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39:次の朝

 昨日は早く寝たから今日は一段と早く起きれた。

 今日からはリィルの体力をちょっとでもマシにする為にストレッチと走り込みをしようと思っている。

 本人は運動が苦手だからか唇を尖らせてはいるが、口に出したりはしない。そこは従者として弁えているのかもしれない。どういう基準なるが、敢えて触れない様にしておこう。


 「さ、朝食の前に運動しようか」

 「は、い」

 「じゃあまず先に軽くストレッチをしないとな」

 「すぐに走りに行かないのですか?」

 「ほぐし過ぎると逆効果になってはしまうが、軽く筋肉を伸ばしたりした方が怪我しにくいんだ。いくら治りが早いといったって怪我をしたら痛いだろう?」

 まぁ怪我するより俺が食べてる時の方が断然痛いだろうがそれは棚に上げておく。


 「なるほど、そうなのですね。わかりました」

 「じゃあ俺の後に続いて同じ事をしていってくれ」

 「はい」



 前屈をやって見せるて続けてやるように促すが足元に手を伸ばすだけで一向に腰を曲げようとしない。

 「どうしたリィル?」

 「いえ、これ以上曲がらない、のです」

 仕方なく背中をぐぐっと押してやるとバキバキバキという信じられない音が鳴った。

 「こ、こしが!」

 「お前滅茶苦茶固いな! 嘘だろ! 肉は柔らかいのにどうして!?」

 「ちょっと! カシワダ様! 肉が柔らかいなんて! 大声で言われると恥ずかしいです!」

 「あ、ああすまん。しかし本当に固いな」

 「うう」

 「ちょっとずつ頑張ろうな」

 「はい…」

 


 続けてランニングだったのだが、ギルド前まで軽く走るつもりが後ろを振り返るともうついて来れていなかった。

 ゆっくりと腕を組んで待つこと二分弱。


 「か、しワダさ、ま」

 満身創痍のリィルが現れた。


 「はい、お疲れ様」

 リィルはぜぇはぁぜぇはぁと言いながら胸を上下させている。

 ちょっと走っただけなんだがな。

 ま、初日だし結構頑張った方だな。

 息を整えている間に果物水を屋台で買ってきてあげる。

 水分補給も大事だ。


 「ほれ」

 「あ、ありがとうございます」

 「ゆっくり飲めよ」

 

 ゴクゴクと喉が鳴る様子を見ていると食欲が湧いてくるがグッと堪えて目を逸らす。

 と肉串の屋台が目に入った。

 丁度肉が食いたくなってきた所だし、2つ程買おうか。


 ドン


 「あ、すいません」

 「いぇいぇ此方こそすいませんネ」

 不思議な雰囲気の人だ。

 年老いても見えるし、若くも見える。

 まるで年齢がわからない。性別さえも声からは判断できない。

 それに全く気配を感じなかった為ぶつかってしまった。

 変わった人もいるもんだと頭を下げて通りすがる。




 

 ・・・



 男か女かもわからない年齢不詳の人物は、路地裏に入るとブツブツと独り言というには大きな声で話し始めた。

 

 「人とぶつかるというのは生を受けてこの方、初めてですネ」

 「ええ、驚きましたネ」

 「それより驚いたことがあったのデスカ? 今の男の魔力の色は…黒? 闇ではなさそうだネ。うん? どういうことだネ? つまり??、ふむ、成る程ネ。それは面白いネ。研究対象にしてもいいレベルだネ」


 「ネルもそう思うダロウ?」


 誰もいないはずの路地にクスクスクスと赤子のような笑い声が反響し、その人物は路地の闇に消えていった。

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