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リースと光の王太子  作者: 御心
幼少期編
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1話 王宮にて



ーーーぱちっ。


またあの夢をみた。


もう何度見ただろう?


汗が寝巻きにひっついて、気持ち悪い。


夢のはずなのに、現実のようにリアルで、

なんだろう、胸さわぎがする。



コンコンッ。


「おはようございます。

 お目覚めですか?」


「はいっっ。起きてますっ。どうぞ。」


慌てて返事をする。

声が裏返っただろうか?


「失礼致します。

あら、どうかなさいましたか?」


「いえ、なんともないです。」


「そうですか?

 何かあれば遠慮なくおっしゃって下さいね。」


あれ、気のせいだろうか、一瞬だけマイラの笑顔が曇って見えた。


「はい、ありがとうございます。

いつも感謝していますよ。マイラ。」


「見に余るお言葉です!

ラーシェイル殿下。」



マイラはメイド長の娘で、

何を隠そう、彼女達が暮らすこの、

ファラリス王国の第三王子、ラーシェイルの侍従メイドである。


実は大人びた口調で話すラーシェイル王子は僅か齢4歳にして、誰に対しても敬語で話すことが身に染みついているのだ。


「本日は、姫様とご一緒にお出掛けでございますね。」


「そうなんです!

私もとても楽しみにしていました。」


…しかも一人称が『私』である。


「ふふっ、

では、早速お支度を致しますね。

とびきりのオシャレをして、姫様と記念写真でも撮りましよう。」


「えっ、そこまでしなくていいですよ?」


「この間、姫様がコッソリと口にしていましたよ。『シエル兄様とおしゃしんとりたいなぁ』と。」


「そんな事言っていたんですね。

それは答えなくてはいけませんね。」


「それはそれは。一緒に頑張りましょう。」


ラーシェイルは王や王妃、

兄妹達からは、愛称でシエルと呼ばれている。

時に厳しく、時に優しく、ラーシェイルはそんな家族を愛し、その家族が治めるこのファラリス王国が大好きである。

日の光が反射して、キラキラと輝く白銀のサラサラな髪と穢れを知らない溢れそうな程大きな黄金の瞳をパチパチと瞬かせ、ちょこちょこ歩く姿はメイド達の密かなアイドルとしているのは暗黙である。


「…マイラ、どうかしましたか?」


「いえ、申し訳ありません。

わたくしどもの心配は無用に願います。」


「そう言うわけにはいきません。

大切な家族も同然のマイラを私が心配するのは必然です。」


「もったいないお言葉ですっ。」


「おおげさですね、マイラは。」


うるっ。


マイラの目にはうっすら涙が浮かぶ。

実は最近、ラーシェイルが度々寝汗をかいて、いるのは知っていた。

最初の頃は子供は体温が高いからかと思い、ラーシェイルが寝静まってから夜明けまで2、3度様子を見に行くことが日課になっていたが、ある日の深夜にいつものように様子を見に行くと、全身に汗をかき、魘されたような主を目にし、衝撃を受けた。理由はこれだったのかと。

その日は直ぐに収まり、マイラも落ち着きを取り戻すと、風邪をひかない様に、汗を拭い慎重にそっと着替えさせ、静かに部屋を後にした。

その日から何度となく発作の様に繰り返していた。

流石に国王と王妃に報告し、国王の許可を得て相談している医務官長の4人のみが知る事である。


数日前のことを思い出す。

実はラーシェイルは、マイラが心配しつつも何も言わずにいてくれる優しさに、迷惑をかけまいと、密かに数日前から医務官長の所に通っていた。

博識であり、昔は戦にも出陣したことがあるといわれており、もちろん医務官としての腕も随一で、これまでで弟子を111人持つが彼ほどの逸材はなかなか現れることはなく、後継がいないとされている。

医務官長は御年80歳を超えているといわれている。その理由が62年前に起きた流行り病を治療方法などが書かれた資料が王宮の大資料室に保管されており、その作者が医務官長の名前と同一人物であるからだ。

どう見ても40歳くらいにしか見えないのだが、何か秘訣があるのかないのか、実際の所は誰も知る者はいない。


「最近、同じ夢を何度もみるんです。

それに鮮明に覚えてます。

体の底から嫌な感じがして、とても不安なんです。」


「ラーシェイル殿下。

夢と言うのは本来不鮮明で曖昧なもの。

それを鮮明に覚えているとなると、何か原因があると、わたくしは思います。」


「はぃ。私はどうすればいいですか?」


「いいですか?わたくしの憶測ですが、

ラーシェイル殿下は魔力がお強いので、『力』の一端が漏れ出ている可能性があります。その場合立てられる仮説が3つございます。

まず一つ目、強い魔力を持つ他の人物からラーシェイル殿下の持つ魔力と何らかの原因でシンクロしてしまい、記憶が流れこんでくる。

二つ目、普通、死ぬ間際に流れこんでくるとされる走馬灯の様なものが寝ている間におきている。

そして三つ目、ごく稀に予知夢を見る事があるという者。

わたくしは三つ目の仮説、『予知夢』が一番可能性が高いとみました。」


「予知夢ですか…。それじゃあいつか、夢と同じ事が起きるかもしれないと言う事ですか?」


「あくまでも、わたくしの推測にすぎません。落ち着いて下さい。」


「でも、あんなことが現実に起こると思うと、怖くて。」


「しばらくこの薬草茶を飲んで、心を落ち着かせてみましょう。」


ごく。


「少し苦いですね。」


「しばらくすれば心が安定してくるでしょう。」


「また不安になったら、来ても良いですか?」


「もちろんです。いつでもお待ちしております。

さぁ、マイラが心配しますよ。」


「はい。おじゃましました。」


キィッ パタン


ラーシェイルは医務官長の所に行く時は必ず本を数冊持ち歩く。

それは皆を心配させないように、医務官長室が大資料室の手前にある為に、大資料室に行って勉学にはげむ姿をみせる為の口実作りにピッタリだったからだ。

実際ラーシェイルは政務や勉学、稽古など、とても熱心に取り組んでいる為、怪しまれずにすんでいる。


そんな事を考えている間も流石はメイド長の娘、テキパキとそれでいて的確に支度を進めている。


マイラがラーシェイルの髪を丁寧に髪をといているその横には書類が積み上げられており、さらにその反対側には国民から寄せられた様々な依頼や手紙などが入った箱が置かれており、ラーシェイルはというとその書類に目を通して、時にはサインをしているその目は真剣でとても4歳には見えないだろう。

…見た目は別として。



「さあ、お着替えが終わりましたらお食事に参りましょう。皆様がお待ちです。」


「そうですね。急ぎましょう。」


いつもの朝、いつもの幸せが続くことを誰もが信じて疑わなかった。

ラーシェイルもまたその一人…

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