38:エビルラッド
地下下水道であるから暗闇の中を蝋燭で照らしながら進むものだと思っていたが、そんなことはなく壁に一定間隔で掛けられたランプのようなものによって明るいまではいかないが、不便はない。
地図を見ながらぐるぐると下水道内を歩く。
マスクのおかげで臭いも全くしないし歩いてるだけで金がもらえるというのもだんだん疑問に感じてきた。
流石に鴨がネギを背負ってきたどころではない。
「カシワダ様」
「どうした?」
「何かの気配をこの先で感じます」
「お前そんなことがわかるのか?」
「いえ、感でございます」
「なるほどそれは信用できるな」
腰に差した短剣を抜き取りすり足で曲がり角で向かって静かに様子を伺おうと顔を出したところに何かが飛び掛かってきた。
反射的に仰け反り何とか交わすことに成功し、飛び掛かってきた何かは壁にぶつかった。
「カシワダ様!」
「大丈夫だ!」
一体何が飛んできたんだと目を凝らして見てみると中型件ぐらいのサイズの…鼠か? 滅茶苦茶気持ち悪い。
「カシワダ様! あいつはエビルラッドです!」
「邪悪なネズミねぇ。なるほどこいつの駆除をして来いっていう依頼なのかこれは」
性懲りもなく飛び掛かってくる気持ちの悪いエビルラッドを蹴とばす。
ぐしゃりという感覚が足元に残る。
加減を間違えて頭を潰してしまったようだ。
帰ったら速攻で風呂に入ろう。それでこのズボンは捨てる。
決まりだな。
「このエビルラッドは一匹見かけたら十匹はいると聞きます! もしかしたらまだ別個体が近くに」
「フラグを立てるんじゃないよ!」
下水から一気に三匹飛び出してきた。
うわっ! 汚い水を飛ばすんじゃねえ!
屈んで一匹避けて、残りの二匹の顔を仕方なく殴りつける。
水飛沫を立て下水に沈んでいく。
きもいだけで耐久性はないのな。
残り一匹。
短剣を投げて終わり。
「お疲れ様です。カシワダ様」
「いや疲れてはないが気持ち悪いよこいつら」
「確かに気持ち悪い見た目ですよね」
「あぁ。待て! おい! 嘘だろ!」
大群が押し寄せてくるような足音が聞こえて振り向くとエビルラッドの地獄のような群れが俺たちの方へ向かってきていた。
「きゃああああ」
「無理だ逃げるぞ!」
「はいぃ!」
出口に向かって全速力で走る。
が、リィルが遅い。
このままでは追い付かれてしまう。
「それでも男かリィル! 全力で走れ!」
「走ってますよぉ!」
「えぇい」
手を引いて走ると躓いた時に困る。
仕方がなくリィルを肩に抱えて走る。
「そこは、お姫様抱っこじゃないのですかッ!」
「五月蠅い! 舌噛むぞ!」
出口はまだか!
「お疲れ様でーす」と先程案内してくれた職員が出口付近で待っていた。
「いやいや、職員さん! エビルラッドの大群が!」
「あー今回も多いですね」
「今回も?」
「えー毎回どっから湧いてくるんですかね。駆除しているはずなのですが」
というとどこから取り出したかわからない謎の機械を迫りくるエビルラッドの大群に向けると火炎を放射し始めた。
ギェエエエエエエエエ
ギィエエエエエエエエ
ギェエエエエエエエエ
「…もしかして下水道を走り回ってエビルラッドをここまで連れてくるのがこの依頼の内容ですか?」
「えぇ、そうですよ。エビルラッドが居ない時もあるので、その時はただの下水道散歩になりますがそれ以外だとここまで連れてきてもらって焼却するというのが依頼内容ですね。ギルドで聞きませんでしたか?」
「いえ…聞いてませんが」
「ハハハそうでしたか。もしかしたら受付嬢の方が知らなかったのかもしれないですね」
「あー確かに若い人でしたね」
「とにかくあまり受けてくれる人がいないので助かりました。ありがとうございます。これを持ってギルドへ帰ると報酬を受け取れると思います。機会があればまたよろしくお願いします」
「えぇ機会があれば」
「まさかこんな依頼だったなんてな」
「はい、あの大群を目にした時には腰が抜けそうになりました」
「早く帰って風呂に入ろう。ギルドは明日にでも行こう」
「そうですね」
「あとお前は明日から体力とある程度の筋力をつけるために俺と一緒に朝ジョギングしようか」
「え? 嘘でございますよね?」
「嘘じゃない。そういえば乗馬の練習もしないとな」
「うわーん。カシワダ様がいじめるー」




