゃないかと思って、ずっと怖くて。」


ラーシェイルはウルっと目を潤ませてカインに抱きつき頭を撫でる。


「そうだったんですね。すみません、気づいてあげられなくて。」


「いいえ。僕が勝手に思い込んでいただけだから。それに殿下達は良い人だって分かったからもう大丈夫です。」


「お話しは済みましたか?」


「医務官長!」


ひょこっと年齢に似合わず可愛らしく現れた。


「少し前から聞いていました。貴方の声が聞けて良かったです。ところでカイン、貴方さえ良ければ医務官助手としてここで働いてみませんか?」


「僕がですか?」


「ええ。言葉も読み書きも問題ないようですし、今ちょうど人手が欲しかった所でした。何より行く当てはあるんですか?」


「無いですけど。いいんですか?そんなあっさりと。」


「貴方のことは放ってはおけません。よろしいでしょうかラーシェイル殿下。」


「もちろんです!私もカインともっとお話ししたいと思っていました。きっと妹のシャラも喜んでくれます。」


「ね?カイン遠慮はいりませんよ。」


「あ、ありがとうございます。ではよろしくお願いします。」


その言葉に皆が笑顔で返した。


「ではこのわたくし、ミツバの弟子と言うことで、医務官助手として頑張って下さいね。カイン助手。」


遅くなり大変申し訳ありません。

ようやく更新できました。

まだまだ続いていきますので応援よろしくお願いします。

因みに医務官長の名前初出しです。

次回はラーシェイルの○○○が登場します。


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